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2013年12月30日月曜日

ケース#19 - 魅力と境界線

ディーは若い女性です。彼女は恐れについて話しました。私は何が恐いのかを尋ねました。彼女は男性が恐いと答えました。私は、彼女に具体的に話してもらうことにしました。彼女は男性から注目されたいけど、注目されるのが恐いと言います。

私は自分自身がセラピストであり、先生であり、男性であることを伝えました。彼女はそれに納得しましたが、私のことはそのような人として見ていないと言いました。

私は「いま、ここ」で起きている問題を持ち出し、人間関係に当てはめることに焦点を合わせました。私は自分自身を道具としてワークに活用して、人間関係に大きな気づきを与え、経験を深めようと思いました。

私はもう一度、私が男性であることは事実であることを伝えました。これは彼女にとって、何を意味するかを気づかせるためです。

彼女は恐いと言いました。私はなぜかと尋ねました。彼女は、私が彼女に魅力を感じてしまうかもしれないからと答えました。

それのどこがいけないのだろう?もし私が彼女に恋をしたら、それが彼女の望まない難しい状況を創り上げてしまうから。

そこで私は、彼女にそのことを口に出して私に直接言うように勧めました。「私はあなたに、私のことを好きになって欲しくない。私はあなたとそのような関係になりたくない。」

彼女は境界線をより強く感じることができました。

私は自分自身がいま経験したことを語りました。「私もあなたと恋に落ちたくはない。私はあなたのことを魅力的だと思うけれど、あなたはご自身の境界線の中に存在していて、私は自分自身の境界線の中に存在しています」

そして、私は彼女に尋ねました。私が彼女に魅力を感じたことを伝えた時、そのように感じたか。彼女は注目されたいけれど、それが怖いという局面に立っていたことを教えてくれました。

彼女にとって安全な範囲で行動する限り、彼女は大丈夫な経験を手に入れていました。反対に、彼女の境界線を認識して表現することで、彼女の魅力について触れられた時でも過度に反応せずに対応することができました。

この話をしている途中で彼女は何度か困惑していたので、私は私自身の経験について話すことにしました。私も私自身について、すべてのことに気づくことが簡単ではないこと。できれば、一度にすべてのことに気づくことができるようになりたい。私たちがお互いのことを話してきたことはとても良いことなので、いまはただ二人で繋がったこの時を経験しよう。コントロールできないような恐れ抜きでね。

この言葉は、彼女が境界線を意識できるという自信を与えました。また、男女の人間関係について、例えばエロティックな側面を持つと言ってもよい話をしても、大きな問題となることはありませんでした。このワークは彼女にとって、様々な意味で新しい経験となりました。

ゲシュタルト療法は、真正を重要視します。そのプロセスは、気づきを高め人間関係に繋げます。

2013年12月24日火曜日

ケース#18 - 小さなホリデー

トゥルーディは、彼女の叔父さんと叔母さんと生活していました。叔父さんは、トゥルーディが心理学に興味を持っていることをつまらないことだと思っていて、彼女に仕事を見みつけるよう、あれこれ言ってプレッシャーを与えていました。今日参加しているようなワークショップにお金を使うことにも文句を言います。そして、もうすぐ26歳になる彼女に対して、すぐに結婚するように言いました。

私が彼女に、身体で何を感じているか尋ねると、彼女は肩に痛みを感じると言いました。

まちがいなく、彼女は叔父さんに言われたことに対してプレッシャーを感じていました。仕事を見つけるにしても、どんな仕事か?といったように。私が彼女に何をしたいのか尋ねると、セラピーだと言います。しかし、彼女はセラピーを始める前に人生経験を積み、練習を重ねる必要があると感じていました。私は彼女に、いつその時が訪れるのかと尋ねると「歳をとったら」と答えました。

ゲシュタルト療法では、細かいことに焦点を当てます。私は彼女に「何歳か」と尋ねると、80歳という答えが返ってきました。

次に、80歳までの間にどんな仕事をしたいのか尋ねると、プレッシャーを感じていて、考えることができないと彼女は言いました。

そこで私は、彼女にプレッシャーを感じることを「お休み」するように提案しました。その方法は、1分間の小さなホリデーをとるというものです。その間、私と一緒に居ることを感じてもらい、一緒に小さなホリデーを感じます。私は彼女について感じている自分に気がつき、彼女に感謝している自分に気がつきました。彼女にも同じことをしてもらいます。

これにより、彼女は「いま、ここ」を感じ、彼女本来の認識を持ち、私との人間関係を完全なものとしました。彼女は両親から励まされず、プレッシャーを与えられていたと教えてくれました。このようにして、彼女に知覚認識がもたらされました。ゲシュタルト療法ではこのようなプロセスを用いて、クライアントが苦しい人生を歩んできたといった「ストーリー」やその図式から抜け出します。

私がここでしたことは、ゲシュタルト療法の試みなのです。

彼女は少しリラックスした様子ですが、十分ではなかったようです。彼女は自分自身にあまり「ホリデー」を与えることができませんでした。

私は彼女を呼び、肩の痛みがある場所を教えてもらい、指で押してみました。これはマッサージをしている訳ではなく、緊張している場所に気づいてもらい、気づきの感覚を研ぎ澄まさせるためのものです。彼女は肩の痛みに慣れすぎていて、あまり注意を払っていませんでした。

私が指を離した時、彼女は解放感を味わいました。

もう一度「小さなホリデー」をやってみます。そして、仕事についてもう少し深く話してみます。そして、また「小さなホリデー」をやってみます。彼女はまだきちんと休むことができない様子です。

私は、このワークが彼女にとって大変だったことに共感しました。そして、そのことを悲しく感じていることを伝えました。私はまた、このままプレッシャーを感じ続けたら、歳をとるまで生きられるか心配であることも伝えました。

この言葉は、彼女が抱えているより大きな問題を彼女に気づかせました。また、プレッシャーを持ったまま生きることを選んだ結果を認識させました。彼女が本当は望んでいない生き方に向き合う道があることを、別の視点から伝えました。

ゲシュタルトとは、選ぶことである。

2013年12月21日土曜日

ケース#17 - 陳腐な話は遮るべし


ジェイクは精神的な問題を抱えていました。彼は人生の中で大きな苦しみを経験してきました。精神科に何度も足を運んでいたこと、たくさんの種類の薬を服用してきたこと、耐え難いほど重荷だったセラピーに挑戦してきたこと。彼の自尊心はとても低く、シャイであったため人と関わるのが苦手でした。

彼は声を上げて、苦しんできたストーリーを話し始めました。

私はその話をすぐに遮りました。私の判断では、この話はとても古く、擦り切れるほど話されていて、同情したりかわいそうに思うことや、彼の苦しみが正当なものであることを説明すること以外は、彼のためになるものではありませんでした。

私は、彼にとって何が心地よくて何が苦痛かを区別するよう指示しました。部屋の中の人々を見渡して、どの人がより心地よく身体で感じるか、どの人があまり心地よく感じないかということを見つけ出していきます。

それが終わると、私は彼に、どの人を見た時に一番心地よく感じたかを尋ねました。彼は同じグループに居たセラピストを選びました。私は彼に、どのように感じたかを表現するよう言いました。彼は胸に温かさを感じると言いました。私は彼に、その場所に向かって息をするように言いました。彼は見た目にもリラックスして、顔の表情が和らぎました。

