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2015年11月27日金曜日

Case #56 - 誰かにかまってもらいたい女の子

ウェンディの課題は新しい人生のパートナーが欲しいということだった。彼女はバツイチで、自分のビジネスを持っていた。彼女は自分が従業員に対してすぐいらいらし、とても事務的で、自分の弱さを決して見せないということを話した。そして、わたしがとても忍耐強く彼女の話を聞いている様子とは対照的であることを話した。
わたしは上の立場にいて、「力を」持つというのはどのような事かを彼女に話した。それは事務的ではっきりと物事を言い、物事をコントロールすることができる快感があり、常に自分がボスでいれる、ということだった。
わたしがこれらのことを話している最中に彼女は手をこまねいていて、小さい女の子のようだった。わたしは彼女に自分が心の年齢を聞くと、彼女は「10歳」と答えた。なので、わたしは彼女に10歳の時に何が起こったかを聞いた。
更にわたしは彼女の家族の中での「忍耐、がまん」がどのように表れているかを聞いてみた。ウェンディの父親は彼女が10歳の時に学校の成績が下がっているからと言い、彼女を叩いたのだった。また、父はよく弟にも暴力をふるっていた。しかし公では彼はとてもおちついていて、他の人のために時間を作れるような人だった。
彼女の父がそのような人だったので「もしかしたらわたしが落ち着いて忍耐強く聞いているのを見て、父親のようにいつ爆発するのでは、とびくびくしているのでは無いですか?」と聞くと、彼女はうなずいた。
彼女は自分は男性を信じることができないことが問題だと言った。最初の夫もまた彼女に対してすぐ怒る人で、彼女が彼のご機嫌取りをすることにしか興味がなかった。彼女は、今はただ新しいパートナーを見つけたいということを言った。
彼女は自分の成績が下がったのは全寮制の学校に言っているときにとてもひどくいじめられたからだったと言った。しかし彼女の両親はそんなことは知らなかったし、彼らにとってはそのようなことはどうでもよかった。だから、彼女は子供の頃に孤独を覚えていたのだ。わたしは彼女に近寄りながら、彼女がとても繊細であり、弱い者であるということを語りかけ、心の中の子供である彼女は誰かのアジェンダの一部として生きるのではなく、彼女自身として見てもらう必要があることを語りかけた。彼女が必要としているのは、ただよい結果を求めている人ではなく、彼女の苦しみを分かってくれる人だった。
彼女は今まで背負っていたものがとれていき、次第に泣き始めた。わたしは、彼女がいかに大切な人であるかを話し、誰のアジェンダにも左右される必要は無いということを話した。彼女はこのように誰かに見てもらうことを心の底から必要としていたようで、私たちはしばらく、ただそこに座り、わたしは彼女にこの大切な時間を味わうよう促した。
彼女が誰かとまた新しい関係を歩む前に、自分の心のケアと成長が必要だということをわたしは指摘した。
ゲシュタルト法ではただクライアントの目の前にある問題だけにフォーカスするのではない---セラピストがそれ以上に見えてくるものを発見ことが大事なのだ--時たまそれはクライアントが全く意識していないことでもある。セラピストがその表面下にあるものを見つけたら、次はそれをクライアントの目の前に持って来て、どうしてそれが問題となっているか、その背景を調べることだ。大体は家族と関係していることだが、必ずしもそうではない。そうしてから、そのフィールド(クライアントに関係する背景)を現在の問題と照らし合わせ、セラピーの中で取り扱っていく。
こうすることにより明確なセラピーのゴールが見えてくる。今回の場合、ウェンディがはじめに言っていた、「新しい人生のパートナーを見つけたい」ということにあたる。


