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2016年1月21日木曜日

Case #62 - メデゥーサ

トレイシーはある夢を見ました。彼女はある男を殺して、彼を戸棚の中に隠したのです。そして、彼女は周りにばれないように証拠を隠滅しようとしました。彼女は心の奥底で自分の母親に責任を押し付けようと思っていました。彼女が廊下を歩いると探偵であり、心理学者でもある男性に会いました。歩いて行く時に彼らの手が触れ合いました。彼女は、夢の中で彼にも自分がしたことがばれないようどうしたらいいかを考えていました。バックグラウンドではサスペンスでよく使われる音楽が流れていました。
私たちは、ゲシュタルト法を用いて彼女の夢の意味を探っていきました。
私はそれが現在起こっているかのように、それを再び語るよう彼女を促しました。そうすることにより、「夢」を無意識から意識のあるところに持って行こうとしたのです。
彼女が話している最中、わたしはたまに彼女をとめて、今どのように感じているか具体的に語ってもらうようお願いしましたー例えば彼女が殺した男について、など。
そして、私は彼女に自分が殺した男になりきり、彼であるかのように話すように、と言いました。
「男」(になりきったトレイシー)は、トレイシーは冷たく、計算高く、タフだと言った。
彼女が「自分」に戻ったとき、彼女は、笑い、身をよじり、「男」に言われたことを受け入れたくないようであった。
次は心理学者との対面に関して話す番だった。夢の中で、彼女はに真実がばれないようがんばっていたのだ。
今度は彼女は、心理学者を演じた。「彼」は、トレイシーがとても強くパワフルな人間で、彼女からは何も探りだすことができない、と感じていた。
わたしはまた彼女に焦点を戻し、彼女が自分で出した「パワフルで、 冷淡で、計算高く、タフである」という言葉を繰り返した。それに対し、彼女は自分がサディスティックな感じでもあると思う、と付け加えた。なのでこれらの言葉をまとめてみた。
わたしはグループから二人の女性にに出て来てもらい、それらの資質を具現化するようお願いした。それから私は女性たちと同じことをトレイシーにするようお願いした。彼女はそれをすることに戸惑い、つい笑ってごまかそうとしてしまったが、私は、この「実験」を続けて、その強力な女性としての自分自身を感じるように彼女を励ました。わたしは一人には死体の役をお願いし、他の誰かには、あたかも自分は誰も傷つけたことがないような、無罪を主張している彼女の一部を演じるようにお願いした。
そして、私は「人を殺すことができる」ようなするどい目つきでグループの男性何人かを見るよう彼女に指示した。彼女は自分の力を感じたが、やはり笑ってしまった。しかし、彼女は笑っているとき、自分が悪女のように笑っているのを感じると言った。笑い、というのはほとんどの場合、しっかり物事を体験しないで逃れようとする責任回避のひとつでもあるのです。
私は彼女にお腹から息をするように言った。それは、彼女が上のほうを向いて高いところから呼吸をしているように見えたからだ。
彼女が言われた通りすると、自分の胃の中に石があるかのように感じると言った。そして、その直後に心臓の血管がつまっている感じがする、と。私は彼女に呼吸を続ける様に促し、井の中の石を感じ取ると同時に、彼女の内なるパワーを感じるよう促した。
彼女は、これは、両親から拒否された経験と、自分が今まで性欲を抑制していたことが理由だと述べた。彼女は手に短剣を持っているように感じ、それをつねに手の中でまわしている感覚を持っていたのである。彼女はなんとなく、視線ひとつで男を石に変えてしまうメデューサのように自分を思っていた。彼女はそのことを考えるとき、自分の中で楽しい性的な感情がわいてくることを述べた。
彼女は今までとは違う表情をしており、真剣になっていた。先ほどは全く違う人かのようにはるかに深刻な表情で、もはや笑いや「無邪気な」自分は見せていなかった。
やっと彼女は自分の中にあるパワーを認めはじめることができたのです。自分の内なるパワーを理解することにより、彼女は自分の中にある全てのもの、それはキラー(殺し屋)である自分、セクシーな自分、そして女性としてのパワーを持つ自分、を体験することができたのです。
ゲシュタルト法では、私たちが自分で自覚していない部分こそが危険性を持つ、と考えられている。クライアントが自分の中にある未知なるものを意識することにより、全ての要素を取り入れて、物事を考えることができ、ある意味「自分の行動に責任をとることができる」のである。これこそがゲシュタルトの求めている存在性なのだ。それは、クライアントに対し解決策や道徳的な知恵を与えるのではなく、人々が自分のうちなる存在全てを認めることへと導き、そのようにしてそれぞれ自分の願いを正直に出すことができるように、セラピストは導くのだ。
今回のセッションではわたしはエネルギーがどう動いているかに集中し、トレイシーが目を背けていた自分(自分の攻撃性やパワーなど)をしっかりと見つめるよう促した。彼女はこのような自分の一面を認める事がなかなかできなかったが、今回のセッションを通し、彼女は今まで納得のいかないまま受け入れていたものをやっと解放することができた。


