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2013年12月30日月曜日

ケース#19 - 魅力と境界線

ディーは若い女性です。彼女は恐れについて話しました。私は何が恐いのかを尋ねました。彼女は男性が恐いと答えました。私は、彼女に具体的に話してもらうことにしました。彼女は男性から注目されたいけど、注目されるのが恐いと言います。

私は自分自身がセラピストであり、先生であり、男性であることを伝えました。彼女はそれに納得しましたが、私のことはそのような人として見ていないと言いました。

私は「いま、ここ」で起きている問題を持ち出し、人間関係に当てはめることに焦点を合わせました。私は自分自身を道具としてワークに活用して、人間関係に大きな気づきを与え、経験を深めようと思いました。

私はもう一度、私が男性であることは事実であることを伝えました。これは彼女にとって、何を意味するかを気づかせるためです。

彼女は恐いと言いました。私はなぜかと尋ねました。彼女は、私が彼女に魅力を感じてしまうかもしれないからと答えました。

それのどこがいけないのだろう?もし私が彼女に恋をしたら、それが彼女の望まない難しい状況を創り上げてしまうから。

そこで私は、彼女にそのことを口に出して私に直接言うように勧めました。「私はあなたに、私のことを好きになって欲しくない。私はあなたとそのような関係になりたくない。」

彼女は境界線をより強く感じることができました。

私は自分自身がいま経験したことを語りました。「私もあなたと恋に落ちたくはない。私はあなたのことを魅力的だと思うけれど、あなたはご自身の境界線の中に存在していて、私は自分自身の境界線の中に存在しています」

そして、私は彼女に尋ねました。私が彼女に魅力を感じたことを伝えた時、そのように感じたか。彼女は注目されたいけれど、それが怖いという局面に立っていたことを教えてくれました。

彼女にとって安全な範囲で行動する限り、彼女は大丈夫な経験を手に入れていました。反対に、彼女の境界線を認識して表現することで、彼女の魅力について触れられた時でも過度に反応せずに対応することができました。

この話をしている途中で彼女は何度か困惑していたので、私は私自身の経験について話すことにしました。私も私自身について、すべてのことに気づくことが簡単ではないこと。できれば、一度にすべてのことに気づくことができるようになりたい。私たちがお互いのことを話してきたことはとても良いことなので、いまはただ二人で繋がったこの時を経験しよう。コントロールできないような恐れ抜きでね。

この言葉は、彼女が境界線を意識できるという自信を与えました。また、男女の人間関係について、例えばエロティックな側面を持つと言ってもよい話をしても、大きな問題となることはありませんでした。このワークは彼女にとって、様々な意味で新しい経験となりました。

ゲシュタルト療法は、真正を重要視します。そのプロセスは、気づきを高め人間関係に繋げます。

2013年12月24日火曜日

ケース#18 - 小さなホリデー

トゥルーディは、彼女の叔父さんと叔母さんと生活していました。叔父さんは、トゥルーディが心理学に興味を持っていることをつまらないことだと思っていて、彼女に仕事を見みつけるよう、あれこれ言ってプレッシャーを与えていました。今日参加しているようなワークショップにお金を使うことにも文句を言います。そして、もうすぐ26歳になる彼女に対して、すぐに結婚するように言いました。

私が彼女に、身体で何を感じているか尋ねると、彼女は肩に痛みを感じると言いました。

まちがいなく、彼女は叔父さんに言われたことに対してプレッシャーを感じていました。仕事を見つけるにしても、どんな仕事か?といったように。私が彼女に何をしたいのか尋ねると、セラピーだと言います。しかし、彼女はセラピーを始める前に人生経験を積み、練習を重ねる必要があると感じていました。私は彼女に、いつその時が訪れるのかと尋ねると「歳をとったら」と答えました。

ゲシュタルト療法では、細かいことに焦点を当てます。私は彼女に「何歳か」と尋ねると、80歳という答えが返ってきました。

次に、80歳までの間にどんな仕事をしたいのか尋ねると、プレッシャーを感じていて、考えることができないと彼女は言いました。

そこで私は、彼女にプレッシャーを感じることを「お休み」するように提案しました。その方法は、1分間の小さなホリデーをとるというものです。その間、私と一緒に居ることを感じてもらい、一緒に小さなホリデーを感じます。私は彼女について感じている自分に気がつき、彼女に感謝している自分に気がつきました。彼女にも同じことをしてもらいます。