次に私は、彼にグループの中で二番目に心地よかった人を選んでもらいました。彼は一番若い参加者を選びました。そして、最初の人の時と同じことをしてもらいました。

一連のワークを経験したことは、彼に安らぎと充実感を与えました。

このワークでは、彼が苦しんでいた話を遮るという試みを行いました。そして「いま、ここ」で起きている人間関係に身を置いてもらい、彼を元気にすることを体験してもらいました。

ゲシュタルト療法は「いま、ここ」を扱うセラピーです。ストーリーというものは、問題の背景を知る手掛かりになるか、理解を深めるのに必要なものかもしれません。ストーリーによっては、ワークに重要な意味を持つものがあるからです。しかし、その他のストーリーは陳腐で使い古されていて、苦しさの強化行動に繋がるものなのです。

すべてのストーリーは、必要な場面で「いま、ここ」に登場します。それが、ゲシュタルトの着眼点です。

2013年12月19日木曜日

ケース#16 - 笑った目、怖い目

イングリッドは、私を見てこう言いました。「あなたは笑った目をしている」

私は言いました。「怖い目よりいいでしょ?」

私の目が笑っていると感じて彼女が安心感を覚えているのは良いことですが、私の怖い部分を見ていません。私はこの相反することを彼女と話したいと思いました。彼女の怖い部分はどうなっているのだろう?無難で安全な関係よりも、私の興味は彼女との深い人間関係に向けられていました。

そこで私は、彼女が怖い目をしている時のことを尋ねました。そして私も、怖い目をしている時のことを話しました。怒っている時や、傷ついた時のことも話しました。

彼女は怒っている時のことを話しました。私は具体的な例を尋ねました。彼女は、彼女の夫が彼女に電話した時の話をしてくれました。彼女は忙しくて話している暇がないと伝えたにも関わらず、彼女の夫は話し続け、彼女は聞き続けていました。このパターンはずっと続いていました。

私はひとつの試みを勧めました。

私たちは立ったまま顔を合わせています。そして、お互いの手を上に上げました。それは、彼女と夫の間に起きていたことを再現した行為で、まさに彼が彼女の境界線を押しのけて入ってきた瞬間でした。私は彼女の手をゆっくりと押しました。彼女は後ろに下がるか、転んでしまうしかありません。

私は彼女に、手を前に押してみるよう促しました。彼女はそれに従いました。でも、その力はとても弱いものでした。私たちは同じことを何度かしてみました。

私は彼女に、自分の境界線を守るように励ましました。最後に彼女は力を振り絞り、とても強い力で押し戻しました。私はその強い力を感じることができました。

次に私は、彼女に夫になりきってもらい、私の境界線を超えてみるよう促しました。これは彼女にとって、大きな問題に直面することとなりました。誰かを侵略することは彼女にとってハードルが高すぎました。

そこで今度は、私が彼女の手を押して、その力を受け止めて感じてみるように促しました。彼女の境界線の内側に、私を入れないようにしてもらったのです。彼女は脚の感覚が鈍くなるのを感じ、手に力が入らないと言いました。私は彼女に、脚の感覚に意識を向けるよう促しました。少しして、彼女に一歩前に出てもらい、私は一歩下がってみました。そうすることで、とうとう彼女は全身を使って力を出し、私の力を受け止めることができました。

これは、とても強い出会いのような感覚でした。

このワークでは、力を使った試みがなされました。彼女が置かれた状況を語ることはせずに、私と彼女の間に「いま、ここ」で起きていることを扱いました。私も一緒になりワークを進めることで、二人の間に何が起きているかを正確に知ることができました。そして、凍りついて弱い彼女の内面を満たすことができました。

2013年12月16日月曜日

ケース#15 - 色覚異常、まばたき、そして感受性

認識の弱さとまばたき:王さんのケース

王さんは聡明で若い男性です。今日は私が彼に、現象学のやり方を見せる日です。私はまず、彼のTシャツがダサい茶色であることに気がついたことからスタートしてみました。

彼には若干の色覚異常があり、彼にはそれが緑色に見えると言います。

話をしていくと、彼は色の認識について「弱い」という言葉を使いました。

それに関連させて、彼は人間関係についての感覚や認識が総じて「弱い」という話を始めました。このことは、彼と彼の恋人との問題を作り上げています。

私は自分自身のことを持ち出し、私の認識力の弱いことを話しました。

私が自己開示したことにより、彼はさらに心を開くことができました。

彼は認識の弱さを変えるか直す方法を見つけたいと言いました。

私は彼に説明しました。ゲシュタルト療法では問題を直すということはせずに、あるがままの自分自身になり、個人の強さや限界を知ることであることに焦点を当てることを大切にしています。その前提の上で、可能性の幅をもしかして広げることができるかもしれません。

私は彼に、どのようなやり方が良いか尋ねました。すると、彼は何かを挙げるのですが、その後に「だけど」と言い始めます。私は、彼が彼の見解を話したところで話を止めました。そして、私にはどのようなやり方が合っているかということを話しました。

ゲシュタルト療法のワークでは、セラピスト自身の例を挙げて話をリードすることがよくあります。

私は彼の限界について尋ねました。すると、彼からは漠然とした答えが返ってきました。私は具体的な例を挙げるように言いました。ゲシュタルト療法では目の前にある問題を詳しく語ってもらい、そこからワークを進めていきます。

彼は、彼の恋人が感謝と優しい言葉を欲しがっていることを例に挙げました。彼はいつも感謝と優しい言葉を忍耐強く表現しているつもりでした。彼は、彼女が感じていることを理解するのが難しいと感じていました。

私は彼の仕草を観察して気づいたことを伝えました。彼は不自然なまばたきをしていて、回数も多く、とても目立った仕草をしていました。

彼はそのことに少し気づいていました。しかし、私が指摘した目的は「彼がまばたきをしている間、何も見えないということ」に気づきをもたらすことでした。私は彼に、グループの人達を見ながら、自分がまばたきをした瞬間が分かるか試してもらいました。これは彼にとって優しいことではありませんでした。彼のまばたきはとても速く、しかも彼は、まばたきをしたことに気がついていません。

そこで、彼に私を見てもらい、彼自身のまばたきを感じてもらいました。彼はすぐに自分の評価を話し始めましたが、私は彼に、彼自身そして彼が経験したことを、カメラのように冷静に観察するように促しました。

これも彼にとっては、簡単なことではありませんでした。彼は自分がまばたきしたことに気づいていませんでした。しかし、一度だけ彼がゆっくりとまばたきした時、私は彼に何が起きているかを尋ねました。

彼は外の世界と接することを避けていると言いました。

ゲシュタルト療法では何かが変わるという岐路に立ったとき、どんな現象が起きているかを観察します。そして、その時点で経験していることを調べます。

私は、私が父を訪ねた時に父を避けていることを例に「避ける」ということを彼と話しました。ここでも、私自身を自己開示することで、彼の心のさらに深い部分を引き出すことができます。

このことは彼の感情を揺さぶりました。彼は彼のお父さんとのコミュニケーションにも問題を持っていました。

お父さんとの関係について扱う時間はありませんでしたが、今後のワークで取り上げた方が良いことが分かりました。

この時点で、すでに多くのことを扱ってきたので、ワークを終わらせました。

彼が「認識」について自覚するまでには練習が必要です。この日のワークは、その始まりに過ぎません。彼は頭が良く、すぐに思考し始めます。彼にとってのまばたきは、彼が感情に触れる時に起こり、特に感情が処理しきれる以上のことが起きた時、顕著に身体に現れる特徴なのです。