2016年1月13日水曜日

Case #61 - 自分の性的感情を認める


リンダは33歳で独身だった。彼女は男友達はたくさんいたが、みんな「ただの友達」だった。そしてなかなか「お友達」からロマンチックな関係にはつながらなかった。
今回の彼女の目標は自分の中にある「未知なる自分」を探すことだった。わたしは彼女との共通点を探っていくために、まずはわたし自身も「未知なるもの」に興味があることを示して行った。わたしたちは、お互いのことをまだあまり知らないということを指摘し、そしてわたしが彼女について知りたいことを話した後に、彼女もわたしに何か質問をするように促した。ゲシュタルト法では、はっきりとしていない、もやもやとしていてる土台を「創造的虚空」と呼び、未だ分からない未知なるものをクライアントから引き出すためにセラピストが用いることがある。
彼女は両親に貼られた「いい子」というレッテルがいやでいやで仕方がないことを話してくれた。彼女は両親がいつもリンダが付き合う男の子たちを認めてくれなく、リンダは良く両親の目をさけてボーイフレンドたちと合うために窓から忍び出て行ったことを教えてくれた。彼女は自分の意思で考え、自分の人生を形成していきたかったが、どうしてもそれが難しかったのだと打ち明けてくれた。
これらを全部組み合わせると、リンダは自分の女性らしさというものに問題をかかえているようだった。彼女が「いい子」になろうとするがゆえに男性との関係において完全に女性らしさを出すことができなく、そのために友達以上の関係になることができなかったし、またそれ以上の関係になっても自分からまた「友達関係」にもどそうとしてしまうのだった。
わたしのチャレンジは彼女が自分の女性としての性的魅力を認めるためにどのようなことができるかということだった。わたしは他の参加者に声をかけ、自分のことをバッドガール(性悪女)だと思っている女性はいないか聞いてみた。ただひとり、マルチーナが手をあげた。わたしはリンダに「バッドガール」とはどいうものか教えてあげるようにマルチーナにいった。ゲシュタルト法ではコミュニティのサポートを利用することを大切にしており、特に自分の性に関してなどの敏感なトピックは、自分一人だけが問題をかかえているのではないこと、また自分がさらされているという思いが少しでも軽減され、ほかの人達と一体感を持ち、そのことが恥ではないということを感じることができるよう、まわりのサポートをうながしている。
マルチーナは自分にとって「バッドガール」とは「いい子」「悪い子」ということよりも、他人に決められたことではなく自分で物事を決め、自分にとっては何が良いのかということを判断することだ、と教えてくれた。
そこでわたしはリンダに焦点をもどし、彼女が今どのような気持ちでいるか聞いた。彼女はいつも自分の体に対しては敏感ではなかったので、自分が何を欲していて何を求めているのかが分からないと答えた。このことは彼女の性というものを探っていくなかで、あきらかに障害になりそうなことだった。
リンダが自分の性をみつめ自分の一部として受け入れることができるよう、わたしはあるアクティビティを試みた。このアクティビティはとても慎重に行わねばならないものだったので、わたしはリンダに自分がやりたいことだけ選び、必要だったらアクティビティを中断することも可能だと伝えた。また、このアクティビティにおけるルール(境界線)も説明した。それはグループでのみやるべきことであることと、アクティビティに参加する男性は彼女のサポート役となるためだけに参加するということ。