これにより、彼女は「いま、ここ」を感じ、彼女本来の認識を持ち、私との人間関係を完全なものとしました。彼女は両親から励まされず、プレッシャーを与えられていたと教えてくれました。このようにして、彼女に知覚認識がもたらされました。ゲシュタルト療法ではこのようなプロセスを用いて、クライアントが苦しい人生を歩んできたといった「ストーリー」やその図式から抜け出します。

私がここでしたことは、ゲシュタルト療法の試みなのです。

彼女は少しリラックスした様子ですが、十分ではなかったようです。彼女は自分自身にあまり「ホリデー」を与えることができませんでした。

私は彼女を呼び、肩の痛みがある場所を教えてもらい、指で押してみました。これはマッサージをしている訳ではなく、緊張している場所に気づいてもらい、気づきの感覚を研ぎ澄まさせるためのものです。彼女は肩の痛みに慣れすぎていて、あまり注意を払っていませんでした。

私が指を離した時、彼女は解放感を味わいました。

もう一度「小さなホリデー」をやってみます。そして、仕事についてもう少し深く話してみます。そして、また「小さなホリデー」をやってみます。彼女はまだきちんと休むことができない様子です。

私は、このワークが彼女にとって大変だったことに共感しました。そして、そのことを悲しく感じていることを伝えました。私はまた、このままプレッシャーを感じ続けたら、歳をとるまで生きられるか心配であることも伝えました。

この言葉は、彼女が抱えているより大きな問題を彼女に気づかせました。また、プレッシャーを持ったまま生きることを選んだ結果を認識させました。彼女が本当は望んでいない生き方に向き合う道があることを、別の視点から伝えました。

ゲシュタルトとは、選ぶことである。

2013年12月21日土曜日

ケース#17 - 陳腐な話は遮るべし


ジェイクは精神的な問題を抱えていました。彼は人生の中で大きな苦しみを経験してきました。精神科に何度も足を運んでいたこと、たくさんの種類の薬を服用してきたこと、耐え難いほど重荷だったセラピーに挑戦してきたこと。彼の自尊心はとても低く、シャイであったため人と関わるのが苦手でした。

彼は声を上げて、苦しんできたストーリーを話し始めました。

私はその話をすぐに遮りました。私の判断では、この話はとても古く、擦り切れるほど話されていて、同情したりかわいそうに思うことや、彼の苦しみが正当なものであることを説明すること以外は、彼のためになるものではありませんでした。

私は、彼にとって何が心地よくて何が苦痛かを区別するよう指示しました。部屋の中の人々を見渡して、どの人がより心地よく身体で感じるか、どの人があまり心地よく感じないかということを見つけ出していきます。

それが終わると、私は彼に、どの人を見た時に一番心地よく感じたかを尋ねました。彼は同じグループに居たセラピストを選びました。私は彼に、どのように感じたかを表現するよう言いました。彼は胸に温かさを感じると言いました。私は彼に、その場所に向かって息をするように言いました。彼は見た目にもリラックスして、顔の表情が和らぎました。

次に私は、彼にグループの中で二番目に心地よかった人を選んでもらいました。彼は一番若い参加者を選びました。そして、最初の人の時と同じことをしてもらいました。

一連のワークを経験したことは、彼に安らぎと充実感を与えました。

このワークでは、彼が苦しんでいた話を遮るという試みを行いました。そして「いま、ここ」で起きている人間関係に身を置いてもらい、彼を元気にすることを体験してもらいました。

ゲシュタルト療法は「いま、ここ」を扱うセラピーです。ストーリーというものは、問題の背景を知る手掛かりになるか、理解を深めるのに必要なものかもしれません。ストーリーによっては、ワークに重要な意味を持つものがあるからです。しかし、その他のストーリーは陳腐で使い古されていて、苦しさの強化行動に繋がるものなのです。

