
私たちは共通のものを見つけることができ、それぞれの妻との関係について話した。彼はまたティーネージャーの息子ともしっかりとした関係を持っていることを話した。私は更に彼との共通点を探るため、色々と質問をし、それぞれの応えに対し自分の経験や思いも話した。
ナヴィンは自分が妻との関係のなかで、どちらかと言うと受け身であるということを話した。彼はほとんどの場合彼女の言うことにしたがっていて、例えば彼女が行きたいレストランへ一緒に行く、というのが定番だった。しかし、ある時彼がいつもの場所に飽きたため違うレストランを選んだのだが、彼女が文句を言わずに彼の意見に賛成してくれたことにナヴィンはとても驚いたことを話してくれた。
彼の話を聞き、ナヴィン達の夫婦関係はナヴィンのイージーゴーイング(寛大)な性格に基づいているのだということが分かった。私は自分もこのようであるということを話し、彼に自分の経験談も語った。
そこで私はあるアクティビティをすることにした。ナヴィンは3つの願いが与えられていて、3つめの願いでは「あともう3個願いをください」とねだらないといけない、というものだった。そして彼にある一日を想像し、朝からはじめ、自分が心から願っていることを、妻にお願いするよう考えてみるように促した。
彼は自分が願っているものをなかなか思いつくことができなかったので、私たちは朝からはじめ少しずつ色々と考えていき、彼にいくつかの例なども与えた。彼は徐々に自分の願いを語ることができ、一日の中で起こる様々な出来事の中で妻に何をお願いするかを思いつくことができた。
このアクティビティはとても簡単ではあったが、彼にとっては大きな変化を伴うものであった。ゲシュタルト法ではいつも物事の核心を探っていくことを重要視しており、人間関係の中でのコミュニケーションを豊かにしていくことを求めている。
このアクティビティでナヴィンはしっかりと自己主張をし、自分の想いをもっとはっきり伝え、彼自身がどのような人間であり、かれが何を求めているかを相手に伝えるチャンスが与えられた。人々は今の人間関係の中身を任せ物事のあるままに流れて行くこともできるが、私たちは人々が人間関係の中で深みを見出すことを求めている。この「深み」を生み出すためには私たちは自分がどのように感じ、何を求めており、自分が誰であるかという、「裸の自分」を相手に見せないといけない。こうすることにより、私たちは相手にほんとうの自分を知ってもらい、相手との親密性を深めることができる。
一般的に女性のほうが「物事を進めていく」要望があり、自分の願いを知ってもらい、自分の想いを聞いてもらい、相手に応えてもらうことを願っているが、同時に男性にしっかりとリードをして欲しい、というバランスを求めている。今回のアクティビティでは、ナヴィンは安全な環境で、このような「リード」をしていくことができ、自分の想いをはっきりと言葉に出すことができた。
今回のアクティビティはただの「練習」だが、このようなシミュレーションによるリスクは必ずある。それは新たな自分を生み出し今まで埋まっていた自己や想いを引き出すからである。ほとんどの場合、このような過程の中では「押さえつけられていた憤り」もしくは「感動」を経験したりあるいは両方の感情を経験することもある。これらのアクティビティを行って行く中で重要なのはただアクティビティをするだけでなく、必ずクライアントの感情の変化にも細心の注意をはらうことだ。
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