
医者に行く時にセカンドオピニオン(他の医者の意見)をもらうのはいいかもしれないが、4−5人の医者をはしごしても、訳が分からなくなるだけで逆に混乱してしまう。一つの問題に対し一人のセラピストに診てもらうことで、その問題を深く取り扱うことができるが、色々なセラピストに行き「よりよい買い物」をしようとするのは逆効果になってしまうことが多い。そのため、私はソンリの問題を即座に取り扱おうとはしなかった。
私はまずどのように一年前に症状が出て来たのかを尋ねた。彼女は、中国で故人を追悼するために焼かれている「紙幣」を5年前になくなった父を憶えるために購入していたと話してくれた。
彼女がその紙幣を買いに行ったある日、「魔女」(彼女がその女性を表現するため使っていた言葉)が彼女に話かけ、「あまり買いすぎると病気になるわよ」と注意したと言った。そのため彼女はすぐにその紙幣を返品しようとしたが、店は返品を受け付けてくれなかった。その事件が起きてすぐに彼女は病気にかかった。
私はソンリの父親との関係がどのようなものだったかを尋ねた。彼女は父とはとても仲良く、父は自分のことを大切に育ててくれ、今でも毎日父親のことを考え、自分の息子を見たりする時など、生活の様々な面で父のことを思い出す、と言った。
これを聞く限り5年も経っているのにこんなにも父親にフォーカスをおいているのは何か心の中で解決していないことを意味するのでは、と思ったので彼女にどれほどの頻度で父のことを考えているのかを聞いてみた。
彼女はその質問にはっきりとした答えを出すことが出来ず、父に対して良い感情があるということ以外は、父のことを考えている時どう感じるかも言うことができなかった。
彼女の父に対しての感情はこれからのセッションで探って行くことができるかもしれないが、今はその問題を無理矢理こじ開けようとはせず、彼女が今感じていることを受け止めることが大切だった。このようにしてゲシュタルト法では「抵抗」しているものを無理矢理探っていくことはしないのです。
そのため私はしばらくの間彼女が言ったことを頭の中で反芻していた。
私は「紙幣」と「魔女」と(少しばかり)執拗的な父への想いなど、既に彼女がもっているものを使っていきたかった。
そこで私は今のゲシュタルト法に基づく実験をしてもらうため、彼女に一つの宿題を提案した。
彼女に1枚だけ紙幣を購入してもらうようお願いした。コンピューターには父親の写真が保存されていると言っていたので、毎日同じ時間にその紙幣からほんの少しばかり切り取り、紙幣を焼くときにコンピューターの父親の写真を出して「わたしを祝福してください」とお願いしてから、画像をとじるよう、提示した。
これはセラピーで「症状を取り扱う」と呼ばれており、ゲシュタルト法では「変容の逆説的な理論」と呼ばれるものだ。こうすることにより、今あるものとより同一になることができる。
しかし彼女はこれだけでは足りなかった。それは彼女がこの問題に対しせわしなく解決法を求めていて、あの魔女が紙幣を例えに言っていた「あまり価値のあるものを求めどん欲になるんじゃないよ」と言っていたことをそのまま示していた。
私は彼女が早く解決策を見つけたい、と感じていることを理解していたが、また次回のセッションに取り扱おうと伝えた。
彼女は病気のため有給をとっていたので、いつもどのように一日を過ごしているのかを聞いた。彼女は1日にある8時間ほどの時間で料理をしたり、休んだり、散歩に行ったりしていると行った。
彼女に友人関係での問題はあるかと聞いたところ、それは無い、と彼女は答えた。
私は彼女に父の名前で何かボランティア団体を立ち上げることを提案した。
こうすることにより父の象徴が「病、死、分離」というものから「命」と「結合」へと変わっていき、一日の中で彼女がポジティブに考え、「何かのために」生きて行く理由を与えてくれる。
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