彼が他の人に注意を向けるには、まず彼が自分自身に注意を向ける能力を高めることが必要でしょう。今回のワークでは、彼の感覚がまばたきによって邪魔されていたことが分かりました。彼の「弱い」認識は、うまくコントロールすることができる可能性が残されています。

2013年12月12日木曜日

ケース#14 - 睡眠:「しがみつくこと」と「手放すこと」

ジュリーはワークショップのグループに居ると、リラックスして眠くなると言いました。

彼女は20年もの間、睡眠障害に悩まされ続けています。私が20年前に何があったのかと彼女に尋ねると、彼女は「たくさんのことが起きていて、とても忙しく、睡眠をとる暇がなかったのよ」と答えました。その出来事の背景を探るより、この場で経験していることを掘り下げてゲシュタルト療法を始めようと決めました。

私は、睡眠とは「手放すこと」であると説明しました。ワークショップのクループで彼女はそれができていて、眠くなっています。

ゆえに、もし彼女が通常の睡眠に問題を持っているとしたら、明らかに「しがみつくこと」を行っていたのです。

そこで私は、彼女に私の手首を掴んでもらい「しがみつくこと」と「手放すこと」をしてもらいました。そして私は、彼女にワークショップで経験した「手放すこと」をしてもらいました。その後で、いつも家で眠りに就く前にしている「しがみつくこと」をしてもらいました。

私は彼女が両手の中指を絡めている様子を見て、彼女がしがみついている力がさほど強くないことに気がつきました。私は彼女の指に注意を向けさせました。そして、その指同士を離してみるとどうなるか試させました。絡めた指を離すことは、彼女にとって難しいことではありませんでした。

これは小さな試みでしたが、彼女がしていたことを直接経験させるものでした。また、いままでとは違う経験を与えるものでした。私は彼女に提案しました。眠りに就く時に指を絡めていることに気がついたら、ワークの中でどのようにしてそれを離したか、どのようにしてグループに戻って行ったかを思い出してください。

ゲシュタルト療法においての試みは、問題を「いま、ここ」に持ってきて、抽象的なものを能動的に具体化し、創造的な方法で探ります。可能であれば、それをセラピストとクライアントの関係に持ち込みます。この方法は、クライアントに説明してもらうよりも、クライアントに何が起きているのかをセラピストに直接的に理解させてくれます。体験を通して試みることは新しい経験をもたらし、これまで気づかなかったことや、細かく見ていなかった「いま、ここ」というものに気づかせてくれるのです。ゲシュタルト療法では、完全な気づきが起きた時、行き詰まりや未完了や分裂していたものが無くなります。つまり、統合が自然に起きるのです。これは、道教の教えでもあります。

2013年12月7日土曜日

ケース#13- - 血の夢

リズは何度も同じ夢を見ていました。私は彼女に、ゲシュタルト療法のスタイルで夢の中の出来事を現在形で言うように伝えました。これは「いま、ここ」を経験してもらうための方法です。

彼女は、こんな風にその夢を表しました。

私はお母さんの隣にいて電車に乗っています。席の向かいには黒い制服を着た男の子が二人いて、私をからかっています。私が驚くと二人は立ち去りました。すると、今度はそのうちの一人が私の隣にいて、性器から温かい血を放出しています。電車の床は温かい赤い血に染まっています。私は怖い。彼はそこに立っていて、血は出続けています。もう一人の男の子も同じことをしています。

駅に着くと沢山の医療器具を持った女性のお医者さんがいて、私はほっとしています。

彼女の夢はこのようなものでした。

私は「いま、ここ」で深く繋がってみて、どのように感じるか彼女に尋ねました。

「怖い、死んでしまいそうな気分、ひとりぼっち」

今度は彼女に、夢の中の男の子になってもらいました。すると、彼女はこう言いました。「私はエネルギーを失っています。床に崩れ落ちそうです。生きる力や温かさを持つことができません」

私は彼女に、彼女自身の身体の中に入るように言いました。これは、夢の中での経験と、現在の身体が経験していることを結びつけ「彼女が何者なのか」ということに近づけるためです。

彼女は胸のあたりに、ぽっかりと穴の開いたような感覚を覚えていました。それは、穴の開いたバケツのようなものでした。私は、彼女の中にどの位の温かさを感じているかを訪ねました。彼女は30%と答えました。

私は、彼女が身体で感じたことを人間関係と結びつけ、彼女に次のような意見を述べました。

私が経験した彼女の性格は、とても温かいものです。数字にすれば70%です。

私は彼女に、この差について尋ねて、試しに彼女が温かさを上げたり下げたりできるかということをやってみました。

まずは、目の前にある「温かさ」の問題そのものを扱います。

彼女が温かさを下げた時、彼女はバラバラになってしまいそうに感じ、腸が冷たく感じました。

彼女が言うには、いつもの生活でも小腸に針を刺したような痛みをたびたび感じるのだそうです。そして、彼女は冬の間、呼吸をするのが大変になるほど寒さに反応していました。

今度は、彼女に自分の小腸に入るように勧めました。

彼女は重くて、せき止められていて、湿気が多く、動いていない感覚だと言いました。

彼女は、栄養摂取が物理的にうまくいっていないと言いました。彼女は食物から十分な栄養を摂ることができず痩せていて、サプリメントの力を借りていました。また、人から触られると怖がります。彼女は努力しないとリラックスできません。セックスに対しても消極的です。彼女は人から触られることを望んでいましたが、それは子どもとして接してもらうことでした。

私は彼女に、温かさを掘り下げて感じてもらうため、夢の中の血に「なる」ように言いました。

彼女は言いました。私は温かく、元気いっぱいで、栄養に満ちています。男の子は私を拒絶しています。私は彼の身体から出ています。私は彼から必要とされていません。

私は、このことが彼女の人生の何と結びつくか尋ねました。つまり、この夢と彼女の実際の人生を結びつけるということです。

彼女は、人生を投げ出していることについて話しました。「もうたくさん、一度に嫌なことがたくさん起きるし、理解してもらえている感じがしない!自分の中にいる男性の声が、私に死んだほうがいいと語りかけている」

そこで、今度は彼女のお父さんについて聞いてみました。彼女とお父さんの間にはいつも距離がありました。彼女が子供の頃、彼女のお父さんは心を開かず、テレビを見ているか、内に閉じこもり、話をしてくれませんでした。お父さんの顔は厳しく固いものでした。彼女はお父さんに対して申し訳なく思い、お父さんの笑顔が見たい一心で、まるで男の子のような態度でお父さんを喜ばせようとしていました。

大人になってからの彼女は、お父さんを見るとお腹の調子が悪くなりました。お父さんは小さな男の子のような目で、まるで彼のお母さんを見るような目つきでリズのことを見ていました。

すべてのことが分かりました。子どもの彼女はお父さんの温かさを必要としていました。しかし、それとは逆に彼女はお父さんの心を温めていたのです。そして、お父さんの心は決して温まることはありませんでした。その役割は子どもにとって重荷となり、彼女の生命力を抜き取る結果となりました。いまの彼女には温かさを与えるほどの余裕はありません。彼女が得るものより与えるものの方が大きく、日常的に空っぽな感覚を持つようになったのです。こうすることで得ていたのは寛大さと母性でしたが、彼女の内面は痛みと空虚感でいっぱいでした。

