
しかしこのアクティビティが終わったあと、ミランダは怒りだしてしまった。彼女は夫のジェレミーに対してとても腹を立てており、彼との関係に行き場を失っていた。というのは、彼女にとって大切な話があるとジェレミーはすぐ冗談を言い、笑って真剣に話を受け止めてくれないからだ。彼女は彼のこのような性格に大変怒りを感じており、ジェレミーが彼女のことを全く見てくれてないと感じていた。
そこでわたしは、ジェレミーとミランダをお互い向き合わせ、ミランダに夫に「わたしは今、あなたのことが嫌いよ」と言うようにと言った。
このような表現はゲシュタルト法で用いられる方法で、相手との心のつながりをつくることができる表現だ。このように言うことは相手のせいにしていないし、自分の気持ちを素直に表情しているし、とても淡々として分かりやすい。
彼女がわたしが言った通りに夫に言うと、夫は爆笑しはじめた。
このように笑うことは楽しみを表すこともあるが、今回ミランダが自分の大切な気持ちをはっきりと伝えようとしている時に笑うというのは、相手をシャットアウトし蔑むことになり、このような行動をゲシュタルトでは「逸脱」と呼んでいる。
彼の笑いは妻の怒りを正直に受け止めることができない自分を隠す道具となっており、彼女と向き合って怒りを受け止めることができない自分を隠していた。
なのでわたしは彼が真剣に妻の話を聞く事ができるように、お腹から呼吸をし、あごをリラックスするように言い、彼が妻の怒りに圧倒されてそれを受け止めるのがいかに難しいことであろうかということを言った。
彼はなかなかまじめになることができなく、ジェレミーが笑いを発する度にミランダの怒りは激しくなり、「この人はいつも真剣な話をしようとするとこうなのよ!」と怒った。
わたしの助けによりやっとジェレミーはなんとか真剣になりミランダの話に耳を傾けはじめることができたので、わたしはミランダに気がすむまで何度も夫にはっきりと先ほどの「今、わたしはあなたのことが嫌いだわ」という言葉を繰り返すように促した。
彼女は激しい感情の中で何度も何度もこの言葉を繰り返した。彼女がやっと全てはきだすと、落ち着きを取り戻した。そして自分があまりにも正直に怒りを表すと、ジェレミーが彼女のもとを去ってしまうのではと恐れていることを打ち明けてくれた。
わたしはジェレミーにそんなことはないと妻に言ってあげるように促した。彼もまた妻が自分のもとを去ってしまうのではと恐れていることを話はじめたが、まだミランダは自分の言いたい事を全部言い終えていなく、それを言うまで夫の言い分を受け止める余裕はなかったので、わたしは言いかけたジェレミーを止めた。
ミランダは話を終え落ち着きを取り戻し、自分がどれほど夫を愛しているかを彼に話した。ジェレミーもまた自分の気持ちを妻に正直に話すことができ、夫婦の間には目に見えてわかる強く、深い絆が生まれた。
ゲシュタルト法では人々が自分の心を正直に、かつはっきりと相手に伝えることができるようクライアントをサポートするのが目的である。これらの目的を達成することにより他のことも自然と解決へと導かれる。またこれらのことを達成するためには感情を探り出す助け、実際的な言動のサポート、そして抑制を必要としている。
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