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2016年2月23日火曜日

Case #66 - おもいっきり殻を破る

ピングは自分がどのような家庭で育ったかを話し始めた。彼女の祖父母は男の子がほしかったので、彼女や女兄弟のことはどうでもよいかのように扱われた。
また、彼女は両親からも愛を感じ取ることができなかった。彼女の母親は彼女を育てたが、愛情表現には乏しかった。また父親は彼女のことを抱きしめることはしなかった。
彼女が8歳のときにおきたある事件について話してくれた。母が彼女に着替えをさせていたのだが、ピングは違う色のワンピースを着たかった。どういう理由か彼女の声を聞いて父がおきてきたのだが、彼は急に怒り出し彼女をつかみ階段の下へ投げ落としたのだ。彼女の顔は血だらけだったが、ピングはそれでも学校へ行かないといけなかった。彼女の先生は心配はしたが、特になにもしなかった。彼女は家に帰りたくなかったので洞窟に隠れていた。そのことを誰かが母親に言い、母が迎えにきた。彼女のことを哀れに思い母は涙を流したが、父はそれでも悪気を示さなかった。
彼女は子供のころの話を語りながら、どんなにか自分の心の中に痛みがあるかを話し、涙した。私は彼女に対し優しく接していたが、彼女は自分の痛みでいっぱいで私が優しく接してあげていることにはあまり気づいていなかった。
私は彼女に私が男性であるという事実を改めて伝えた。しかし、彼女の話を聞いて、男性である私自身も心が痛いということも伝えた。ただ、彼女を傷つけたのは父親であり、本来は彼女を守るべき存在である「親」という存在に傷つけられたのだから、私が彼女のことを助けようとしていても、やはりどうしても父親とのイメージを重ねてしまうところがあるのではないか、と言った。
ピングはうなずき、また涙が頬を伝った。彼女は自立し、他の人が決めた人生ではなく、自分が決めた道を歩んでいきたい、と言った。
なので私は彼女の意見に賛成し、私ができることは可能な限りしてあげたいといった。
すると彼女は今、母親から結婚をせまれれていて、そのせいで仕事も結婚できるような環境にもっていこうとしていることを言った。
彼女の話を聞きながら、私は常に現在へと彼女の焦点を戻し、私が男性であり、なおかつ彼女を助けてあげようとしていることも確認させようとした。
彼女は何回か息を止めることがあったので、私は幾度か彼女の呼吸に注意するよう促した。こうして常にエネルギーが循環していないと、心の入れ替わりを自分のものにすることはできなかったからだ。
ピングは人に左右されるのではなく、自分で決めた人生を歩み、「家族の期待」という息詰る枠の中から抜け出したいといった。
そこで私は彼女にちょっとしたアクティビティを提案した。
私たちは二人ともたって、まわりに見えない円(囲い)を描いた。私は彼女の手をとり彼女の自主性を後押ししていることを改めて伝えた。家族関係の中で、このようなサポートは特に父親からのものを人は必要としているのだが、彼女の場合はそれがなく、また家族から多くの愛情を感じとるという経験もなかった。なので、この場合は私がどちらの役割も担っていた。
そしてしばらく時間はかかったが、彼女はやっとその「囲い」から抜け出すことができ、私も彼女につづいて囲いを出た。やっと殻を破ることができた彼女の両手をとり私はこう言った。「きみはやっと、自分が決めた基準で男性を選ぶことができるのだよ。だから、これからは男の人に思い切り愛してもらい大切にしてもらうことを選びとることをしてください。」
彼女が無意識に父のような男の人と一緒にならないように、私はあえてこのように言った。するとピングは「私はそのような人と一緒になりたいと思うし、男性にそのようなものを求めていくようにするわ。」と答えた。
彼女の言い方はなんとなく受身で自分が選ぶよりは相手にお願いをするという言い方だったので、私は彼女にもう一度言いかえてみるように言った。そして彼女に自分の境界線、最低限彼女が何を求めているのかをはっきりと言わせ、もう一度言い直すように促した。
このようにはっきりと言葉にすることにより、彼女は心に安堵を感じることができた。それはありふれたものであったが、彼女がずっと心の奥底で求めていたものだった。
ゲシュタルト法のセラピーにおいては、いつも「統合」に焦点をおいており、無意識に潜在するものを意識化し、さきほどのようなアクティビティを通し、一歩一歩人格の統合へと導いていく。

