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2015年5月26日火曜日

Case #37 - 「刺す槍」と「守る槍」

セリアは見た目から30代だと思ったが、彼女は実際は51歳で子供もいた。私がびっくりしたのは彼女の波乱万丈の人生にも関わらず、彼女はとても落ち着いた表情をしていて、恐らくそこから彼女の若々しさが出ているのだろう、と察した。
私はこれらのことを深く探る余裕はその時にはなかったが、今後彼女のセラピーに活かせると思い、覚えておくことにした。クライアントと会ってすぐの印象を自己分析するのは、とても大切なことだ。例えそれが顔なじみのクライアントでも、毎回「新しい目」でクライアントを見ることによって話している中で今までの話と今話していることが噛み合わなかったり、セラピーの上で重要な役割を示す可能性があるからだ。
セリアが抱えていた問題は、10年来トレーニングしてきたソーシャルワーカーとしての仕事を始めるのが怖い、ということだった。彼女はずっと福祉関係で働いており、やっと子供達が自立したので、ソーシャルワーカーとしての仕事を始めようというのだった。セリアは仕事を始める上で既に周りのソーシャルワーカーに支えられていたので、私はセリアの自己評価や仕事に対する恐れの原因を分析するよりも彼女が今置かれている状況を知りたかった。
彼女の話を聞いていくうちに、彼女が抱えている問題が分かった。それは、もし彼女がこのようなに本格的に仕事を始めるようになったら、夫が離婚すると言い出したことだった。私は彼女の夫の反応は少し過剰だと思ったが、男尊女卑の文化の中では彼女の夫のリアクションはそれほどびっくりするものではないのだろう。ただ、セリアとのセッションをすすめていくうちに、彼女がもう何十年も夫からの虐待を受けていることも知った。
セリアはここ10年ソーシャルワーカーの勉強をしていたのだから、なぜこの問題がもっと早く取り扱われていないのかに疑問を持った。もしかしたら彼女の教師達も何もしようとしなかったのかもしれない。
セラピーをすすめていく中で、クライアントの心(気持ち)を取り扱うだけで無く、そのクライアントが置かれている状況を把握することはとても大切だ。クライアントが現在虐待を受けている場合は、特に重要であり、それをセラピーで重点的に取り扱う必要がある。
そのため、私は彼女の真の心の問題である「恐怖」を取り扱うまで、他の問題は取り扱わないことにした。彼女は暴力は最近まで続いていたと言った。
私はこのように彼女に私自身の想いを伝えた。私は彼女に心を開いており、彼女の抱えている問題の深刻さを受け止めており、彼女の支えになってあげたいが、同時に彼女の気持ちも尊重しており、あまりずけずけと彼女の心の中に入ろうとせず、慎重にセラピーをすすめて行きたいということを正直に伝えた。
私が「恐怖というのは、家族の一員のようなものになっていませんか。」と聞くと、彼女はうなずいた。私は彼女の抱いている恐怖を人に例えて表すようにお願いした。彼女が描写した「恐怖」は黒い服を着ていて、大きな目をしていて、微笑していて、やりを持っていた。彼女はその「恐怖」を「気味が悪い」と言った。
私は彼女が「恐怖」というものをしっかりつかみとることができるように、「『恐怖』はどのような服を着ているか」など、より具体的な質問をした。その後、彼女にゲシュタルトのある心理テストをするようにお願いした。それは彼女自身が「恐怖」になり、やりを持ち大きな目をして立っている「恐怖」がどのようなものかを表してもらうことだった。
彼女は「恐怖」を表し、私も、私の描いている「恐怖」の立ち振る舞いを同じようにやってみた。このような心理テストをクライアントとやることは、セラピーの中でとても役に立つことがある。
