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2016年3月17日木曜日

Case #68 - 苦痛を伴う「事実」

マンディーとブライアンは夫婦カウンセリングのために私のところへきた。彼らの結婚は今、危機的な状態にあった。15年の結婚の末、二人の子供も与えられていたが、ブライアンは(4回目の)不倫をしていた。マンディーは40歳という歳で、がんばって結婚生活を守ろうとしていた。彼女は絶対に離婚はしたくなかったのだ。ブライアンはしぶしぶついてきた。
ブライアンは慎重で用心深く、すぐに心を開いてくれなかったので私はまずマンディーとセッションをすすめた。私はまず彼らの結婚生活についての背景と彼女についていくつか質問をした。その後、今の結婚生活について聞いた。彼女は夫とは6年間、親密な関係を持っていないと語ったが、それに慣れることを学んだと言った。彼女は夫がリードしてくれるのを待っていたが、彼がそのようにすることはまずなかった。彼女は友達とも話したが、友人達は「あんまり期待できないよ」と言い、もうあきらめて子供や他のことに注意を向けたほうがいい、とアドバイスしたそうだ。
私は夫婦の親密性、セックス、子供、金銭面、お互いのサポートなど、結婚生活の様々な面でどれほど結婚生活が充実しているか聞いてみた。すると、低いものは5%の充実感から高いものは50%で、親密性というのは一番低いランキングだった。彼女は自分が納得するためには平均30%になったら満足、と言いそのためにはなんでもすると言った。
今度はブライアンにそれぞれの充実面に関して聞いてみた。彼の数値はマンディーより低かったり高かったりするものもあったが、どれもわりと同じような数値だった。しかし、彼は満足するためにはそれらの平均値が75%であることを求めていた。
しかし、この夫婦の問題は今に始まったものではなく、ここ10年続いていたことだった。彼らはお互いのことを語り合わなかったし、難しい話は避けていた。
マンディーは瞑想をすることでストレスを解消していた。ブライアンは自分を無感覚にし、仕事に打ち込むことで忘れようとしていた。このような結果、今の危機的状態が生まれてしまった。彼は不倫相手と別れるつもりはなかったし、彼女もこのままの状態を続けたくなかった。二人とも行き詰っていて、それをお互い語り合い問題解決するすべも持っていなかった。
ブライアンと話したところ、彼はもう完全にお手上げだった。もし解決策があったとしても、彼は夫婦関係を守り、結婚生活をどうにかして改善しようという気は全くなかった。彼はもう先に進んでいて、彼女との結婚をなんとかして抜け出したかったのだ。
これはマンディーにとっては許しがたいものだった。彼女はなんとしてでも解決策を見つけるつもりだった。彼女の愛こそが、情事におぼれている夫の目を覚ませるのだ。
しかし、もし彼が浮気を続けるのなら、彼女は最後までしがみつき、離婚という「自由」を彼には絶対に渡さないと言い張った。私は、彼女の宣言は「愛によって夫の目を覚まさせる」よりも、「バトル」になっている、ということを指摘した。
マンディーにとってこれは辛い事実だった。彼女はあまりにも不安が募っていて、固く決心していたので、ブライアンが今いる状況をまともに見つめることができなかったのだ。
なので、私は彼に、もう本当にこれでおしまいなのか、どのような条件があったとしても彼の決意は変わる事はないのかを聞いた。そして彼は、「はい、そうです」と答えた。
なので私は彼がその気持ちを「供述」するように促した。
マンディーは彼が言っていることをなかなか聞きいれることができなかった。彼女は彼と議論し、なんとか彼を説得しようとし、彼の言ったことを否定し、更には彼を脅迫しようとした。私は彼女の気持ちを理解し、彼女が夫の言い分を聞き取ることができるよう、彼女を支援した。彼女がやっと夫の言ったことを聞き入れることができたとき、「こんなの受け入れられないわ。死んだほうがましだわ」と言った。
私はまた彼女を励まし、どんなにか辛いであろうか、またどんなにか怖いことであるかを伝えた。そして私自身の離婚の体験談を聞いてみたいか尋ね、それを話し、私自身どのようにして辛い時期を通ったかを話した。
私の体験談を聞き少しは落ち着いたようだったが、それでもまだかなりの苦痛の中にいた。ブライアンは今まで麻痺していた感覚が急にもどり、優しくなった。彼はマンディーに彼女のことを大切に思っていることと、彼女の痛みは彼にとっても辛いことだが、彼の彼女への想いはもう親密なものではなくただの友達としてのものだと言った。
この発言も彼女にとっては非常に辛いもので、私は彼女が逃げてしまわないように、助け励ました。
彼女は前のように知らん顔をし、問題否定をしていた頃に戻りたかったが、すでに遅かった。
私の仕事は人々が問題解決をするための助けである。その中で一番大事なことは、各人が心にある真実を話し、お互いの言い分を聞き、そのプロセスで必要な精神的サポートを提供することだ。しかし、夫婦関係の終わりのように荒廃的なものに関しては特に難しい。
今回の件では、マンディーがブライアンの気が進まないにも関わらず、「頑張ってやり続けよう」とすることは無意味だったのだ。彼女の「頑張り」は実は状況をコントロールしようとしていただけで、夫の意見を聞いたとき、それらが露になった。彼女はブライアンが求めているものはどうでもよく、何が何でも結婚を守り続けようとした。
そのため私はマンディーにも自分の「供述」を述べるように促した。それは「私はあなたがどうしたいかはどうでもいいのよ。ただ自分にとって大切なものを守りたいの」というものだった。
これらの言葉を口に出すのは彼女にとっては容易ではなかったが、今の状況をはっきりと言葉にしており、夫も妻の意見をはっきりと聞けてよかったようだった。こうすることにより、お互いが何を求めているのかをはっきりとさせることができたし、実は彼女は「愛で夫の目を覚ませよう」としていたのではなく、夫の想いはお構いなしに自分の必要だけを主張していたということが明らかになった。
これらのものを私は「非・美徳」と呼んでいる。それは私たちの心の暗い部分に潜んでいるもので、自分の行動を「愛」と呼んだり、自分が「被害者」だと思ってて、なかなか自分自身が「相手のことはどうでもいい」と思っていることを認めたくない一面だ。それを認めるのには多大な勇気と多くの精神的サポートが必要になるが、真実を語ることには開放感があり、また何か新しいことが起きるスイッチともなる。
今回のセッションはなかなか認めにくい「事実」を取り扱ったが、このようにして本当のことを露にしない限り、ただいやみと怒りと自己防衛がいつまでも残るだけだ。そして、それぞれの話しがどんどん自分の立場に良いように話が進んでいくだけになってしまう。
言っておくが、「真実を相手に伝える」というのは相手を攻撃するためのものではない。それは、自分にとって本当のことを明らかにするためである。相手がそれを聞くときに、心理的なサポートが必要なときもある。ゲシュタルト法はこのような人と人との間の問題解決に焦点をおいており、また相手に本当のことを語ることは変革をもたらすということも理解している。
こうしてお互いがそれぞれの想いを言葉にする場を提供することで、相互のコミュニケーションの改善を目指している。その中では、ある特定の結果を求めたり、片方を承認したり否定したりするようなことはしない。

