
また彼女は内向的で、あまり写真を撮られたり注目を浴びたりすることを好まないということから、私は人前にさらされること(恥辱)に対し何か心の問題を抱えていることを察し、セラピーを行う上でいつも以上に注意し、彼女の心の動きに対し敏感にならないといけないことを判断した。
私はブレンダに、あなたが話したい以上には話す必要は無いのだよ、ということをはじめに伝えた。
わたしたちはグループの中にいたので、私は彼女にグループの中にいることに対しどう思うかを聞いた。彼女は、グループの人達が彼女を見てはいるが、彼女は皆に視られている感じがしない、と答えた。その答えに対し、わたしは「それは皆がまだあなたの事をあまり知らないからですか?それともあなたが皆から隠れているからですか?」と聞くと、彼女は「どっちも」と答えた。
このようなことを聞く事は、彼女の人間関係を分析することに役立った。なので、私は更に問いただした。「私があなたを視ている時もあなたは私から隠れているのですか?」彼女は「はい」と答えた。
彼女は人に見て欲しい反面、人には見られたく無いという心の行き詰まりの状態にあった。そのため、私は彼女との対話を注意深くすすめないと、自分自身がこれを直そうとするあまりおかしくなってしまうことを懸念した。
こうして私は彼女の心を無理矢理探ろうとするのでは無く、彼女が既に自分自身について言っていたことを反芻した。例えば、ブレンダが自分自身についてシェアしてくれたことや、私が彼女に関して見えているものを---例えば彼女の着ている服の色など---そのまま彼女に伝えた。
こうする事によりわたしたちの間に関係性がうまれた。私は彼女に色々と聞くのではなく、私は彼女が心を開いてくれる時、彼女と共にいて、彼女に耳を傾けている事を行動で表した。羞恥心がある人(セルフエスティームが低い人)の場合、まわりがその人のことを色々と引き出そうとするよりも、クライアント自身が自分のことをシェアする機会を与えることが大切だと思う。
彼女の目はそれでも遠くを見ている感じだったので、私は彼女にそのことを伝えた。彼女が遠くを見始めたということは、彼女がこのような人との触れ合いをまだ受け止めるまでに行っていないことを明らかにした。私が彼女に何を見ているのかと聞くと、彼女は「沢山の世界が混じっていて、たくさんの過去の人生がある場所」と言った。
彼女のこのような状態を見て私は彼女が分離を経験していることを察し、彼女が危ない状況にあることを察した。そこで、私は彼女が見ている遠い場所に居続けていいということと、私自身やグループの皆もここで座って皆彼女と同じ場所に行く事ができる、ということを話した。
私の言葉は彼女を更に別の世界へ行く事を励まし、彼女はよりいっそう「遠い世界」に浸り始めた。このような心理学方法はゲシュタルト心理で変化のパラドックスと呼ばれ、クライアントをあるがままにさせ、既にあるものに自分を近づける方法である。
彼女は「今は何も感じないわ。」と言った。
別の言葉で彼女の今の状態を表すと、彼女は完全に分離したのだ。分離した状態では、特定の方法でしかクライアントと会話することができない。
私は彼女に、あなたがより安全を感じるためには私には何ができますか、と聞いた。その問いに彼女は「誰にも見られたくないの」と答えた。
私は彼女に言われたことに従った。しかし同時に悲しみも感じる、ということをブレンダに伝えた。それは、私は彼女を全く見ていないく、見ようともしない努力をしないといけないため、彼女は完全に私から隠れている状態になるからだ。私は彼女の暖かさを感じることは出来たが、彼女へ手を差し伸べる方法を見つけることができないと伝えた。
するとブレンダは私をみつめ、「私は人の助けを借りるのは好きじゃないのよ」と言った。
ブレンダのこの言動は、私に次にどうするべきかのヒントを与えてくれた。
私はある実験を提案した。それは、彼女が両手を挙げて、片手はひとを押し出すしぐさをし、もう片方は人の助けを借りられる状態にし、手を開いておくということだった。こうすることにより、ブレンダは私の支えを受け入れることができた。私がゆっくり手を伸ばすと彼女は空いているほうの手で私の手を握ってくれた。
彼女は更に「私には感覚をもたらせない見えない力が働いている」と言った。私はグループの一人にわたしたちの前に立ってその「見えない力」を表してもらうようお願いした。彼女はその人の名前は匿名であることを希望した。
「見えない力」を表している人に対し、私は彼女にその力に対しある宣言をするように言った。彼女は「見えない力」に対し「私はあなたが私に役立つ時はあなたに耳を傾けるけど、それ以外の時は私は人の支えを感じることができるようにするわ」と言った。
この宣言はブレンダにとって識別性と統合性を表した。
彼女がこう宣言することにより、物事に対する感覚が戻り、人からの支えを受けることができ、人間関係を築くことができ、自分の存在感を感じ、人生で物事を選択する権利があるということを感じはじめることが出来た。
ブレンダとのセラピーはとっても時間がかかり、常に彼女の境界線に注意し、あまり深入りしないように注意し、彼女が感じていることさえもあまり聞かない様注意する、とても大変なものだったが私は絶対にあきらめなかった。通常、ブレンダのようにあまり心を開かない人に対し、人々はあまり深入りをしないようにしたり、表面だけでの関係を持とうとしたり、たまにはその人に過剰に興味を示したり優しくしたりすることによって圧倒させてしまいます。ブレンダのような人々に必要なのは暖かさはあるが、圧倒するほどのものでは無く、興味を持ってくれるが本人を圧倒させるほどのものでは無い、中立した関係です。これは順応性と呼ばれ、人間関係の中では重要なスキルの一つにはいります。
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