すべてのストーリーは、必要な場面で「いま、ここ」に登場します。それが、ゲシュタルトの着眼点です。

2013年12月19日木曜日

ケース#16 - 笑った目、怖い目

イングリッドは、私を見てこう言いました。「あなたは笑った目をしている」

私は言いました。「怖い目よりいいでしょ?」

私の目が笑っていると感じて彼女が安心感を覚えているのは良いことですが、私の怖い部分を見ていません。私はこの相反することを彼女と話したいと思いました。彼女の怖い部分はどうなっているのだろう?無難で安全な関係よりも、私の興味は彼女との深い人間関係に向けられていました。

そこで私は、彼女が怖い目をしている時のことを尋ねました。そして私も、怖い目をしている時のことを話しました。怒っている時や、傷ついた時のことも話しました。

彼女は怒っている時のことを話しました。私は具体的な例を尋ねました。彼女は、彼女の夫が彼女に電話した時の話をしてくれました。彼女は忙しくて話している暇がないと伝えたにも関わらず、彼女の夫は話し続け、彼女は聞き続けていました。このパターンはずっと続いていました。

私はひとつの試みを勧めました。

私たちは立ったまま顔を合わせています。そして、お互いの手を上に上げました。それは、彼女と夫の間に起きていたことを再現した行為で、まさに彼が彼女の境界線を押しのけて入ってきた瞬間でした。私は彼女の手をゆっくりと押しました。彼女は後ろに下がるか、転んでしまうしかありません。

私は彼女に、手を前に押してみるよう促しました。彼女はそれに従いました。でも、その力はとても弱いものでした。私たちは同じことを何度かしてみました。

私は彼女に、自分の境界線を守るように励ましました。最後に彼女は力を振り絞り、とても強い力で押し戻しました。私はその強い力を感じることができました。

次に私は、彼女に夫になりきってもらい、私の境界線を超えてみるよう促しました。これは彼女にとって、大きな問題に直面することとなりました。誰かを侵略することは彼女にとってハードルが高すぎました。

そこで今度は、私が彼女の手を押して、その力を受け止めて感じてみるように促しました。彼女の境界線の内側に、私を入れないようにしてもらったのです。彼女は脚の感覚が鈍くなるのを感じ、手に力が入らないと言いました。私は彼女に、脚の感覚に意識を向けるよう促しました。少しして、彼女に一歩前に出てもらい、私は一歩下がってみました。そうすることで、とうとう彼女は全身を使って力を出し、私の力を受け止めることができました。

これは、とても強い出会いのような感覚でした。

このワークでは、力を使った試みがなされました。彼女が置かれた状況を語ることはせずに、私と彼女の間に「いま、ここ」で起きていることを扱いました。私も一緒になりワークを進めることで、二人の間に何が起きているかを正確に知ることができました。そして、凍りついて弱い彼女の内面を満たすことができました。

2013年12月16日月曜日

ケース#15 - 色覚異常、まばたき、そして感受性

認識の弱さとまばたき:王さんのケース

王さんは聡明で若い男性です。今日は私が彼に、現象学のやり方を見せる日です。私はまず、彼のTシャツがダサい茶色であることに気がついたことからスタートしてみました。

彼には若干の色覚異常があり、彼にはそれが緑色に見えると言います。

話をしていくと、彼は色の認識について「弱い」という言葉を使いました。

それに関連させて、彼は人間関係についての感覚や認識が総じて「弱い」という話を始めました。このことは、彼と彼の恋人との問題を作り上げています。

私は自分自身のことを持ち出し、私の認識力の弱いことを話しました。

私が自己開示したことにより、彼はさらに心を開くことができました。

彼は認識の弱さを変えるか直す方法を見つけたいと言いました。

私は彼に説明しました。ゲシュタルト療法では問題を直すということはせずに、あるがままの自分自身になり、個人の強さや限界を知ることであることに焦点を当てることを大切にしています。その前提の上で、可能性の幅をもしかして広げることができるかもしれません。

私は彼に、どのようなやり方が良いか尋ねました。すると、彼は何かを挙げるのですが、その後に「だけど」と言い始めます。私は、彼が彼の見解を話したところで話を止めました。そして、私にはどのようなやり方が合っているかということを話しました。