性に関してのカウンセリングにおいてははっきりとした境界線をはじめに引いておくことがとても大切です。
わたしはリンダにこのグループの中で一番魅力的な男性を選ぶ様にと言った。そしてお互い向き合って立つように指示した。リンダに今何を感じているかを聞くと、彼女は少し緊張しているが他には特に何も感じていないと言った。わたしはリンダに体の中のエネルギーを循環させながら呼吸をし、男性を見つめるように促した。彼女はわたしの言った通りにしたが、何回か繰り返すうちに「彼はもうそこまで魅力的に感じないわ」と言った。それは彼女は自分のうちの性的なエネルギーを抑え、いつもの通り「お友達」へと変えていたからだ。わたしはリンダにそれを指摘し、彼女が本当に未知なるものを見つける心の準備ができているかを聞いた。こう聞くことにより彼女がもともと言っていた「未知なる世界」の発見を助けることになったし、彼女のほうから言って来たことだったので、もしかすると肯定的に受け止めてくれると思ったからだ。
彼女はわたしの提案に賛成したので、彼女に呼吸を続けながら相手の男性を見、自分の身体のどの部分で快楽を感じ、またどのようにそれを感じるかを考えてみるようにと言った。はじめは特に何もなかった。しかし、少ししてから彼女は上半身にあついものを感じた。わたしは彼女を励まし続け、呼吸を続けるように促した。また少し経ってから、彼女は自分の体の中にあるあついものが上半身からお腹のあたりまで、そして腰のあたりまでエネルギーが動いていくのを感じることができた。
アクティビティで相手の役をしてくれた男性はこの体験を通して彼が気づいたことを話してくれ、私たちはその後しばらく色々と話し合った。
彼女は今までセックスの時以外は意識的にこのようなエネルギーを感じることができなかったので、この体験は彼女にとっては大きなステップだった。彼女は自分が持っているパワーやそれをどのように持ち出し、男性との関係で引き出して行くことができるのかを今まで知らなかったのだ。
心理療法で「性(セクシュアリティ)」はとてもデリケートで難解なトピックである。セラピストがしっかりとした境界線を引かないと権利乱用や虐待へとつながることもあるので気をつけないといけない。
しかしながら性の面で精神的治療が必要な人は沢山いて、他のどこでもそのような助けをうけることはできないであるから、セラピストがこのトピックを恥ずかしがって逃げてしまうのもよくない。
今回のアクティビティは沢山のサポートの中でゆっくりと、クライアントのペースで彼女にとっての「未知なるもの」を探って行くものだった。
彼女の両親との関係で「解決すべきこと」について話すこともできたが、彼女はこの新しい体験を経験する準備ができていて、過去にしばられたくなかったので、一歩踏み出すことができた。
多くの人は何かに関して自分の中の意識を遮ってしまっていることがある。「性」については特に多くの人が考えない様にしてしまうトピックのひとつである。それは時には過去のトラウマによるものでもあるが、社会的な要素や家族から無意識に伝わったことにより性的な感情を抑制してしまっている。
このような様々な理由により抑制されてしまっている性的感情を取り戻すために「なんでもあり」の性という考えを導入しようとしても逆効果になる。そのためゲシュタルトセラピーでは「性」というものがおおぴらに表現されているものでもなく、抑制されたものでもなく、私たちの人間としての存在の中で自然なものとして表現されることを目的としている。

