
私たちは、ゲシュタルト法を用いて彼女の夢の意味を探っていきました。
私はそれが現在起こっているかのように、それを再び語るよう彼女を促しました。そうすることにより、「夢」を無意識から意識のあるところに持って行こうとしたのです。
彼女が話している最中、わたしはたまに彼女をとめて、今どのように感じているか具体的に語ってもらうようお願いしましたー例えば彼女が殺した男について、など。
そして、私は彼女に自分が殺した男になりきり、彼であるかのように話すように、と言いました。
「男」(になりきったトレイシー)は、トレイシーは冷たく、計算高く、タフだと言った。
彼女が「自分」に戻ったとき、彼女は、笑い、身をよじり、「男」に言われたことを受け入れたくないようであった。
次は心理学者との対面に関して話す番だった。夢の中で、彼女はに真実がばれないようがんばっていたのだ。
今度は彼女は、心理学者を演じた。「彼」は、トレイシーがとても強くパワフルな人間で、彼女からは何も探りだすことができない、と感じていた。
わたしはまた彼女に焦点を戻し、彼女が自分で出した「パワフルで、 冷淡で、計算高く、タフである」という言葉を繰り返した。それに対し、彼女は自分がサディスティックな感じでもあると思う、と付け加えた。なのでこれらの言葉をまとめてみた。
わたしはグループから二人の女性にに出て来てもらい、それらの資質を具現化するようお願いした。それから私は女性たちと同じことをトレイシーにするようお願いした。彼女はそれをすることに戸惑い、つい笑ってごまかそうとしてしまったが、私は、この「実験」を続けて、その強力な女性としての自分自身を感じるように彼女を励ました。わたしは一人には死体の役をお願いし、他の誰かには、あたかも自分は誰も傷つけたことがないような、無罪を主張している彼女の一部を演じるようにお願いした。
そして、私は「人を殺すことができる」ようなするどい目つきでグループの男性何人かを見るよう彼女に指示した。彼女は自分の力を感じたが、やはり笑ってしまった。しかし、彼女は笑っているとき、自分が悪女のように笑っているのを感じると言った。笑い、というのはほとんどの場合、しっかり物事を体験しないで逃れようとする責任回避のひとつでもあるのです。
私は彼女にお腹から息をするように言った。それは、彼女が上のほうを向いて高いところから呼吸をしているように見えたからだ。
彼女が言われた通りすると、自分の胃の中に石があるかのように感じると言った。そして、その直後に心臓の血管がつまっている感じがする、と。私は彼女に呼吸を続ける様に促し、井の中の石を感じ取ると同時に、彼女の内なるパワーを感じるよう促した。
彼女は、これは、両親から拒否された経験と、自分が今まで性欲を抑制していたことが理由だと述べた。彼女は手に短剣を持っているように感じ、それをつねに手の中でまわしている感覚を持っていたのである。彼女はなんとなく、視線ひとつで男を石に変えてしまうメデューサのように自分を思っていた。彼女はそのことを考えるとき、自分の中で楽しい性的な感情がわいてくることを述べた。
彼女は今までとは違う表情をしており、真剣になっていた。先ほどは全く違う人かのようにはるかに深刻な表情で、もはや笑いや「無邪気な」自分は見せていなかった。
やっと彼女は自分の中にあるパワーを認めはじめることができたのです。自分の内なるパワーを理解することにより、彼女は自分の中にある全てのもの、それはキラー(殺し屋)である自分、セクシーな自分、そして女性としてのパワーを持つ自分、を体験することができたのです。
ゲシュタルト法では、私たちが自分で自覚していない部分こそが危険性を持つ、と考えられている。クライアントが自分の中にある未知なるものを意識することにより、全ての要素を取り入れて、物事を考えることができ、ある意味「自分の行動に責任をとることができる」のである。これこそがゲシュタルトの求めている存在性なのだ。それは、クライアントに対し解決策や道徳的な知恵を与えるのではなく、人々が自分のうちなる存在全てを認めることへと導き、そのようにしてそれぞれ自分の願いを正直に出すことができるように、セラピストは導くのだ。
今回のセッションではわたしはエネルギーがどう動いているかに集中し、トレイシーが目を背けていた自分(自分の攻撃性やパワーなど)をしっかりと見つめるよう促した。彼女はこのような自分の一面を認める事がなかなかできなかったが、今回のセッションを通し、彼女は今まで納得のいかないまま受け入れていたものをやっと解放することができた。