ゲシュタルト療法のワークでは、セラピスト自身の例を挙げて話をリードすることがよくあります。

私は彼の限界について尋ねました。すると、彼からは漠然とした答えが返ってきました。私は具体的な例を挙げるように言いました。ゲシュタルト療法では目の前にある問題を詳しく語ってもらい、そこからワークを進めていきます。

彼は、彼の恋人が感謝と優しい言葉を欲しがっていることを例に挙げました。彼はいつも感謝と優しい言葉を忍耐強く表現しているつもりでした。彼は、彼女が感じていることを理解するのが難しいと感じていました。

私は彼の仕草を観察して気づいたことを伝えました。彼は不自然なまばたきをしていて、回数も多く、とても目立った仕草をしていました。

彼はそのことに少し気づいていました。しかし、私が指摘した目的は「彼がまばたきをしている間、何も見えないということ」に気づきをもたらすことでした。私は彼に、グループの人達を見ながら、自分がまばたきをした瞬間が分かるか試してもらいました。これは彼にとって優しいことではありませんでした。彼のまばたきはとても速く、しかも彼は、まばたきをしたことに気がついていません。

そこで、彼に私を見てもらい、彼自身のまばたきを感じてもらいました。彼はすぐに自分の評価を話し始めましたが、私は彼に、彼自身そして彼が経験したことを、カメラのように冷静に観察するように促しました。

これも彼にとっては、簡単なことではありませんでした。彼は自分がまばたきしたことに気づいていませんでした。しかし、一度だけ彼がゆっくりとまばたきした時、私は彼に何が起きているかを尋ねました。

彼は外の世界と接することを避けていると言いました。

ゲシュタルト療法では何かが変わるという岐路に立ったとき、どんな現象が起きているかを観察します。そして、その時点で経験していることを調べます。

私は、私が父を訪ねた時に父を避けていることを例に「避ける」ということを彼と話しました。ここでも、私自身を自己開示することで、彼の心のさらに深い部分を引き出すことができます。

このことは彼の感情を揺さぶりました。彼は彼のお父さんとのコミュニケーションにも問題を持っていました。

お父さんとの関係について扱う時間はありませんでしたが、今後のワークで取り上げた方が良いことが分かりました。

この時点で、すでに多くのことを扱ってきたので、ワークを終わらせました。

彼が「認識」について自覚するまでには練習が必要です。この日のワークは、その始まりに過ぎません。彼は頭が良く、すぐに思考し始めます。彼にとってのまばたきは、彼が感情に触れる時に起こり、特に感情が処理しきれる以上のことが起きた時、顕著に身体に現れる特徴なのです。

彼が他の人に注意を向けるには、まず彼が自分自身に注意を向ける能力を高めることが必要でしょう。今回のワークでは、彼の感覚がまばたきによって邪魔されていたことが分かりました。彼の「弱い」認識は、うまくコントロールすることができる可能性が残されています。

2013年12月12日木曜日

ケース#14 - 睡眠:「しがみつくこと」と「手放すこと」

ジュリーはワークショップのグループに居ると、リラックスして眠くなると言いました。

彼女は20年もの間、睡眠障害に悩まされ続けています。私が20年前に何があったのかと彼女に尋ねると、彼女は「たくさんのことが起きていて、とても忙しく、睡眠をとる暇がなかったのよ」と答えました。その出来事の背景を探るより、この場で経験していることを掘り下げてゲシュタルト療法を始めようと決めました。

私は、睡眠とは「手放すこと」であると説明しました。ワークショップのクループで彼女はそれができていて、眠くなっています。

ゆえに、もし彼女が通常の睡眠に問題を持っているとしたら、明らかに「しがみつくこと」を行っていたのです。

そこで私は、彼女に私の手首を掴んでもらい「しがみつくこと」と「手放すこと」をしてもらいました。そして私は、彼女にワークショップで経験した「手放すこと」をしてもらいました。その後で、いつも家で眠りに就く前にしている「しがみつくこと」をしてもらいました。