2016年1月6日水曜日

Case #60 - 憎悪と愛情

わたしはジェレミーとミランダ夫妻が自分たちの心にひそんでいる攻撃性や怒りに触れることができるよう、お互い手のひらをあわせ押し合うアクティビティを提案した。
しかしこのアクティビティが終わったあと、ミランダは怒りだしてしまった。彼女は夫のジェレミーに対してとても腹を立てており、彼との関係に行き場を失っていた。というのは、彼女にとって大切な話があるとジェレミーはすぐ冗談を言い、笑って真剣に話を受け止めてくれないからだ。彼女は彼のこのような性格に大変怒りを感じており、ジェレミーが彼女のことを全く見てくれてないと感じていた。
そこでわたしは、ジェレミーとミランダをお互い向き合わせ、ミランダに夫に「わたしは今、あなたのことが嫌いよ」と言うようにと言った。
このような表現はゲシュタルト法で用いられる方法で、相手との心のつながりをつくることができる表現だ。このように言うことは相手のせいにしていないし、自分の気持ちを素直に表情しているし、とても淡々として分かりやすい。
彼女がわたしが言った通りに夫に言うと、夫は爆笑しはじめた。
このように笑うことは楽しみを表すこともあるが、今回ミランダが自分の大切な気持ちをはっきりと伝えようとしている時に笑うというのは、相手をシャットアウトし蔑むことになり、このような行動をゲシュタルトでは「逸脱」と呼んでいる。
彼の笑いは妻の怒りを正直に受け止めることができない自分を隠す道具となっており、彼女と向き合って怒りを受け止めることができない自分を隠していた。
なのでわたしは彼が真剣に妻の話を聞く事ができるように、お腹から呼吸をし、あごをリラックスするように言い、彼が妻の怒りに圧倒されてそれを受け止めるのがいかに難しいことであろうかということを言った。
彼はなかなかまじめになることができなく、ジェレミーが笑いを発する度にミランダの怒りは激しくなり、「この人はいつも真剣な話をしようとするとこうなのよ!」と怒った。
わたしの助けによりやっとジェレミーはなんとか真剣になりミランダの話に耳を傾けはじめることができたので、わたしはミランダに気がすむまで何度も夫にはっきりと先ほどの「今、わたしはあなたのことが嫌いだわ」という言葉を繰り返すように促した。
彼女は激しい感情の中で何度も何度もこの言葉を繰り返した。彼女がやっと全てはきだすと、落ち着きを取り戻した。そして自分があまりにも正直に怒りを表すと、ジェレミーが彼女のもとを去ってしまうのではと恐れていることを打ち明けてくれた。
わたしはジェレミーにそんなことはないと妻に言ってあげるように促した。彼もまた妻が自分のもとを去ってしまうのではと恐れていることを話はじめたが、まだミランダは自分の言いたい事を全部言い終えていなく、それを言うまで夫の言い分を受け止める余裕はなかったので、わたしは言いかけたジェレミーを止めた。
ミランダは話を終え落ち着きを取り戻し、自分がどれほど夫を愛しているかを彼に話した。ジェレミーもまた自分の気持ちを妻に正直に話すことができ、夫婦の間には目に見えてわかる強く、深い絆が生まれた。
ゲシュタルト法では人々が自分の心を正直に、かつはっきりと相手に伝えることができるようクライアントをサポートするのが目的である。これらの目的を達成することにより他のことも自然と解決へと導かれる。またこれらのことを達成するためには感情を探り出す助け、実際的な言動のサポート、そして抑制を必要としている。

2015年12月27日日曜日

Case #59 - 愛情を求めている大人

グループセラピーを行っていくなかでトレバーの中の深い悲しみがあらわにされた。
その日、わたしはグループセラピーで遊びをつかいながら、自分の中の「攻撃性」を見つけ出して行くことをクライアントに教えようとしていた。参加者達はペアになり向き合って、手のひらを合わせてお互い押し合った。ルールは簡単で、相手と同じ力で押すということだった。そのため、より力の強い者は自分の力を加減する必要があった。
トレバーはグループの中でも一番力が強い人だった。彼がこのアクティビティをしている最中、つい夢中になり相手を強くおしてしまい、相手の男性は後ろにひっくり返ってしまった。
彼は相手に勝とうとして強く押してしまったので、わたしはこのアクティビティの目的は「競争」ではなく、「相手と同じ立場にたって向き合う」ことだとトレバーに教えた。
すると彼は悲しそうな顔をしてしまった。それはわたしが彼の存在感があまりにも強すぎて他の人々と同じ立場に立って話すのは難しいのではと指摘したため、トレバーが今まで心の奥底にしまっていた感情がいっきに出て来てしまったためだった。
わたしがトレバーに今どのようなことを感じているか聞くと、「腕には怒り、心には悲しみ」と彼は答えた。
そこでわたしはあるアクティビティを提案した。私たちは二人ともたって、わたしは彼と手のひらをあわせ、彼に力強く押しながら腕の中にある怒りを感じ取るようにといった。そして今度は押すのをやめて、自分の心の中の悲しみを感じ取るようにといい、わたしは彼を抱きしめてあげた。そして一連の動作を何回か繰り返した。
このアクティビティをすることにより、彼は怒りを発することと愛されること、両方を体験することができた。同じ動作を繰り返して行くなかで彼は「パパ」といった。それでわたしは彼の両極端な感情は父親との関係からきているものだったということが分かった。しかし、今はその過去を深くほりさげていく必要はなく、ただ今いる中彼との向き合いというものが必要だったのだ。
トレバーは「わたしはずっと師となる人を探していたのです」と言った。なので、わたしは彼が本当に求めているものは誰かに自分を見てもらうことなのだとこたえた。こうすることにより、彼がわたしに一方的にあまえるのではなく、彼自身も物事を変えていくことができるというのを教えたかった。
そして私たちは抱き合い、彼はわたしを地面から持ち上げた。わたしも彼を持ち上げると彼はわたしを抱え、子供の遊びのように何回かわたしを持ち上げたままぐるぐるとまわった。わたしも彼がしたように、同じようにしてあげた。
こうした後、かれは心がとても落ち着いたようだ。おそらく、それはやっと彼の必要としていた愛情をうけとることができたからだ。
もちろん、わたしのように彼を持ち上げたりするのは必ずしも誰もができることではないが、どのような方法を使ったとしても、クライアントが必要としている立場で向き合うことは可能である。そして、この「向き合う」ということこそ、ゲシュタルト法の根本にあるものなのです。