2016年3月8日火曜日

Case #67 - 古風な結婚生活か、それとも「今風」の結婚生活か

ハンとユエンは婚約をしていて、彼女は35歳、彼は43歳だった。彼らは二人で解決できない意見のぶつかりあいがあり、私のところに来たのだった。それは、ハンは結婚した後も母親が一緒に住むことを希望していたのだが、ユエンはそれに絶対反対していたからだ。
私は二人のことをもう少し詳しく聞いてから、結婚にあたり一番心配なことは何か、と聞くと二人ともこの問題が一番大きな心配ごとだと答えた。
しかし、彼らは結婚にあたり他にも色々と話し合っていないことがあるのがわかった。そのため私はひとまず今の問題はおき、もう少し広い範囲で物事を見てみよう、と提案した。まず、二人が中国でよくある古風な結婚をどれだけ重視しているか見るため、あるアクティビティを提案した。それは、ひとつの端はかなり伝統的な結婚スタイル、もうひとつの端は今風の結婚スタイルとし、二人がその中でどのように結婚を考えているか判断するものだった。ハンは70%「とても古風な結婚スタイル」で、ユエンはその逆で70%「今風の結婚スタイル」という考えだった。
となると、彼らの間には今の問題よりももっと根本的な問題があり、これからもお互いの考え方の違いによりこれから大きな問題になる可能性はありゆるということを言った。私は彼らに自分の結婚に対する思いを短く述べてもらうことにした。ハンは相手の家族とうまくいくことだった。また彼はユエンには「優しく、女性らしいやわらかさを持っていてほしい」と言った。ユエンは二人が家族から離れ、夫婦としての新しい人生を歩みだすことだったし、彼女は家族にとやかく言われるのではなく、自分で物事を決めていきたいといった。
そこで私は二人に、まず「私の思っていることとあなたの意見は違うから、色々と難しいね。」と言うように促した。こうすることにより、まずはお互いに違いがあることを認めることができるからだ。ハンは最後に「そして君が変わってくれることを願うよ。」と付け足そうとしたが、私は彼をとめた。男女の間でよくある問題は、相手がいずれ変わってくれることを願っているということだった。
なので今度は別の言い方をしてもらった。それは「私たちの間には考え方の違いがあり、私はあなたの考え方に賛成しないかもしれない。でもあなたの立場を尊重する」と。
この言葉は二人ともなかなか言えなく、とくにユエンはこう言うことにより自分の考え方をまったく変えないといけないかのように思ってしまい、なかなか言いたくなかった。しかし、私が「尊重する」というのは相手の考えに屈するということでは無いと説明すると、彼女はやっとその言葉を発することができた。これらの言葉を発しながら、二人とも自分の心の底にある思いがわきでてきた。彼らは相手を変えようと努力するのではなく、ただ相手をそのまま受け入れないといけなかったのだ。このことはいつも男女の間では大きな問題になっている。
しかし、私はユエンが古風な結婚生活を嫌がるのもわからないことはなかった。彼女は家を自分たちだけの住まいにすることに執着していただけではなく、まだ男尊女卑が残る社会でのゆえ、伝統的な考えを持つハンの家族の中で生活し押しつぶされてしまうのが怖かったのだ。
そこで私はジョン・ゴットマン氏の結婚生活に関しての研究結果についてハンに話した。それは男性が奥さんの意見を聞く結婚生活のほうがうまくいっている、という研究結果だった。理由は、一般的な社会生活の中で男性のほうが女性より権利があるからである。
そして私は彼らがこの問題においてお互い同意できる解決策を見つけられるよう、話し合いを促した。確かに物事によってはどちらか選択しないといけないが、クリエイティブな解決策を探しもとめることができる物事もある。
ユエンは最低限、夜は二人だけがいいと言った。