私は彼女が両手の中指を絡めている様子を見て、彼女がしがみついている力がさほど強くないことに気がつきました。私は彼女の指に注意を向けさせました。そして、その指同士を離してみるとどうなるか試させました。絡めた指を離すことは、彼女にとって難しいことではありませんでした。

これは小さな試みでしたが、彼女がしていたことを直接経験させるものでした。また、いままでとは違う経験を与えるものでした。私は彼女に提案しました。眠りに就く時に指を絡めていることに気がついたら、ワークの中でどのようにしてそれを離したか、どのようにしてグループに戻って行ったかを思い出してください。

ゲシュタルト療法においての試みは、問題を「いま、ここ」に持ってきて、抽象的なものを能動的に具体化し、創造的な方法で探ります。可能であれば、それをセラピストとクライアントの関係に持ち込みます。この方法は、クライアントに説明してもらうよりも、クライアントに何が起きているのかをセラピストに直接的に理解させてくれます。体験を通して試みることは新しい経験をもたらし、これまで気づかなかったことや、細かく見ていなかった「いま、ここ」というものに気づかせてくれるのです。ゲシュタルト療法では、完全な気づきが起きた時、行き詰まりや未完了や分裂していたものが無くなります。つまり、統合が自然に起きるのです。これは、道教の教えでもあります。

2013年12月7日土曜日

ケース#13- - 血の夢

リズは何度も同じ夢を見ていました。私は彼女に、ゲシュタルト療法のスタイルで夢の中の出来事を現在形で言うように伝えました。これは「いま、ここ」を経験してもらうための方法です。

彼女は、こんな風にその夢を表しました。

私はお母さんの隣にいて電車に乗っています。席の向かいには黒い制服を着た男の子が二人いて、私をからかっています。私が驚くと二人は立ち去りました。すると、今度はそのうちの一人が私の隣にいて、性器から温かい血を放出しています。電車の床は温かい赤い血に染まっています。私は怖い。彼はそこに立っていて、血は出続けています。もう一人の男の子も同じことをしています。

駅に着くと沢山の医療器具を持った女性のお医者さんがいて、私はほっとしています。

彼女の夢はこのようなものでした。

私は「いま、ここ」で深く繋がってみて、どのように感じるか彼女に尋ねました。

「怖い、死んでしまいそうな気分、ひとりぼっち」

今度は彼女に、夢の中の男の子になってもらいました。すると、彼女はこう言いました。「私はエネルギーを失っています。床に崩れ落ちそうです。生きる力や温かさを持つことができません」

私は彼女に、彼女自身の身体の中に入るように言いました。これは、夢の中での経験と、現在の身体が経験していることを結びつけ「彼女が何者なのか」ということに近づけるためです。

彼女は胸のあたりに、ぽっかりと穴の開いたような感覚を覚えていました。それは、穴の開いたバケツのようなものでした。私は、彼女の中にどの位の温かさを感じているかを訪ねました。彼女は30%と答えました。

私は、彼女が身体で感じたことを人間関係と結びつけ、彼女に次のような意見を述べました。

私が経験した彼女の性格は、とても温かいものです。数字にすれば70%です。

私は彼女に、この差について尋ねて、試しに彼女が温かさを上げたり下げたりできるかということをやってみました。

まずは、目の前にある「温かさ」の問題そのものを扱います。

彼女が温かさを下げた時、彼女はバラバラになってしまいそうに感じ、腸が冷たく感じました。

彼女が言うには、いつもの生活でも小腸に針を刺したような痛みをたびたび感じるのだそうです。そして、彼女は冬の間、呼吸をするのが大変になるほど寒さに反応していました。

今度は、彼女に自分の小腸に入るように勧めました。

彼女は重くて、せき止められていて、湿気が多く、動いていない感覚だと言いました。

彼女は、栄養摂取が物理的にうまくいっていないと言いました。彼女は食物から十分な栄養を摂ることができず痩せていて、サプリメントの力を借りていました。また、人から触られると怖がります。彼女は努力しないとリラックスできません。セックスに対しても消極的です。彼女は人から触られることを望んでいましたが、それは子どもとして接してもらうことでした。