2016年2月15日月曜日

Case #65 - 屈折した親子のつながり

キャシーの母親はかなり情緒不安定だった。子供の頃、彼女の母親はいつも子供達を非難し、子供達に対して攻撃的で、何かあるごとにキャシーと兄弟達のせいにしていた。彼女は子供達の心を傷つけ、また子供達が母の愛を必要としている時にもそれを与えることができなかった。そのような情緒不安定でいつも怒りに満ちた母と暮らすのはとてもつらかった。しかし母は時には気前がよく、優しく、子供達の身の回りの必要を世話することもあった。
キャシーはこのような幼少期を過ごしたため、結婚生活の中でも色々な問題があった。彼女は時には愛情に満ちあふれていたが、時にはとても疑い深くなり、母親のように情緒不安定で相手を非難することもあった。彼女は自分が母親と同じようになってしまったことに恐れを感じ、それが夫を傷つけていることも知っていた。
しかし彼女はなかなかその悪循環から抜け出すことができなかった。そしてなにかのはずみで感情的になると、母親のように批判的で怒りに満ちた自分にどうしてももどってしまうのだ。しかし彼女はこのような自分が夫婦関係を破壊しているのが分かっていたので、私に助けを求めてきた。
ゲシュタルトでは問題から逃げるよりもその問題を突き止めるべく面と向かって対立していくのです。キャシーの「問題」は、自分がなりたくないものになりつつある、ということだった。問題の一部として「母親のような自分」に対して抵抗がある、というのも見られるが、彼女が自分の人格を変えることは求めていない。もし彼女を全く別の人格へ変えようとするのであれば、問題を面と向かって見つめるのではなく、ただそれに「適用して」いき、本当の解決にはならないからだ。
私がキャシーの母親の行動は嗜虐的であると指摘すると、キャシーは同意した。私は更に、キャシー自身の行動も同じような性質があるといった。これは少しきつい言い方だったが、キャシーは自分の行動がまわりにどのような影響を与えているか分かっていたので、私の言いたいことを理解してくれた。
なのでわたしは彼女に「わたしが今感じている痛みをあなたにも感じて欲しい」と言葉にするよう促した。こうすることで今までの嗜虐的な関係をあらわにすることができ、彼女自身に自分の気持ちを理解させようとした。キャシーの母親も「母と同じようになった」キャシーも、お互い非常な痛みをかかえており、二人の嗜虐的な行動は心の奥底にある痛みを表していた。
キャシーは少し躊躇したが、私が言った言葉を口にしてみた。それを言葉にすることで、自分は今まで「痛みの中に生きてきたのだ」ということを改めて感じ取った。
こうして自分自身の嗜虐性と向き合うことで、それにコントロールされるのではなく、キャシーが自分の行動をコントロールすることができるようになった。
私はもう少し難易度をあげ、今度はキャシーが感情的になっている時を過程し、そのシチュエーションの中で夫に語りかけているのを想像するように促した。彼女はさきほどと同じ言葉を繰り返した。私はキャシーに自分の感情にふりまわされず、しっかりと自分の感情を見つめ、今体の中にどのようなものを感じるかを考える様うながした。

彼女は吐き気と憎しみ、そして羞恥心と同時に快楽を感じると言った。
これらの言葉はまさに彼女が感情的になっている時の気持ちを言い表していた。こうして「嗜虐性」に真っ向から体当たりしその人の感情を引き出すことにより、ただ何が起きているかを話すのではなく、物事の中核へ到達することができる。自分の中で何が起きているか、その中心にキャシーをたたせることで、実存主義へと導くことができる。今度は彼女にゆっくりと呼吸をし、体の中心を見つけるよう促した。そして、彼女の母親が嗜虐的な笑みを浮かべているのを想像するように言った。彼女はまたもや吐き気と、緊張感と不安を感じた。そこで私は彼女に自分を強くしてくれるものを想像するように言うと、彼女はお釈迦様を思い浮かべた。お釈迦様を思い浮かべると彼女は落ち着きをとりもどした。
次に私はキャシーに母親を思い浮かべそこからでてくる感情を感じ取り、今度はお釈迦様を思い浮かべ、気持ちを落ち着ける、その一覧の動作を繰り返すよう促した。
そして心の中で思い浮かべている母親に対し「私は自分が嗜虐的である時だけあなたと心が繋がっている」と言うよう促した。
この言葉は過去と現在をひとつにする言葉で、今まで母との心のつながりを持つ事ができなかったキャシーだったが皮肉なことに嗜虐的になることにより、母とつながりを持つことができた。人はこのようにして、「自分がなりたくないもの」になってしまうのだ。
この一連の動作をすることにより、キャシーは嗜虐性のある自分の行動に責任を持ち、自分は母親とのつながりがあることを認め、同時に心の奥底にあった感情を感じ取り、自分を落ち着かせるものを思い浮かべることができ、また、母との親子関係と自分の今までの行動に新奇性を見出すことができた。
セッションの終わりには彼女はとても心が軽くなり、ある意味生き返ったようだった。私は、これからも自分が感情的になってしまう時にはいつでも今の一連の動作をするようすすめた。