2015年12月16日水曜日

Case #58 - 言葉の向こうにあるもの

クライアントが様々な問題について話す時、その中で一番の「フォーカス」(焦点)を探りだすために、私たちは常に色々なものに耳を傾けていないといけない。
トレバーにとってのフォーカスは今の家族関係と関連していた。彼はとてもスピリチュアルな面があり、過去には僧侶にもなろうと思ったほどだ。彼はバツイチで、現在2回目の結婚をしており、子供もいて、家族はとても大切にしていた。
そのような安定した家族関係にありながら、彼は落ち着きがなかった。彼の現在の家族関係の反対側にあらわれたイメージは「山」というものだった。私たちがこれを探って行く中で分かったのは、トレバーにとって「山」とは自然との一体感、簡素な人生、自然保護、地とのつながり、スピリチュアルなことへの時間を持つ、ということだった。
ゲシュタルト法では、「両極端」に目を向ける様にしている。また、それが「割れて離れていく場合」はもっと注意して見る様にしている。そして、両方に注意を向けて、クライアントがどちらも受け入れることができる方法を見出して行く。
なので、わたしはトレバーの「家族を持つこと」、そして「地への想い」について彼の気持ちを聞き出そうとした。彼は新しく家族を持つことには抵抗を感じていなかったが、どこか心の奥底で満足していなく、落ち着きがないと言った。
彼と話して行く中で、彼は今の人生を選んだ自分と完全に和解できていなく、心の半分は今の人生、もう半分はどこか夢の世界にいるということが分かった。
わたしはトレバーに、自分も過去に同じような経験をしたので、彼の気持ちがよくわかるということを一生懸命伝えようとした。このようにクライアントとのつながりを表す言葉は、「共感性」を示すだけではなく、同じ人間として共有するために重要である。
わたしは自分自身のスピリチュアリティ、自然、家族に対しての想いや、自分が僧侶にはなれないという想いなどを話した。私たちはその後、しばらく深い沈黙の中にいた。そこには言葉で表せない想いがあったからだ。彼は自分で人生の決断をし、その結果このような想いを体験していたので、わたしには彼を助けることはできなかった。それは良いことでも悪いことでもなかった。彼の選んだ人生は痛みを伴うものだったが、満足を与えるものでもあった。その中では得るものもあったし、失うものもあった。そこには問題解決の促進も必要なかったし、誰かに自分の人生を解釈して教えてもらう必要もなかった。
ただ必要なのは、自分の心の中の和解と解決だった。
突然、私たちの心の中で何かスイッチが入ったように、場の雰囲気が変わった。
彼はわたしに「ありがとうございました」と一言お礼をいったのだ。ただ、それで十分だった。
セラピーでは話し合いをし、助け、物事を探るときもあれば、ただあるものをそのまま受け入れる時もある。何かを変えることができないとき、ただ相手と一緒にその場にいる、というのも一つの方法だ。
今回のセッションはとても心の奥深くに語りかけるもので、私たちはそれを感じることができ、トレバーは自分の気持ちを誰かに分かってもらうことができたと感じ、「割れた心」がやっと一つになってきたように感じることができた。

