
彼は特に「問題」という問題は無いようだったので、私は彼の結婚生活に関して質問した。彼は妻との結婚に満足していて、幸せだと答えた。
大体の場合、これは良い心の状態を示すが、私は具体的にこの「幸せな結婚」がどのようなものであるかを知りたかった。ゲシュタルト法ではコンタクト(ものごとの繋がり)を探ろうとするため、いつも漠然としたものではなく、具体的なものを探っていくようにしている。マークはこの質問にすぐ答えられなかった。私が彼の感情や気持ちについて問うと、彼はまたもや具体的に話すことができなかった。なので、マークは具体的にものごとを表現し、向き合うことができていないために、自分の気持ちを正直に見つめることができていないのでは、と思った。
そこで私はある「実験」を提案した。それはグループの一人一人を見て回り、彼がそれぞれの人を見るときにどのように相手に対して感じるかを考える、というものだった。
「実験」をやってみて、彼は私にちゃんとそれぞれの人を見て自分がどのように感じたかを明確に伝えることができた。マークが人間関係の中で自分がどのような立ち位置にいるのかを理解するキャパシティーがあるのは明らかだったので、恐らく彼はただ誰かの励ましが必要だったのだ。私がそれを言うと、彼も同意した。
次は彼にグループの参加者に「あなたを見るとき、私は(こう)感じる」と具体的に感情表現をするように言った。これはとても簡単なことのように思えるが、彼は自分の気持ちを理解するのが苦手だったので、このように簡単にできる事からはじめるのは大事だった。私が彼に投げかけたこの「実験」は人々を見て、どのように感じるかということをもとにそれを直接その人に伝えるものだった。ゲシュタルト法ではいつも人との関係に結びつくように促して行く。
彼は何人かの人へ語りかけ、毎回はっきりと自分の思っていることを伝えることができた。先ほど言ったように、これを見る限り彼は自分の気持ちを表現することはできていて、ただまわりのサポートが必要なだけだった。
次に私はクッションを持って来て、それを彼の妻に見立て、彼に同じように「きみの中に(このような性質)を見るとき、ぼくは(このように)感じる」と語りかけるよう促した。
彼は毎回はっきりと「妻」に自分の気持ちを話すことができた。私はこれを見ながら彼を励まし、彼は確かに人へ自分の気持ちを伝えることができるのだ、ということを伝えた。私は、彼はただ、人からの反応を恐れずに練習できる環境が必要なのだと言い、彼もそれに同意した。次に、彼に自分の父親へも同じように語りかける様促した。
彼は誰かの励ましさえあればこのように自分の気持ちをはっきり伝えることができるのだ、と私は言い、またクッションに話しかける様促した。まずは妻へ話かけ、その次に父親へ、「あなたが(これを)するとき、ぼくは(こう)感じるので、(このように)あなたの助けを必要としている」と。
こうすることにより、彼は具体的に自分の気持ちを表現することができ、最後には気持ちがとても落ち着いたことを教えてくれた。
この実験は適応認知行動学の良い例であり、感情、人とのつながり、信頼性と励ましを全て適用しているものだ。これらはゲシュタルト法での重要な要素であり、このように誰かに物事を順位をおって教えて行くようなセッションはとても大切である。
必要に応じて、このような方法をゲシュタルト心理学で用いていくことは可能である。大切なのは、ある一定の方法ではなく、クライアントがその時々にどのようなプロレスを必要としているかを見極め、用いることだ。
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