「恐怖」をお互い表現した後、私は彼女にまた座ってもらうようにお願いした。『恐怖」を言葉で説明したり、それになってみること自体は大変なことだったので、あまりそれに時間を費やしたくなかったからだ。
彼女は、このプロセスを通して私が彼女に多くのことをしてあげたように感じており、これ以上何かをしてもらうのは悪いと言い始めた。彼女は、ずっと「男性のご機嫌取り」をするよう教わってきたので、それに対して子供の頃は反抗したが、彼女の一部になっていた。なので、私が彼女を助けるためのプロセスをしていくなかで、彼女も私に何かお返しをしないといけないように感じたのだ。
そのため、私は一度セラピーを中断し、「私はあなたと共にここにいて、心を開いていますから、あなたが私にお返ししたいものは何かを教えてください」と言った。わたしたちはしばらく沈黙の中に座っていた。そして、セリアは口を開いて私に、セラピーを通して助けてくれたことに対し感謝を捧げたい、と言った。
この事を言った後、彼女は私と共にいることに今一度安心感を覚え、次のステップをすすむ準備ができた。クライアントが今体験していることに心の耳を傾け、その時その時にクライアントにどのような心の変動が起こっているかを理解し、クライアントに合わせてセラピーを進めることは、非常に重要です。
そして、私はセリアに「恐怖は今どこにいますか」と聞いたら、彼女自身の中にいる、と答えた。そして、槍が彼女の脳みそを突いていて痛い、ということを教えてくれた。
すると、私は彼女が直面している痛みを受け止め、彼女が経験している痛みが私をとても悲しませている、ということを伝えた。私は彼女を助けたかったし、彼女を守りたかったが、どうすればいいか分からない、ということを伝えた。そのような言葉に彼女は感動したようで、わたしたちはしばらくのうち静かに座って、お互いの心の繋がりを感じていた。この心の繋がりが重要である---それは、自分のことを思いやって、一緒にいてくれて、守ろうとしていて、尚かつ「物事を直す」のに早とちりでない、そのような存在である。
この繋がりは「あなたとわたし」という二人の人が繋がっている時である。私はセラピストであり、彼女はクライアントであったが、同時にわたしたちは一緒に座って共に痛みを共有している二人の人間でもあった。私は彼女の痛みを真剣に受け止めていた。私は、ただ実験のためや恐怖を形で表すためのセラピーではなく、彼女の恐怖は何年もの虐待によって積み重ねられたものであるのを理解していたからだ。
わたしたちは、この場所で共に時間を共有し、お互い心を開くことができた。私は、とても心が動かされたし、彼女も同様だった。わたしたちはこのことをお互いに伝えた。
すると、私は彼女に「私も槍を持っています。それは守りの槍です。」と言った。 私は彼女に私と、私が持っている守りの槍の存在を心に受け入れる様に促した。
彼女はこのことをとても容易くすることができ、同時に涙も出て来た。彼女はほっと安心し、誰かが彼女のことを思いやっていることを感じることが出来た。
この動作は「セルフオブジェクト」と呼ばれる。私のことを心に受け入れるということは、彼女は自分の意思を持って何かをすることができる、ということを意味していた。今までの人生では、彼女はまわりの男性のために何かをしていたので、これは彼女にとって重要なことだった。
今回のセラピーではたくさんのことをセラピーとしてしなかったが、彼女を大きく変えるものだった。最後に私はセリアに、これから彼女がしたい仕事に対して「恐怖」という存在は今どこにいるのかを聞いた。彼女は、もう「恐怖」には脅かされないわ、と答えた。「離婚をすることになっても?」と私が聞くと、離婚をすることになっても、と彼女は答えた。以上述べたセリアとのセラピーは虐待後のセラピーの一部分に過ぎない。彼女はまた虐待のサイクルに戻ってしまう可能性もあるので、私はよく注意して見ておかないといけないし、専門家であり人を思いやる者として、そのサイクルの一部にならないように注意したい。