私は彼女に、温かさを掘り下げて感じてもらうため、夢の中の血に「なる」ように言いました。

彼女は言いました。私は温かく、元気いっぱいで、栄養に満ちています。男の子は私を拒絶しています。私は彼の身体から出ています。私は彼から必要とされていません。

私は、このことが彼女の人生の何と結びつくか尋ねました。つまり、この夢と彼女の実際の人生を結びつけるということです。

彼女は、人生を投げ出していることについて話しました。「もうたくさん、一度に嫌なことがたくさん起きるし、理解してもらえている感じがしない!自分の中にいる男性の声が、私に死んだほうがいいと語りかけている」

そこで、今度は彼女のお父さんについて聞いてみました。彼女とお父さんの間にはいつも距離がありました。彼女が子供の頃、彼女のお父さんは心を開かず、テレビを見ているか、内に閉じこもり、話をしてくれませんでした。お父さんの顔は厳しく固いものでした。彼女はお父さんに対して申し訳なく思い、お父さんの笑顔が見たい一心で、まるで男の子のような態度でお父さんを喜ばせようとしていました。

大人になってからの彼女は、お父さんを見るとお腹の調子が悪くなりました。お父さんは小さな男の子のような目で、まるで彼のお母さんを見るような目つきでリズのことを見ていました。

すべてのことが分かりました。子どもの彼女はお父さんの温かさを必要としていました。しかし、それとは逆に彼女はお父さんの心を温めていたのです。そして、お父さんの心は決して温まることはありませんでした。その役割は子どもにとって重荷となり、彼女の生命力を抜き取る結果となりました。いまの彼女には温かさを与えるほどの余裕はありません。彼女が得るものより与えるものの方が大きく、日常的に空っぽな感覚を持つようになったのです。こうすることで得ていたのは寛大さと母性でしたが、彼女の内面は痛みと空虚感でいっぱいでした。

このバラバラになった感情は、命を拒絶することを意味します。彼女はジレンマと行き詰まりに苦しんでいました。


この場において必要なのは、行き詰まりを解消することではなく、その行き詰まりに対して気づきをもたらすことです。ゲシュタルト療法では、すべての変化は気づきから始まります。

2013年12月5日木曜日

ケース#12 - 夢:双子、水、お母さん

夢や白昼夢やストーリーというのは、すべて似通っています。それらは、人そのものにアクセスさせてくれます。

 
ジェシーは、双子の男の子のストーリーを創りました。彼らはダムの岸で遊んでいます。主役は、仮にトニーという名前にしておきましょう。トニーは水が怖く、双子の兄弟のジャックは平気でした。ジャックは水に入り遊んでいて、トニーに来るように呼びながらからかっています。トニーは行きませんでした。二人のお母さんは亡くなっていて、彼らは継母によって育てられています。トニーはいつもポケットに小石を入れていて、それはお母さんを思い出すためのものでした。ジャックはトニーのポケットからその小石を取り出して、目の前の水に投げました。トニーは慌てて水に飛び込みました。彼は水に入っていても大丈夫だということに気づきました。そして、小石のことは忘れていました。


ジェシーの問題は、彼が恋人と結婚することを躊躇していることでした。彼は彼女を愛していましたが、今後長い期間に渡って関係を保つことに自信がなく、きっぱりとした決断に至っていませんでした。

 
私たちは、この夢について見てみることにしました。トニーに夢の中で登場したものになってもらいます。夢の中のトニーは、水が怖くて飛び込めません。夢の中のジャックは、積極的で穏やかで、はしゃいでいました。夢の中の亡くなったお母さんは、愛らしく若くてソフトな人でした。夢の中の水は深い存在でした。
 

お母さんを経験したことは、彼にとって大切なものとなりました。彼の実際のお母さんは冷たく遠い存在でした。このことが彼の一部となり、女性との関係を難しくする原因の一部になっていました。彼は女性と近づきすぎるのが怖く、冷たいものが二人の関係に入ってくるのが怖かったのです。


先ほど彼に夢のパーツになってもらったことで、明白になったことがあります。それは、彼がそれぞれのパーツを通し、深くて温かい女性性を経験したことです。それから、怖いもの知らずで温かいお母さんを受け入れられて、水に「投げ込む」ことができる「双子」の助けが必要だったことも分かりました。