このバラバラになった感情は、命を拒絶することを意味します。彼女はジレンマと行き詰まりに苦しんでいました。


この場において必要なのは、行き詰まりを解消することではなく、その行き詰まりに対して気づきをもたらすことです。ゲシュタルト療法では、すべての変化は気づきから始まります。

2013年12月5日木曜日

ケース#12 - 夢:双子、水、お母さん

夢や白昼夢やストーリーというのは、すべて似通っています。それらは、人そのものにアクセスさせてくれます。

 
ジェシーは、双子の男の子のストーリーを創りました。彼らはダムの岸で遊んでいます。主役は、仮にトニーという名前にしておきましょう。トニーは水が怖く、双子の兄弟のジャックは平気でした。ジャックは水に入り遊んでいて、トニーに来るように呼びながらからかっています。トニーは行きませんでした。二人のお母さんは亡くなっていて、彼らは継母によって育てられています。トニーはいつもポケットに小石を入れていて、それはお母さんを思い出すためのものでした。ジャックはトニーのポケットからその小石を取り出して、目の前の水に投げました。トニーは慌てて水に飛び込みました。彼は水に入っていても大丈夫だということに気づきました。そして、小石のことは忘れていました。


ジェシーの問題は、彼が恋人と結婚することを躊躇していることでした。彼は彼女を愛していましたが、今後長い期間に渡って関係を保つことに自信がなく、きっぱりとした決断に至っていませんでした。

 
私たちは、この夢について見てみることにしました。トニーに夢の中で登場したものになってもらいます。夢の中のトニーは、水が怖くて飛び込めません。夢の中のジャックは、積極的で穏やかで、はしゃいでいました。夢の中の亡くなったお母さんは、愛らしく若くてソフトな人でした。夢の中の水は深い存在でした。
 

お母さんを経験したことは、彼にとって大切なものとなりました。彼の実際のお母さんは冷たく遠い存在でした。このことが彼の一部となり、女性との関係を難しくする原因の一部になっていました。彼は女性と近づきすぎるのが怖く、冷たいものが二人の関係に入ってくるのが怖かったのです。


先ほど彼に夢のパーツになってもらったことで、明白になったことがあります。それは、彼がそれぞれのパーツを通し、深くて温かい女性性を経験したことです。それから、怖いもの知らずで温かいお母さんを受け入れられて、水に「投げ込む」ことができる「双子」の助けが必要だったことも分かりました。


そこで私は、彼と双子を演じてみようと提案しました。私が双子の兄弟になり、お母さんの思い出をポケットから取り出し水に投げ込むのです。彼が同意したので私は言いました。「お母さんの思い出の小石を取ったよ。水の中に投げるよ!」彼は水の中に入る姿を想像しました。すると、彼はリラックスできたのです。


これは彼にとって深い経験となりました。彼はしっかりした感覚を持ち、落ち着き、彼の中のより深い部分に到達することができました。その感覚は、未来の人間関係に心配が及ぶようなものではありません。彼が造ったストーリーにもあったように、いったん水の中に入ってしまえば、お母さんの記憶はこれ以上必要がありませんでした。
 

とはいえ、他のいくつかのことが必要だったことも分かりました。まず、彼が求めていた温かいお母さんという存在に気づかせてくれた双子が助けとなりました。そして、彼の自然な動きはそれに向かいました。最後に、彼は自分自身になることができました。ためらって飛び込めない自分と、未来に向かってどんどん先に進んでいく自分に分裂することはなくなりました。彼はその二つが一つになるのを感じました。そして、心の中に深く、温かく、女性性との繋がりがあるのが分かりました。それは、彼を躊躇せずに本来の人生と人間関係に飛び込む結果をもたらしました。

 


2013年12月1日日曜日

ケース#11 - お父さん、お母さん、ガールフレンド

ジョンは、ガールフレンドに心を許すことができませんでした。また、二人の関係そのものをどうしたら良いか確信が持てませんでした。

彼はこんな夢を見ました。ジョンと彼女がセックスをしている夢です。彼の後ろには彼のお父さんとお母さんがいました。彼のお父さんは若く、自信に満ちて、強い人です。

責任が取れるかどうか確信が持てなかったので、ジョンは彼女を妊娠させたくありませんでした。ジョンのお父さんが目の前に出てくると、ジョンは安堵しました。

こんな時、フロイト派ならば羽目を外すくらいはしゃいでいたでしょう。でも、私たちのゲシュタルト療法のワークでは違う方法をとります。ゲシュタルト療法が重んじるのは統合と責任です。ワークではすべての夢のパーツを確認することにしました。夢のパーツは私たちの中にある対立した二者や私たち自身にアクセスさせてくれます。

私はジョンに、それぞれの夢のパーツになるように言いました。

夢の中の彼自身は、恥ずかしがり屋で気持ちを表に出さない性格でした。

夢の中の彼女は、彼の愛情を欲しがっていて、重さのない感じでした。

夢の中のお父さんは、オープンで分かりやすい性格で健康的でした。

夢の中のお母さんは、本心を見せず影がある感じがしています。人目に付きたくなく、どこかに隠れていたい人でした。

私は、彼の夢の中の登場人物の性格に共通点があることに気がつきました。お父さんと彼女は二人とも自信があり、しっかりしています。彼自身とお母さんは両者とも自信がなく、しっかりしていなくて、目立たない性格です。

この状況はよく理解できました。彼が成長する時、お母さんは冷たい態度で接していました。

そこで、その冷たさについて追求してみることにしました。特に彼が彼女との関係で冷たくなってしまうのかを。そこで私たちは、彼が彼女に対して持っている不安や決心できないことが、どのようにして現れるのかを見てみることにしました。

彼が「何も無い感情」と呼んでいる感情のない一面を見ていきます。すると、それは彼の落ち込む気持ちと無意味さという経験と結びつきました。

二人の関係に彼自身の根本的な性格である冷たさを持ち込んだことが分かり、それに気づくことができたことは大きな希望を与えてくれました。外の世界の何か(つまり、彼女という存在)を必要とせずに彼自身を「温める」必要があるでしょう。

このワークは気づきの原則、ゲシュタルト療法の概念である責任、そして「あるがまま」が一体になることに基づいて行われました。彼は彼女との関係に冷たさを持ち込んでいました。彼の冷たさ自体は変わることはないでしょう。しかし、二人の関係において、彼が気づきや選択や理解を増すことは可能です。

2013年11月25日月曜日

ケース#10 - 恐れ、攻撃性、そして悦び

ブリジットは傷つきやすい女性です。以前、彼女には酷いアレルギーがあり、環境に対して肉体的に順応できず、極端に怖がりな性格でもありました。

もし誰かが彼女に対して怒っていたら、それは彼女にとって耐え難いものでした。パートナーと意見が合わない時でさえ、彼女は落ち込んでしまいました。

「私の身体は自分のもののように感じないわ。自分の身体である感覚がないし、境界線を感じることができないの」彼女はこう言いました。

彼女には心と身体が一体になっている感覚がありません。彼女の周囲の人々が満足していない時は、とくにそう感じました。

私は彼女に思い当たる原因があるか尋ねました。彼女は強情だったり、他の人に無神経だった時期があったことを話しました。

私も自分の強情さや無神経さを話しました。

彼女はキツイ目線を作って、何も言わなくても人を押しのけることができると言いました。

私はそうしてみるように言いました。すると彼女はこう言いました。「その目線は赤く熱く、人を殺すこともできるのよ。」私はその赤くて熱い目線をしばらく維持して、人々を焼いてしまうよう勧めました。すると彼女は人の顔を平手打ちすることを想像したことを教えてくれました。