2015年5月6日水曜日

Case #36 - 無感覚だった女性

ブレンダは自分のアイデンティティが明確で無いということで悩んでいた。彼女は他人との間に適切な境界線を作れないということと、相手にいつも調子を合わせてしまうということで悩んでいた。
また彼女は内向的で、あまり写真を撮られたり注目を浴びたりすることを好まないということから、私は人前にさらされること(恥辱)に対し何か心の問題を抱えていることを察し、セラピーを行う上でいつも以上に注意し、彼女の心の動きに対し敏感にならないといけないことを判断した。
私はブレンダに、あなたが話したい以上には話す必要は無いのだよ、ということをはじめに伝えた。
わたしたちはグループの中にいたので、私は彼女にグループの中にいることに対しどう思うかを聞いた。彼女は、グループの人達が彼女を見てはいるが、彼女は皆に視られている感じがしない、と答えた。その答えに対し、わたしは「それは皆がまだあなたの事をあまり知らないからですか?それともあなたが皆から隠れているからですか?」と聞くと、彼女は「どっちも」と答えた。
このようなことを聞く事は、彼女の人間関係を分析することに役立った。なので、私は更に問いただした。「私があなたを視ている時もあなたは私から隠れているのですか?」彼女は「はい」と答えた。
彼女は人に見て欲しい反面、人には見られたく無いという心の行き詰まりの状態にあった。そのため、私は彼女との対話を注意深くすすめないと、自分自身がこれを直そうとするあまりおかしくなってしまうことを懸念した。
こうして私は彼女の心を無理矢理探ろうとするのでは無く、彼女が既に自分自身について言っていたことを反芻した。例えば、ブレンダが自分自身についてシェアしてくれたことや、私が彼女に関して見えているものを---例えば彼女の着ている服の色など---そのまま彼女に伝えた。
こうする事によりわたしたちの間に関係性がうまれた。私は彼女に色々と聞くのではなく、私は彼女が心を開いてくれる時、彼女と共にいて、彼女に耳を傾けている事を行動で表した。羞恥心がある人(セルフエスティームが低い人)の場合、まわりがその人のことを色々と引き出そうとするよりも、クライアント自身が自分のことをシェアする機会を与えることが大切だと思う。
彼女の目はそれでも遠くを見ている感じだったので、私は彼女にそのことを伝えた。彼女が遠くを見始めたということは、彼女がこのような人との触れ合いをまだ受け止めるまでに行っていないことを明らかにした。私が彼女に何を見ているのかと聞くと、彼女は「沢山の世界が混じっていて、たくさんの過去の人生がある場所」と言った。
彼女のこのような状態を見て私は彼女が分離を経験していることを察し、彼女が危ない状況にあることを察した。そこで、私は彼女が見ている遠い場所に居続けていいということと、私自身やグループの皆もここで座って皆彼女と同じ場所に行く事ができる、ということを話した。
私の言葉は彼女を更に別の世界へ行く事を励まし、彼女はよりいっそう「遠い世界」に浸り始めた。このような心理学方法はゲシュタルト心理で変化のパラドックスと呼ばれ、クライアントをあるがままにさせ、既にあるものに自分を近づける方法である。
彼女は「今は何も感じないわ。」と言った。
別の言葉で彼女の今の状態を表すと、彼女は完全に分離したのだ。分離した状態では、特定の方法でしかクライアントと会話することができない。
私は彼女に、あなたがより安全を感じるためには私には何ができますか、と聞いた。その問いに彼女は「誰にも見られたくないの」と答えた。
私は彼女に言われたことに従った。しかし同時に悲しみも感じる、ということをブレンダに伝えた。それは、私は彼女を全く見ていないく、見ようともしない努力をしないといけないため、彼女は完全に私から隠れている状態になるからだ。私は彼女の暖かさを感じることは出来たが、彼女へ手を差し伸べる方法を見つけることができないと伝えた。
するとブレンダは私をみつめ、「私は人の助けを借りるのは好きじゃないのよ」と言った。
ブレンダのこの言動は、私に次にどうするべきかのヒントを与えてくれた。
私はある実験を提案した。それは、彼女が両手を挙げて、片手はひとを押し出すしぐさをし、もう片方は人の助けを借りられる状態にし、手を開いておくということだった。こうすることにより、ブレンダは私の支えを受け入れることができた。私がゆっくり手を伸ばすと彼女は空いているほうの手で私の手を握ってくれた。
彼女は更に「私には感覚をもたらせない見えない力が働いている」と言った。私はグループの一人にわたしたちの前に立ってその「見えない力」を表してもらうようお願いした。彼女はその人の名前は匿名であることを希望した。
「見えない力」を表している人に対し、私は彼女にその力に対しある宣言をするように言った。彼女は「見えない力」に対し「私はあなたが私に役立つ時はあなたに耳を傾けるけど、それ以外の時は私は人の支えを感じることができるようにするわ」と言った。
この宣言はブレンダにとって識別性と統合性を表した。
彼女がこう宣言することにより、物事に対する感覚が戻り、人からの支えを受けることができ、人間関係を築くことができ、自分の存在感を感じ、人生で物事を選択する権利があるということを感じはじめることが出来た。
ブレンダとのセラピーはとっても時間がかかり、常に彼女の境界線に注意し、あまり深入りしないように注意し、彼女が感じていることさえもあまり聞かない様注意する、とても大変なものだったが私は絶対にあきらめなかった。通常、ブレンダのようにあまり心を開かない人に対し、人々はあまり深入りをしないようにしたり、表面だけでの関係を持とうとしたり、たまにはその人に過剰に興味を示したり優しくしたりすることによって圧倒させてしまいます。ブレンダのような人々に必要なのは暖かさはあるが、圧倒するほどのものでは無く、興味を持ってくれるが本人を圧倒させるほどのものでは無い、中立した関係です。これは順応性と呼ばれ、人間関係の中では重要なスキルの一つにはいります。

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