
私は彼女の使った「繭」というイメージをセラピーに用いることにした。セラピーでは必ずしも、クライアントのバックグラウンドを全部把握していなくても、クライアントが話している比喩を用いて、それを土台に話をすすめていくこともできる。この場合、明らかに「繭」という比喩では変化を望んでいるが、変化を恐れている、というのを見ることができた。ゲシュタルト法では、これを「安全脱出法」と呼んでいる。それは、クライアントが望んでいる自分へ変わって行くことを安全な環境で促すものだからだ。
そこで、私はグループの中から6人選び、「繭」として彼女を囲む様お願いした。ニコールはすぐに、前よりも激しく泣き出し、地面にしゃがみこんでしまった。私は周りの人々に彼女を囲んで座る様、お願いした。私は彼女に、自分の世界に引っ込んでしまわずに、まわりの人々とアイコンタクトをとるよう伝えた。そうしないと、自分の世界へ入ってしまい、外の世界にいる人々と人間関係を持つ事をしなくなってしまうからだ。そうなった場合、その人の感情はただ自分の心の中でぐるぐるとまわり、実際には進歩しないからだ。
彼女が言われた通りにすると、一人の女性を見て「あなたのことは嫌いよ」と言った。しかし、これはその女性に向けて言われたわけではなくて、その女性がニコールの母親を思い出させるような人だったからだ。なので、私はニコールにその女性に話し、言いたいことを全部言うよう伝えた。
「どうして私を捨てたの」と彼女は聞いた。ゲシュタルト法では「なぜ」の質問系はあまりに役に立たないと見なされているので、私はそれを質問ではない文章に変えて言う様促した。
すると、彼女の心の痛みが引き出されてきて、子供の頃、母親に捨てられたことを語り始めた。はじめに供述したように、私は細かいことを色々聞かなくても、彼女の心を解放することができた。彼女はその時、変化のプロセスを歩んでおり、それで十分彼女は解放されることが出来た。
私は、彼女がこの心の変化に直面し、人々とアイコンタクトを取り続け、深呼吸をするために彼女を支えていた。彼女も、彼女の「母親」役の女性も、とても感情的になっていた。
数人の人で作られたサポートサークルは、彼女が自分の心に押しつぶされている状態にあって、彼女を優しく包み込んでくれる存在として、大切だった。
とうとう彼女は疲れて、横になりたいと言った。
私はニコールを「母親」役の女性の膝の上で寝かせ、しばらく休ませた。
ニコールが10分後に起きると、彼女は生き返った感じがし、以前はむなしさと痛みがあった自分の心に繋がりを感じることができ、暖かさも感じることができた。
0 件のコメント:
コメントを投稿