彼女は若い頃、性的なことで利用されていました。そして、男性に対して激しい怒りを持っていました。

そこで私は、彼女を利用した男性を平手打ちしているところを想像するよう勧めました。

彼女はそれに従うと、力を感じることができました。私は身体の他の部分でどう感じるかを尋ねました。彼女は筋肉、皮膚や脚に力強さを感じていました。

先ほどまで彼女の身体は「拷問にあっているかのよう」に感じられていましたが、いまは心地良く感じられるのです。

次に、私たちは彼女の性に対する感覚を話しました。長年の間、彼女は性的なことに臆病で、怖くて、パートナーと一緒に居るとよく固まっていました。私は彼女にパートナーとのセックスに積極的である自分を想像するように言いました。その想像はとても良くできました。

私たちは彼女の他の部分で積極的になれるものを探してみました。すると、息子とキャッチボールをすることがそうであることが分かりました。

彼女は心の中に輝きを見つけました。

このセッションは、彼女が「弱く感じる」という話や「身体に対して驚いている」という話から始まりました。この無力な感覚は彼女にとって馴染み深いもので、大人になってからの人生の特徴でした。その結果、夫との愛情行為が邪魔され、活力のあるコミュニケーションが失われました。

「不当に扱われる」ことは「他人に影響を与える」ことの対極にあります。彼女の性格は静かですが、彼女の中にある押しの強い経験を見るけることにより、彼女の怒りにアクセスすることができました。

身体に現れた特徴として、彼女の目が挙げられます。それは怒りの経験を深めてくれる鍵となりました。攻撃性を視覚化することが必要でした。

他の誰かに怒りをぶつける「演技」をさせる必要はありません。むしろ、対極にあるものに踏み込み、それらが一人の人として統合されるということでした。

変化は劇的でした。彼女は傷つくこと、無力なこと、怖がること、あるいは解離することがなくなりました。彼女は攻撃性について「立場を逆転」したばかりでなく、パートナーとのセックスにおいても前向きになりました。それは長い間なかったものでした。

楽しみながら積極的になれることを発見したことは、セックスであれ、息子とのことであれ、彼女にとって新しいもので、違う視点を与えてくれました。

2013年11月24日日曜日

ケース#9 - 問題解決に必要なのは解決策ではない

ジェーンには思春期の息子がいました。やる気を出させるのに苦労しています。厳しくして学校で良い成績を収めさせるのか、彼自身に合ったレベルのことを見つける余裕を与えるのか迷っていました。ジェーンの息子はインターネットばかりしています。

ジェーンは私に、アドバイスや解決策や指導を求めてきました。

私には5人の子供を育て上げた経験があるので、喜んで育児についてアドバイスすることも当然ながら可能でした。彼女にとって役に立つ意見はたくさんあります。

しかしながら、彼女のお願いを私は断りました。そして、いまの状況についてどう感じるかに焦点を当てるよう投げかけました。彼女の話は、あちらこちらに飛んでいました。育児教室での良かった思い出、息子に対してやってみたけど上手くいかなかったこと、などなど。いまここで、私と話をして、彼女の気持ちを伝えてもらうことが困難でした。

私は子育てをしていた時の気持ちを話してみました。すると、彼女は心を少し開いて、不安で緊張していたことを話してくれました。しかし、そうしながらも、彼女は笑っていました。私はいま聴いた話といま見ている彼女の表情を伝えました。そして、それについて彼女自身がどう思うかを尋ねてみました。

いつも心配して浮かない表情をしているよりも、笑って話をするように努めている。ある意味、私が指摘したことは良い結果を招いたようです。

とはいえ、いまだ彼女は緊張感を見せていて、先ほどの指摘だけでは十分ではなかったようです。

そこで、彼女と私がいまここにいて話をしていることに集中することにしました。私はさらに彼女の経験について聞き出し、私が同じくらいの歳の子どもを育てている時の気持ちを伝えました。

少しずつ、彼女は感じるということを許可していきました。私は彼女にもっと深く呼吸するように言いました。

彼女が感情を失った時は、何もないところから解決策を見つけるよりも、そこに留まってみることを提案しました。二人で同じところに留まってみる。約一分間そうしてみました。

すると彼女はリラックスして、内側から温かいものを感じ始めました。私は彼女がお腹からあばらにかけて手を添えていることに気がつきました。私はそれに意識を持っていくよう促しました。普通ならば彼女はお腹で不安や緊張を感じます。いま彼女は同じ場所で温かさを感じています。私はその感覚を感じながら十分に呼吸するように勧めました。

今度はもっと深く感じています。そして彼女は泣き出しました。彼女は深い感情と共にこの場を感じています。悲しみと温かさがいまここにあります。

この瞬間、統合が起きました。

最後に、私自身が試して効果があった育児法を彼女に教えました。彼女は考えること抜きで、開放された心でそのメッセージを受け取ることができました。

ここで大切なのは、彼女が欲しがっていた他の人が与えていたような解決策を語ることではありませんでした。むしろ、私は彼女の忍耐力を一緒に経験して、いま私と居ることや、何かを見失ったという感覚を十分に味わうことを選びました。結果として、彼女は自分自身を十分に感じることに許可を与える事ができました。注視すべきは行動レベルではなく関係性だったのです。

2013年11月16日土曜日

ケース#8 - 男性不信

ガブリエラには4歳の息子がいて、その子の父親とは違うパートナーとの子どもを身ごもっていました。そのパートナーの名前はホセといい、彼女にとって恋人という関係です。二人がお付き合いを始めてから2年の時が経っていました。

ガブリエラは男性関係について矛盾を感じていました。ホセは彼女をサポートしていたし、赤ちゃんの誕生を心待ちにしていました。彼には、別の女性との間に9歳になる子どもがいますが、その子とは一緒に暮らしていません。

ガブリエラは男性に対して激しい怒りを感じていました。彼女のお父さんはあまり子どもと接することはなく、近づくことができず、そして、彼女を褒めることは滅多にありませんでした。そのため、ガブリエラは男性に対して優しさを望んでいて、距離が離れるような兆候には拒絶感を持っていました。

ホセはいつも彼女と一緒にいました。しかし、結婚することには躊躇していました。彼女はホセのそんな態度に、激しい怒りを感じていました。ガブリエラが感情的になれば、ホセは離れていくかもしれない。どちらにしても、彼女は自分の生き方を難しくして、一つの馴れ親しんだ結論に至ってしまいます。「強くあれ。頼れるのは自分だけ」

彼女がその選択をした時に起こる問題は、彼女が求めてやまないサポートや優しさから自分自身を遠ざけてしまうことです。

そこで、私は男性である私とワークをすることを勧めました。そして、男性のどのようなところを信用できないか、私に直接言ってみることを勧めました。例えば、このような内容のことです。「私はあなたが優しくしてくれるなんて思っていない。あなたは私に興味があってここにいるなんて思っていない。私はあなたを信用していない」などなど。