2016年2月4日木曜日

Case #64 - 正しい判断か、それとも狂った判断か

ザックはいつも女性関係で問題があった。彼の現在の彼女のマルタは「たいへん」だと彼はいっていた。彼女はとてもアーティスティックで、楽しい性格で、社会性や政治に関してザックと同じ考えを持っていた。また、今まで付き合った女性とは違って、マルタは色々な面で彼を受け入れてくれていた。ザックは彼女と一緒にいて楽しかったが、彼女のことでどうしても受け入れられないこともあった。例えば、彼女はマリファナをすっていたが、彼はすわなかった。彼女はポルノを見るのが好きだったが、彼はそうではなかった。また彼女は複数の性的パートナーを求めていたが、彼はそうはしたくなかった。彼はマルタの「ワイルド」な一面が好きだったが、同時にそれは彼を苦しめた。
彼はマルタが感情的に不安定だと分かっていたが、彼なら彼女を助けることができると思った。彼はまたもや女性関係で「失敗」をし別れたくなかったので、彼はマルタと2年間ずっと付き合っていた。しかし彼女は精神的不安定な時が多く、たまに凄い剣幕で彼にどなったりした。
話を聞いていると、マルタと一緒にいるのはよくなさそうだったが、ザックは彼女を手放すことができなかった。彼は自分の愛が彼女を変えることができる、ものごとは良い方向へすすむ、そう考えていたのだ。
なので私は彼につきつけてみた。
それでは、これからも状況がよくならなかったら、どうするのか。
もし彼女が変わらなかったら?
もし彼女が変わりたくなかったら?
彼女が一夫一妻制に賛成しなかったら?
これらの質問は彼にとってとてもつらい質問だった。ザックは今の現実よりも、自分の願いや思いしか見ていなかったため、私はこのようにはっきりと聞いたのだ。それに彼は「もしこうだったら。。。?」という問いや、それらに関しての自分の気持ちを見ない様にしていたからだ。彼は夢を見ることにより、自分の現実から離れてしまっていた。
ゲシュタルト法は「現在」というものにフォーカスしていて、特に今現在起こっていることに注目を向けるのだ。ザックのように「現在」から目を背けようとしている人が沢山いる中で、ゲシュタルト法はそのような人々が本当の意味で「今を生きる」ことができるよう助けを差し伸べているのだ。
このプロセスを通して、ザックは自分がこのような生活をずっとしたくない、ということをやっと理解し、このような意味のない「彼女のお世話」は続けたくないと思い、もし彼女が変わらないのなら、この関係を手放さないといけないということをやっと理解することができた。
私は彼に自分の考えをうえつけないよう、注意した。 実存主義というのは、自分が人生の中で判断したことは自分自身の決断であり、それらの結果が予想していたものであると、予想していたものと違おうと、責任を持って生きて行くというものだ。私のここでの役割はクライアントに自分の持っている選択肢を見せ、それらを選び取ることによりどのような結果が生み出されるかを理解させ、一歩すすみ自分の人生を本当の意味で生きる、ということだった。大事なのは、他の人や状況によってではなく、自分自身で人生の決断をしていくということだ。
もし彼がマルタと一緒にいることを選びとるなら、彼女を変えようとして自分の思いを押し付けるのではなく、彼女をありのままで受け止めないといけない。彼が自分の「計画」を手放すのは難しかったが、それを手放しマルタを受け止めた時、彼に残っているものはごくわずかなものであるということを彼は知るだろう。
しかし、どんなにこれが正論だったとしても、このような決断をするのは簡単ではなかった。
なので、私はあるロールプレイをしてもらうことにした。それは、彼のマルタとの関係を手放したい自分と、そのまま彼女とずっといたいという自分との対話だった。
それをすることにより、あることが明確になった。それは、彼のしがみついている部分は彼の子供っぽく、感情的な部分であるということだった。彼の「手放したい」自分はもっと理論的に考えて、物事を切り離すことのできる一部だった。彼がどんなに「理論的」で「正しい」決断をしたからといって、状況が解決されるわけではなかった。彼の子供である部分、いわゆる感情的な部分も、一緒に相談させてあげないといけなかった。なので、この対話はただ言葉による対話だけでなく、2つの自分---「理論的」である自分と「感情的な」自分---の間のそれぞれの気持ちを汲み取る必要があったので、しばらく時間がかかった。
だが、だんだんとお互いが融合し、なんとか同意する結論を出す事ができた。それは「子供らしい自分」もきちんと受け入れられた結論であった。こうしてセッションは終わったが、私はこれで終わりではない事は分かっていた。この問題は、また今後のセラピーを通して取り扱っていくべきものであったからだ。
フリッツ・パールスはこのような2つの人格を支配者(topdog) と負け犬(underdog)とよび、私たちがどんなに冷静に、理論的に考えているつもりでも、その表面を支配しているもう一つの自分(topdog)がいる、と言っている。今回のケースでは理論的で正しいことを言うだけでは十分ではなかった。そのため、私たちはtopdogの表面で見える人格ばかり取り扱わない様、気をつけなければいけない。


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