2015年12月8日火曜日

Case #57 - 見方についてほしい

アナベルが話し始めた瞬間からわたしは嫌な気持ちがわいて来た。彼女は明らかに自分中心の「ストーリー」を語りたく、自分がどんなに他の人に嫌な想いをさせられたか、また彼女がどんなにか家族を助けようとしていたか、そのようなことを語りたかったのが分かった。わたしは自分が早く話しを終わらせようとし、彼女の話に耳を傾けたく無い自分がいるのが分かった。彼女はわたしが介入するすきを与えずにただ延々と話し、ただ文句をたらしたかっただけのようだった。
しばらくして、彼女はその「ストーリー」に関してわたしに質問を投げかけてきたりしたが、やはり、わたしは居心地が悪かった。彼女は色々と質問をしたかったようだが、ただわたしを自分の今の状況を解決する専門家にしたてようとしているようだった。
しかし、彼女の希望とは反対に、わたしは自分の考えは何一つ述べなかった。わたしは彼女と対話をし、彼女の質問には答えることはしなかったが、逆にそれを意見文として言い換えるように言った。これはゲシュタルト法ではよく利用される方法だ。それは、質問をするということは責任回避であったり、人との関係の中であらわになるものであるからだ。「意見文」に言い換えることで、自分がどのような者であるのかに対して責任を持ち、自分がどう感じて、どうして欲しいのかをもっとはっきりと伝えることができる。
わたしが何も言わなかったのは、自分の中でも様々な感情が行き来していて、落ち着いてそれが何であるかをその場にいてもっと理解したかったからだ。わたしは自分の気持ちを受け止め、どうしてこのように自分が反応しているのかを理解しようとした。
アナベルが話す度に何度も同じような感情が引き起こされ、それは彼女に質問を意見文へ変える様にと言った時も同じだった。しかしこうしないと彼女の悪循環を止めることができなかったし、わたしは彼女がわたしに差し出していた「偉大なる知恵のある人」という役割を受け入れるようなことはしたくなかった。
しかしこうすることにより彼女の興味をひくことができた。わたしが自分の感情を表す事なく、彼女に自分の体験を振り返らせるよう促したことにより、アナベルは自分の感情に少しずつ向き合いはじめることができた。
わたしが彼女と信頼性について話していると彼女は急に「正直に言っていただきたいのですが、わたしのことをどう思っていますか?」
この質問は私たちの関係を深めることのできる手段であったので、わたしは息をつき、慎重にことをすすめることにした。とても繊細で慎重を要する質問であったが、今までの中でもっともオープンであり彼女がわたしを信頼していることを示しているものであったので、わたしはよい質問であると思った。
わたしは自分の気持ちをしばらく振り返る時間を持つことができていたため、直接彼女に対してではなく、自分の(彼女との対話の中での)体験に関して話すことができた。
そこで、わたしはこう言った。「あなたが話す度に、あなたの見方になってほしい、と言われているような気がします。わたしはあなたに同意し、あなたがどのように家族を見ているかやあなたがどのように家族から扱われていたかということに賛成して同意したい。でも、わたしはあなたのことを拒否したくもなければ、あなたのチームに加わりたくもないので、居心地がとても悪い。」
こうすることにより、わたしは自分の体験を正直に述べると同時に、彼女に応答する余地を与えることができた。こう答えることは彼女を侮辱する言葉ではなかったし、重要なフィードバックでもあった。アナベルはにこっと笑い、言った。「ありがとうございます。今まで他の人もわたしに同じようなことを言っていたのですが、あなたほどはっきり言ってくれた人はいませんでした。今言われたことがどのようなことか、わたしも自分で理解しています。わたしは無意識のうちに、他の人を自分の見方につけようとしていると自分でも感じているのです。」
そして、私たちは今まで以上にお互い素直になり話すことができた。わたしは「敵・見方を作る」のは楽しいことでもあり得ると言い、子供達もよく遊びのなかで見方や敵を作って遊んでいることを彼女に気づかせた。わたしたちは他にも色々なことを話し合い、アナベルの緊張が和らいでくるのが見えた。そして、わたし自身もやわらいできたのだった。わたしは自分の心の体験を言葉に出すことにより、心の状態が変わってきたし、彼女は「誰かに見てもらう」ことを体験することができた。
ゲシュタルト法はこのような "I-Thou"(わたしとあなた)の体験を求めていて、クライアントの人間関係を深める基礎である。