彼女は、私に直接そんなことを言うことを躊躇していました。私は「大丈夫」と伝え彼女を励ましました。

すると、彼女は思っていたことを私に直接言いました。私がどんな気分か尋ねると、少し感覚が麻痺していると彼女は言いました。そこで、私は彼女に深く呼吸して感情を開くよう伝えました。私は同じことをもう一度私に言うようにと伝えました。今度は怒りの感情を込めて。

彼女はそうしてみました。すると、涙が溢れ出てきました。私が彼女の話を聴くということだけでは、感情を引き出すことも反応を見ることもできなかったでしょう。私がしたことは、しっかりとそこに居て、彼女の心の深いところに触れたことです。「私はここであなたのことを大切に想っていましたよ」と伝えました。彼女は泣きじゃくりました。ガブリエラは怒りと共に男性を押しのけることに馴れすぎていて、彼女にとって新しい経験をもたらしてくれる人を見つけることができずにいました。

落ち着くにつれて彼女はこう言いました。今日のパワフルな経験を持ち帰り、自分のものにしたい。怒りを持っていることと彼女にとって何が必要かの両方を知ることで、子どもの頃から持っていた深い欲求は満たされることが可能になりました。

今回のワークは「治療」が必ずしも必要ではないことを意味しています。むしろ必要なものは、新しく深い経験であり、彼女が自分の中で統合することができるものです。結果として、それは彼女の新しい一部となりました。「知ること」や「強くなること」や「信頼すること」を身につけることで、「強くあれ。頼れるのは自分だけ」と、いつも感じなくても良くなるでしょう。

もちろん、そのことは「弱くなる」という力も育んでくれ、人間関係においてポジティブな循環を造ってくれます。そして、いままでと同じことが起きても、違う結果を迎えることでしょう。

ゲシュタルト療法のプロセスは、経験の背景に注目することを含みます。今回は新しい人間関係を経験するという試みを生み出しました。彼女の反応に直接働きかけることができるよう、私は自分自身を使いました。結果として「我-汝」という繋がりが確立されました。

癒しの人間関係に注目することで、人間関係の土台を造り、彼女の残りの人生に変化をもたらしました。

2013年11月13日水曜日

ケース#7 - 贈る人とビー玉


チャンチャンは50代の優しい女性です。事実、彼女は周りの人々の世話をよくしていました。しかし、結婚生活については幸せではないと明かしてくれました。充実感を覚えることができず、寂しいと感じていました。

チャンチャンには友達がいて、社会的な接点が多く、周囲からの評判も良いのですが、それでも幸せではなく寂しいと感じていました。

私はすぐに彼女と会話を始めました。そして、こう彼女に伝えました。私はあなたと会っていて心地良いです。あなたは人を許すことができる人という印象があります。あなたと会っていると、私は自分らしくいることができます。あなたは私を受け入れてくれるでしょう。彼女は同意して、それが彼女の人との接し方だと教えてくれました。

私は彼女に、安心した気持ちになることができたことを伝えました。彼女は頷き、そのことは彼女にとって大切なことだと教えてくれました。信用して、気持ちを傾けて、温かさを受け入れるという気分。私は、彼女を一方的に利用しているような気分になったことを伝えました。セラピストとして権威を示したり、プロであることが、私には難しくなっていました。なぜなら、彼女の寛容さの前では、自分自身が必要としていることを出したいという気持ちになっていたからです。

彼女は私が言ったことが分かったようで、あまり多くの言葉を使わず頷いてくれました。

私は、少しだけ言い表しようのない心地悪さを感じたことも付け加えました。彼女はいつも人に与えたいと願い、与えるものをたくさん持っていました。しかし、彼女が受け取ることはあるのだろうか?私から何かを受け取ることができるのだろうか?

この問いかけに、彼女は目に涙を浮かべました。それは、彼女にとって難しいことだったのです。

この答えに私は胸を打たれました。私たちは静けさの中で、しばらく感情で繋がり合いました。

それでもなお、チャンチャンは私から何も受け取れないままです。彼女は何かを与えなければいられないようです。これではバランスが取れていません。

そこで、ゲシュタルト療法の実験をしてみることにしました。私は、部屋の中に美しいガラスのビー玉を見つけたので、手にとってみました。そして、彼女に伝えました。これからビー玉を一つずつ差し上げます。それをまるでプレゼントを受け取るように貰ってください。

彼女はそれに同意し、さっそくやってみることにしました。私は彼女を見ながら、ちゃんと私からビー玉を受け取っているかを確認しながら、ゆっくりとワークをしました。彼女は弱さを見せながら震えていて、泣きながらビー玉を受け取っていきました。

何かを他の人から貰うということは、覚えている限り初めての経験だったとチェンチェンは言いました。彼女はいつも与える側の人で、人から注目してもらえる手段だったのです。与え続けることは、いつかは空っぽになってしまうことを意味しています。なぜなら、与え続けることは一方通行だからです。結果として人間関係もおかしくなってしまいます。ゆえに、友達がたくさんいて周囲からの評判が良かったとしても、孤独感を招いてしまいます。

このワークでは、私自身も経験するということを対話に取り入れてみました。彼女の残りの人生をどうするかを話すというよりも、私たち二人が「いま」を経験するということです。私も彼女同様に自分自身をワークに注ぎ込んだので、彼女の新しい経験が可能となりました。普通なら自動的に無意識のように行われる交流を、私は意識的に行いました。(決めつけることはせずに)私自身も経験することにより、彼女は受け入れることができるようになり、いままでとは違う何かに目を向けることができたのです。

2013年11月9日土曜日

ケース#6 - 規律と自由

トレバーはインド生まれの33歳。母子家庭で、お父さんの顔を見ずに育ちました。彼が通っていたのはオルタナティブスクールで、指導はあまりなく、生徒にとって多くの自由がある学校でした。

彼がオーストラリアに来たのは20代前半で、パーティで遊び、遊んだ以上に仕事に打ち込みました。

トレバーが成長期の頃、彼のお母さんはいつも働いていて、同じ家に住んでいたのにも関わらず、あまり会うことができませんでした。

彼のお母さんは5年前にオーストラリアに移住してきました。そして、家を購入してトレバーと一緒に暮らしています。失われた時間を取り戻すかのように、二人は一緒の時間を過ごすようになりました。

トレバーは頭がよくハンサムで自信に満ちていましたが、女性と付き合うことができませんでした。付き合うことができても、長期に渡る関係に発展させることができませんでした。

彼の悩みを解決するには、多くの問題と取り組まなければなりませんでした。その中でも大きなものは「サポートに対する自由」でした。

トレバーが育った環境は、学校でも家でも自由がありましたが、組織やサポートといったものはあまりありませんでした。

私は「サポートに対する自由」というもの、そのものをセッションで扱いました。私が彼の学校の先生を演じてみることを提案しました。まずは、多くの自由を与える先生役をしてみました。そして、トレバーがどう感じるかをチェックしました。それは彼にとって馴染みのある感覚です。そこには自由の喜びがある反面、何かを失っている感覚がありました。