そこで私は、彼と双子を演じてみようと提案しました。私が双子の兄弟になり、お母さんの思い出をポケットから取り出し水に投げ込むのです。彼が同意したので私は言いました。「お母さんの思い出の小石を取ったよ。水の中に投げるよ!」彼は水の中に入る姿を想像しました。すると、彼はリラックスできたのです。


これは彼にとって深い経験となりました。彼はしっかりした感覚を持ち、落ち着き、彼の中のより深い部分に到達することができました。その感覚は、未来の人間関係に心配が及ぶようなものではありません。彼が造ったストーリーにもあったように、いったん水の中に入ってしまえば、お母さんの記憶はこれ以上必要がありませんでした。
 

とはいえ、他のいくつかのことが必要だったことも分かりました。まず、彼が求めていた温かいお母さんという存在に気づかせてくれた双子が助けとなりました。そして、彼の自然な動きはそれに向かいました。最後に、彼は自分自身になることができました。ためらって飛び込めない自分と、未来に向かってどんどん先に進んでいく自分に分裂することはなくなりました。彼はその二つが一つになるのを感じました。そして、心の中に深く、温かく、女性性との繋がりがあるのが分かりました。それは、彼を躊躇せずに本来の人生と人間関係に飛び込む結果をもたらしました。

 


2013年12月1日日曜日

ケース#11 - お父さん、お母さん、ガールフレンド

ジョンは、ガールフレンドに心を許すことができませんでした。また、二人の関係そのものをどうしたら良いか確信が持てませんでした。

彼はこんな夢を見ました。ジョンと彼女がセックスをしている夢です。彼の後ろには彼のお父さんとお母さんがいました。彼のお父さんは若く、自信に満ちて、強い人です。

責任が取れるかどうか確信が持てなかったので、ジョンは彼女を妊娠させたくありませんでした。ジョンのお父さんが目の前に出てくると、ジョンは安堵しました。

こんな時、フロイト派ならば羽目を外すくらいはしゃいでいたでしょう。でも、私たちのゲシュタルト療法のワークでは違う方法をとります。ゲシュタルト療法が重んじるのは統合と責任です。ワークではすべての夢のパーツを確認することにしました。夢のパーツは私たちの中にある対立した二者や私たち自身にアクセスさせてくれます。

私はジョンに、それぞれの夢のパーツになるように言いました。

夢の中の彼自身は、恥ずかしがり屋で気持ちを表に出さない性格でした。

夢の中の彼女は、彼の愛情を欲しがっていて、重さのない感じでした。

夢の中のお父さんは、オープンで分かりやすい性格で健康的でした。

夢の中のお母さんは、本心を見せず影がある感じがしています。人目に付きたくなく、どこかに隠れていたい人でした。

私は、彼の夢の中の登場人物の性格に共通点があることに気がつきました。お父さんと彼女は二人とも自信があり、しっかりしています。彼自身とお母さんは両者とも自信がなく、しっかりしていなくて、目立たない性格です。

この状況はよく理解できました。彼が成長する時、お母さんは冷たい態度で接していました。

そこで、その冷たさについて追求してみることにしました。特に彼が彼女との関係で冷たくなってしまうのかを。そこで私たちは、彼が彼女に対して持っている不安や決心できないことが、どのようにして現れるのかを見てみることにしました。

彼が「何も無い感情」と呼んでいる感情のない一面を見ていきます。すると、それは彼の落ち込む気持ちと無意味さという経験と結びつきました。

二人の関係に彼自身の根本的な性格である冷たさを持ち込んだことが分かり、それに気づくことができたことは大きな希望を与えてくれました。外の世界の何か(つまり、彼女という存在)を必要とせずに彼自身を「温める」必要があるでしょう。

このワークは気づきの原則、ゲシュタルト療法の概念である責任、そして「あるがまま」が一体になることに基づいて行われました。彼は彼女との関係に冷たさを持ち込んでいました。彼の冷たさ自体は変わることはないでしょう。しかし、二人の関係において、彼が気づきや選択や理解を増すことは可能です。

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