ハンの母親は今までも下の階にある部屋を仕事部屋として使用していたので、昼の間だけ母が来るのはどうか、と提案した。
私は彼女がどう答えるか待った。ユエンは、たまに両親が夕飯に食事にきても構わないが、週末は基本的に二人きりがいいと言った。
ハンはかたい契約書のように色々なルールを作るのはいやだ、と言った。しかし私はお互い同意するためにはしっかりとした境界線を定めるのが重要であることを伝えた。なので二人はしばらくの間話し合い、やっと同意することができた。
なのにハンは急に暗い顔をした。話し合いは案外うまくいき、今までお互い懸念していたことも話し合うことができ、やっと意見をあわせることができたのだ。
なのに、ハンは「どうやって母さんに説明すればいいんだ」と急に言い出した。彼はふたつの大切なものの間に挟まれていて、どうすればいいかわからなかった。
ユエンも泣き出し悲嘆に暮れ始めた。彼女はハンがもとの考えにもどってしまい、古風な考えをまたおしつけてくるのではないかと心配しはじめた。そして彼に文句をいいはじめた。
私は文句を言い始めた彼女をとめて、彼の表情を見るようにと言った。彼女は怒りと恐怖でいっぱいいっぱいだったので、彼を見つめることがなかなかできなかった。両人ともが苦痛の中にいる時は、自分の思いをいったんおき、相手のことを考えるというのは非常に難しいことだ。
ハンは自分の家族に対しての義務感とフィアンセを一番にしたいという二つのものを目の前にし、なんとかしようともがいていたので、セラピーに行く事を提案し、彼よりも心理学的な知識があったユエンに、私はあえてこのようにするよう言った。また彼女が彼を見つめ、彼が今どのような表情をしているかしっかりと見ることができるよう、彼女に集中し、アドバイスをした。私はユエンに、今起こっていることに全神経を向け、彼が今経験している悩みを感じとるようにと言った。それは彼女にとっては非常に難しいことだったが、私は彼女を励まし続けた。私は「愛」という言葉を出し、「あたは彼が今とても悩んでいるということを分かってあげることはできますか?違いがあったとしても、ただ彼をその悩みも一緒に、彼であるからこそ愛することはできますか?」と言った。
彼女はその時自分の恐れを手放すことができ、心に大きな変化が起きた。そして「私たちは必ずしも同じ考えを持っているわけではないけど、あなたを愛するという決断は絶対に忘れないわ」と言った。この瞬間、ふたりの間に深い絆がうまれ、私も思わず感動して涙してしまった。彼らはこの問題を二人で通り抜けることができ、またそれを通してお互いの愛を深めるだけでなく、愛の許容範囲を大きく広げることができた。二人とも自分にとって未知の世界へと飛び込み、そして最後には「新しいところ」へ到達することができたのだ。
私はこれからも二人は様々な問題にぶつかることがあるだろう、と言ったが、これからはどのようにその問題に向き合っていったらいいか心得ているので大丈夫だと言った。
ゲシュタルト法では二つのものがどこかで交わり合うものとして、「違い」という要素に目を向けている。この「違い」の中で接点を見つけるためには自分自身のセルフサポートと相手に対しての興味が必要となってくる。ほとんどの人にとってこれは難しいことで、彼らがこのようにするためにはセラピストなどのサポートが必要となる。このサポートは「具体的にどうするか」という「実践的」なサポートと、その人の心をどう扱うかという「感情」のサポートが必要となってくる。「相違」に直面するということはなかなか難しいことで、怒りを感じたり、怒りや恐怖のなかでふるえる人もいる。今回の場合、ユエンが今起こっていることの中でハンを見つめ、彼を受け入れることができたため、不可能と思われる状況を変えることができたのだ。

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