次に、私は彼が経験したことのないような先生役をしてみました。それは、明確な規則を与えてなおかつ励ます先生役です。

トレバーは目に涙を浮かべていました。そして、彼の根底にあった不安感が少なくなりました。それと同時に、あまり馴染みのない、ある反抗心を感じました。

次に、私たちは役割を交代しました。私がトレバーの役を演じ、彼は明確な規則を与えてサポートする先生役をしてみることにしてみました。これは彼にとって嬉しい経験となり、純粋な気持ちになりました。

さて、このことを通していくつかの深いテーマが浮かび上がってきました。規則、サポート、励まし、不安感そして反抗心。私は彼に、これらのテーマを身体のどこで感じるか特定してみるよう伝えました。そして、それぞれを絵に描いてみるように促しました。

すべてのテーマを絵にするのは宿題にしました。

次の週、トレバーは大きな気づきと共に戻ってきました。組織では働くことを強いられること、パーティすることの自由、人間関係の改善に必要な行動を理解したいという気持ち。トレバーの過去において、これらを共存させてまとめ上げることができていなかったと言うのです。

それぞれの行動や事柄で意識が増すにつれ、バラバラだった彼の側面が一つに統合し始めることができました。

この一連のプロセスでは、ゲシュタルト療法の手法をいくつか試しています。自己の側面を統合すること、過去の経験を現在の経験として扱うこと、意識することを高める経験をすること。創造的なプロセスを踏むことで、意識することをさらに高めることが可能となります。また、安全な場所でセラピーを行うことで、これらの対話が生まれてきたのです。

2013年11月8日金曜日

ケース#5 - 怒れる発疹

リアンは、顔にできた発疹が無くならないという悩みを持って相談に来ました。

私は、彼女の生活、ストレスの度合い、健康、食生活、運動そして家族といった彼女の背景について尋ねてみました。

彼女は20代前半で、瞑想を行っています。ほかにも様々な健康法を試しましたが、発疹が消えることはありませんでした。

彼女は静かな性格の持ち主です。発疹があること以外では、彼女の存在に気づかない人が多いとリアンは言います。

そこで、私はリアンに発疹という存在になったことを想像してもらい、自分を表現してもらいました。

私は赤い
私は隠れることができない
私は傷つきやすい
私は消えてなんてあげない
私は人を押しのけたい
私は醜い
私は燃え上がっている

私は、彼女が発疹の役になって自分を表現した時、身体の中でどう感じたかを尋ねました。彼女からは、傷つきやすい、熱い、居心地が悪いといった感覚があったという言葉が聞こえてきました。

次に、私は発疹が口にした言葉を振り返ってみることにしました。例えば「赤い色について教えて」という問いかけをすると、赤い色が彼女の人生に隠されていることの意味を探り始めました。リアンは、赤い色が多く使われている中国の正月で起こった悲しい記憶を教えてくれました。リアンのお父さんはその時、家に帰って来ませんでした。

発疹が口にした他の言葉も、ストーリーを生み出してくれました。リアンが隠れていることについて話していると、お母さんから叩かれてどうしても隠れたかったことを語ってくれました。

私は、人を押しのけたいことについて聞いてみました。リアンは初めのうち何も説明できませんでした。なぜなら、彼女は優しい性格の持ち主で、いつも他の人に何かをしてあげることを望んでいるからです。私たちは、もう少し掘り下げてみることにしました。すると、こんなことがはっきりと見えてきました。彼女は人間関係において、いつも何かをしてあげることに慣れていて、それは人を近づけないようにするためにしていたのです。つまり、人から何かをしてもらうということは、人から近づかれることを意味しています。

ワークにおいて大きな勢いをもたらしたのは「人を押しのける」ということについてです。私はリアンに、私に向かって「あなたを押しのけたい」と言うように促しました。恥ずかしくて言い難かったこの一言は、大きな力を生みました。私はさらに、私の手を押して「押しのける」ことを身体で感じることを勧めました。リアンは最初、試すようにやっていましたが、だんだんと強くできるようになってきました。そして、すべてのエネルギーを手に込めることができました。

最後に、私は彼女に感じてもらいました。怒りというものを。リアンは怒りを身体で感じることをしてみました。

私は彼女に二回しか会っていませんが、後に彼女は、ほとんどの発疹が消えたと教えてくれました。そして、人生や人間関係において、以前よりも主張することができるようになったとも伝えてくれました。

2013年11月6日水曜日

ケース#4 - ワイルドなセックスと禁欲主義

トレーシーは結婚して12年になり、子どもがいる女性です。彼女は決して結婚に不満があるわけではありませんでした。夫との関係も極めて良好です。しかし、二人は滅多にセックスをしませんでした。

二人の関係が始まった頃、トレーシーは海外に1年間住んでいました。この間、彼女は浮気をしていて、それはとても情熱的な性的関係でした。トレーシーはその関係から抜け出し、祖国に戻って結婚しました。しかし、異国での出来事を乗り越えるには時間がかかり、自分の中の感情が統合されるまでに未だ至っていません。

これは、ゲシュタルト療法における「未完了の経験」と「双極性(相反するもの)」の典型的な例ですね。

トレーシーが彼女の問題について話している間、私は「いま何を感じていますか?」という問いかけをしました。これは、ゲシュタルト療法の典型的な質問です。

彼女はたくさんの複雑な感情を持っていました。身体の感覚に目を向けて、時間をかけて「悲しみ」や「激しい感覚」そして「性質上、実を結ぶことのない経験」に向き合ってみました。過去の出来事に戻る必要は、必ずしもありません。なぜなら、過去は現在であるからです。過去に起こった未完了の経験はいまここにあって、ワークを行うことができるのです。

ワークでは双極性についても扱いました。トレーシーの中では、ワイルドなセックスを求めている部分と幸せな結婚生活を求めている部分があります。トレーシーにとってのセックスは、保守的でリスクがない生活という境界線を飛び越えることだったのです。

そこで、私は彼女に両方の性格を演じてみるよう勧めました。

私はまた、それぞれの性格を演じたときの感情をチェックしてみました。一つの性格を演じている時に、別の性格を非難することもしました。例えば、「あなたは、ワイルド過ぎる」とか「あなたは、つまらな過ぎる」といったように。

いくつかの会話の後に、二つの性格はお互いに歩み寄り、中間の妥協案で合意しました。正しいサポートの下では、このようなことは自然に起こります。そして、魂の融合へと導かれるのです。フリッツ・パールズが言うようにね。

2013年11月4日月曜日

ケース#3 - 怒れるクライアント、ジョーン

ジョーンは50代半ばの裕福な女性です。二人の成人した娘がいて、過去に2回結婚していて、離婚しています。悠々自適にたくさんの旅行をしてきました。

ジョーンは幸せではありませんでした。仕事ではまったく自信がなく、長年に渡り勉強してきました。彼女はいつも人々に誤解されたり、友人に助けてもらっていないと感じています。さらに、いつも人にものをあげているのに、みんな彼女に興味を示さないと感じて憤慨し、どうしたら良いのか分からなくなってしまいました。

彼女とのセラピーは簡単ではありませんでした。彼女は解決策を求めているのに、提案と呼べるものはすべて拒絶しました。そもそも、彼女は共感と理解を求めていたのです。また、色々な意味で同情を求めていました。

何度かセラピーをしていると、私は「いかに彼女の身の回りに悪いことがおきているか」に同意し続けることを不快に感じるようになっていました。彼女は「彼女の役割」について聞く耳を持たず、私が「解決には行動が必要です」と提案すると、自己防衛に走り、サポートされていないと感じ、私に怒りをぶつけました。

セッションでは毎回、彼女の身の回りに起きていることがいかに悪いかとか、人々に悪く扱われてきたかを伝えてきました。私は以前と同じように、つらくて非生産的な身の上話を聞いて肯定し続けるのが苦痛になってきました。

だからと言って、私が話を遮ったりすると、彼女はイラついて私の批判を始めます。

難しいセラピーだ!