2015年11月27日金曜日

Case #56 - 誰かにかまってもらいたい女の子

ウェンディの課題は新しい人生のパートナーが欲しいということだった。彼女はバツイチで、自分のビジネスを持っていた。彼女は自分が従業員に対してすぐいらいらし、とても事務的で、自分の弱さを決して見せないということを話した。そして、わたしがとても忍耐強く彼女の話を聞いている様子とは対照的であることを話した。
わたしは上の立場にいて、「力を」持つというのはどのような事かを彼女に話した。それは事務的ではっきりと物事を言い、物事をコントロールすることができる快感があり、常に自分がボスでいれる、ということだった。
わたしがこれらのことを話している最中に彼女は手をこまねいていて、小さい女の子のようだった。わたしは彼女に自分が心の年齢を聞くと、彼女は「10歳」と答えた。なので、わたしは彼女に10歳の時に何が起こったかを聞いた。
更にわたしは彼女の家族の中での「忍耐、がまん」がどのように表れているかを聞いてみた。ウェンディの父親は彼女が10歳の時に学校の成績が下がっているからと言い、彼女を叩いたのだった。また、父はよく弟にも暴力をふるっていた。しかし公では彼はとてもおちついていて、他の人のために時間を作れるような人だった。
彼女の父がそのような人だったので「もしかしたらわたしが落ち着いて忍耐強く聞いているのを見て、父親のようにいつ爆発するのでは、とびくびくしているのでは無いですか?」と聞くと、彼女はうなずいた。
彼女は自分は男性を信じることができないことが問題だと言った。最初の夫もまた彼女に対してすぐ怒る人で、彼女が彼のご機嫌取りをすることにしか興味がなかった。彼女は、今はただ新しいパートナーを見つけたいということを言った。
彼女は自分の成績が下がったのは全寮制の学校に言っているときにとてもひどくいじめられたからだったと言った。しかし彼女の両親はそんなことは知らなかったし、彼らにとってはそのようなことはどうでもよかった。だから、彼女は子供の頃に孤独を覚えていたのだ。わたしは彼女に近寄りながら、彼女がとても繊細であり、弱い者であるということを語りかけ、心の中の子供である彼女は誰かのアジェンダの一部として生きるのではなく、彼女自身として見てもらう必要があることを語りかけた。彼女が必要としているのは、ただよい結果を求めている人ではなく、彼女の苦しみを分かってくれる人だった。
彼女は今まで背負っていたものがとれていき、次第に泣き始めた。わたしは、彼女がいかに大切な人であるかを話し、誰のアジェンダにも左右される必要は無いということを話した。彼女はこのように誰かに見てもらうことを心の底から必要としていたようで、私たちはしばらく、ただそこに座り、わたしは彼女にこの大切な時間を味わうよう促した。
彼女が誰かとまた新しい関係を歩む前に、自分の心のケアと成長が必要だということをわたしは指摘した。
ゲシュタルト法ではただクライアントの目の前にある問題だけにフォーカスするのではない---セラピストがそれ以上に見えてくるものを発見ことが大事なのだ--時たまそれはクライアントが全く意識していないことでもある。セラピストがその表面下にあるものを見つけたら、次はそれをクライアントの目の前に持って来て、どうしてそれが問題となっているか、その背景を調べることだ。大体は家族と関係していることだが、必ずしもそうではない。そうしてから、そのフィールド(クライアントに関係する背景)を現在の問題と照らし合わせ、セラピーの中で取り扱っていく。
こうすることにより明確なセラピーのゴールが見えてくる。今回の場合、ウェンディがはじめに言っていた、「新しい人生のパートナーを見つけたい」ということにあたる。


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