私はジョーンに伝えました。「あなたの日常に起きていることは、私たちの関係にも映し出されているね」と。彼女が話を聞いてもらえなかったり、サポートされていないと感じているのは、私との間でも時々起きていることでした。そして、私のジョーンに対する反応は、おそらく他の人が彼女にしているものと同類のものなのではないでしょうか。

こういったことに彼女が興味を持ち始めて、気持ちが開いていくこともありました。しかし、彼女は以前に何度も話したストーリーを喋り始めてしまいます。

私は一度、彼女の話を聴くことに時間を使うよりも、やってみたいワークがあると持ちかけたことがあります。すると彼女は気を悪くして、その後とても腹を立てました。彼女はセラピーを終わらせたいと言い出しました。

これでは、彼女との人間関係は「破れた布」のようなものです。セラピストの責任としては、彼女を肯定するというワークをして、この壊れた関係を修復しなければなりません。

そこで、私は彼女の話を中断したことを認め、このことがいかに彼女を混乱させ、怒りの感情を逆撫でしたかを伝えました。さらに、私がセラピーを前進させたいが為にイライラしていたことや、彼女のお決まりのストーリーから抜け出せずにセラピーが進まないと感じたことを認めました。また、セラピーに存在感を与えたり活性化させようとしてやったことは、彼女には効果がなかったことを認めました。

私の言葉でジョーンは落ち着きを取り戻しました。たぶんこれはジョーンにとって、人間関係で心が離れた時に、誰かが彼女のことを認めた初めての経験だったのでしょう。ある意味、経験から癒しの効果がもたらされ、結果として彼女の中のどこかを強くしてくれました。

さてさて、彼女のセラピーはこれからも、まだまだ続きます

2013年11月3日日曜日

ケース#2 - 自分の限界を知る

ある若い男性が、ガールフレンドとの関係で問題を抱えていました。彼は彼女との関係を続けることを強く望んでいました。一方、彼女は、彼を愛しているとは言ったものの、彼に対する興味を失いかけていて距離を置きたいようです。

彼は二人の関係において、彼自身があまり力を及ぼすことができず苛立っていました。それはテニスに例えれば、ボールが彼女側のコートにあるような感じです。彼女は「何をしたいのか」が明確ではなく、何も決められない様子です。彼は「彼女に対して望んでいること」が叶いそうにないので、どうしたら良いか分からなくなっていました。

そこで、彼が二人の関係において「何者」であるかということを探してみることにしました。ゲシュタルト療法では、解決法を見つけることは重要視せず、クライアントがさらに自分自身に気がつくということにフォーカスします。鍵となるのは様々な状況下での「あなたは何者か?」という質問です。

二人の関係において、彼にはあまり選択の余地がない状態ですが、まずは、彼自身の「境界線」を見つけることにします。自分自身を知るということは、境界線をはっきりさせることが大きく関係するからです。

私は彼に、次のような質問を投げかけてみました。

彼女との繋がりにおいて最低限十分な関わり方は、どのくらいですか?
我慢できなくなって別の女性に移るまで、どのくらい待てますか?
彼女との関係で期待する繋がりは、どのくらいですか?
長期の関係で望むものは何ですか?
現在の薄い関係が続く中で、どのように自分自身に限界とルールを設定して、また彼女にも限界とルールを設定してもらいますか?

限界を特定することで、彼は自分が二人の関係において「かまってちゃん」であることが分かりました。

ゲシュタルト療法では境界線を知ることで、本当は何がしたいかという「本心」を探り当てることができます。歪んでしまった境界線を理解するには、いくつかの方法があります。本当の境界線を見つけることで、クライアントさんがどのようにしてバランスを崩してしまったかを理解することができます。そして、クライアントさんが恋愛関係で自分らしさを出せるように、気づきをもたらすことができるのです。

2013年9月23日月曜日

ケース#1 - トレバーの「疑いの声」

トレバーにはお付き合いをしている女性がいました。彼は彼女にプロポーズしました。二人の関係はそれほど親密なものだったのですが、トレバーには彼女が「ふさわしい人」かどうか確信がありません。セラピーを進めていくと完全ではないにしても、彼が彼女にプロポーズしたことが良かったと思えるようになりました。二人の価値観は同じ方向を向いているし、何より二人は愛し合っていたので幸せな生活を送れることは容易に想像できました。それでも、彼女が「ふさわしい人」かどうか疑う気持ちは拭い去ることができません。「他にもっと良い人がいるのではないか」と思ってしまうのです。

トレバーは疑う気持ちに打ち勝とうと自分に言い聞かせました。彼女を疑うということは理性的ではないし、筋が通っていないし、何の助けにもならない。トレバーは彼女に対してポジティブに考えようとしました。しかし、疑う気持ちは見え隠れしてしまいます。

セラピーでは、いくつかのアプローチをしてみました。

まず、ゲシュタルトの場の理論に基づいて問題の背景を見てみました。彼のお父さんは生涯に渡り別の女性と関係を持っていました。トレバーはこの三角関係の中で育ちました。そのため、プロポーズをした時は「誰か他に良い人が現れて、自分の気持ちがそちらに向いてしまうのではないか?」と自分自身を疑っていたことに気がつきました。

私はエンプティチェアを用いて、トレバーをお父さんとその愛人と対話させてみることにしました。小さな子どもにとって二人の関係がどのように影響しているか、そして、その記憶が何度も甦ることを二人に伝え、トレバーに「悲しみ」と「怒り」の感情に気づいてもらいました。

この会話によって、トレバーの未解決な家族の問題を完了させることができました。そして、現在起こっていること、つまり、彼女を疑ってしまうことに気づくことによりセラピー効果が高められ、そのエネルギーを体内に取り込むことになりました。未解決な問題は身体に宿っていたのです。

さて、ワークではまだやらなければならないことが残っていました。結婚に必要な「信用や誓約」に対して「疑念や不確実性」という相反するものを何とかしなければなりません。

そこで、ゲシュタルトのワークをもう一つしてみることにしました。トレバーに彼の友人と話をしていることを想像してもらいます。トレバーには疑い深く友人に接してもらい、彼の頭の中にある「疑いの声」を外に出してみるというものです。

すると、興味深いことが起きました。トレバーからは、友人に対してもっと信頼すべきだったという正反対の言葉が出てきました。

私はトレバーが「信頼する声」を話していることに気づき、彼にそのことを教えました。トレバーには「別の声」が眠っていました。彼はそのことに、経験を通して気づきました。。

トレバーの中で「疑いの声」が聴こえた時は、同時に疑いの中に眠っていた「信頼する声」も聴くことができるでしょう。

トレバーの変化は、何をするべきかを教えることで起きたものではありません。新しい経験をするための場を造ることによって可能になったものです。ゲシュタルト療法が重点を置くのはこのような「経験」なのです。

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