2015年11月21日土曜日

Case #54 - 「悪魔」がいるのなら、「神」も存在するのではないか

アンジェリカは今は職を変えてはいたが、つい最近まで医師として働いてた。彼女は一児の母で、もう一人子供をほしがっていたが、新たに子供を授かることに恐れを憶えていた。私としばらくの間会話をすると、彼女は私にどのように思われているかが気になるといった。なので、私は彼女との親近感を深めようとし、彼女が夫からもらった美しいブレスレットをほめたり、目に見えてくる情報を言葉にして彼女に伝えた。
アンジェリカは産婦人科医で、仕事の一部として人工中絶を行っていた。その時は自分の仕事なので、何も感じずに手術を行っていた。しかし、彼女が赤ん坊を分娩させる時でも、特に喜びは感じなかった。それもまた、「自分の仕事の一部」であったからだ、と自分には言い聞かせていた。
数年後、彼女はセラピーを通して自分の心に今までたまっていた感情を出すことが出来た。その中には中絶を行うことによる心の痛みも含まれていた。これは彼女の政治的考えやイデオロギーに関係するものではなく、10年以上胎児を中絶する手術を行うことによる感情的な圧迫感だった。
また彼女は最近流産を経験しており、それを自分に対してのばつだと感じていた。彼女は、頭痛がする以外は体が無感覚で麻痺していると言った。彼女はとても辛そうにしていて、泣き始めたので、私は一旦立ち止って休憩をしよう、と提案した。人は、自分が受け入れることのできる以上の激しい感情に対面する時、機能するのをやめてしまうのだ。そのため、このような激しい感情をクライアントが体験している時、そのまま続けようとするのは逆効果になることがある。こうして少し立ち止まることにより、その感情から一歩退くことができた。私は、今、彼女と共にこの場にいるのだということを伝えようとし、彼女に対しての想いを言った。それは彼女への深い哀れみであり、彼女に対して批判的な想いはこれっぽちも無いのだ、ということだった。それを聞き彼女は少し落ち着いた。
胎内にどのようなものを感じるかと聞くと、「暗黒」と彼女は答えた。やはり彼女はこの激しい感情に圧倒されていた。彼女は自分の殻に閉じこもろうとしていたので、私は彼女が外界とのつながりを失わないように、彼女とアイコンタクトをとる様にした。私は彼女のブレスレットを見て、このブレスレットと同じように彼女の体内には他の色も存在するように思えてならない、と言った。そのブレスレットは黒いビーズ以外にクリスタルや、美しいピンクのビーズもついていた。私は、ピンクのビーズはあなたの胎内の色と似ているだろうねと言った。彼女は医者だったのでこのことは知っていたはずだ。私はこうすることにより、彼女をあいまいな「暗黒」色の投影から、もっと明確な命や血のつながりへと意識を導こうとした。
アンジェリカが話しているとき、私は彼女が拳を握りしめているのに気がついた。ゲシュタルト法ではエネルギー表現を無意識なところから、意識的にすることを重視しているので、私はこのことを彼女に伝えた。
それを聞き、彼女は「怒りを感じる」ことを教えてくれた。私もいままでの会話から彼女が怒りに満ちていたことは分かっていた。ゲシュタルト法ではこれを「emerging figure」(出現するもの)と呼ぶ。これはクライアントの問題を象徴するものを示していて、そのことがクライアントの生活の全てにはっきりと現れ、時には大げさに表現されて現れることがある。
つまり、「怒り」というものは彼女が変化を起こすために必要なエネルギーであったのだ。しかし、ただ枕をなぐったりすることなどで解決する簡単な問題ではなかった。
私が彼女に「誰に対して怒りを感じるのか」と問うと、彼女は「私自身」と答えた。
私は彼女が自分自身をどのように評価しているかを聞いてみた。彼女は、自分は悪魔のような人間で、どんなにか酷い人間であり、これ以上子供など授かる資格は無いのだ、と自分に言い聞かせていたそうだ。これらのことを言葉に表して表現することは彼女にとって痛みを伴うものだったので、私はまたしても彼女にいったん深呼吸をし、少し間をおくように促した。
私が彼女に何か宗教的な信仰を持っているかと聞くと、彼女は「いいえ」と答えた。
彼女の地獄のような状況から何か救いが無いかと思い、私は「もし悪魔がいるのなら、どこかに神もいるはずだ」と彼女にいった。ゲシュタルト方法では「完全性」へと導くために物事の両極端をクライアントに見せる様にしていて、私もこの方法をとった。
彼女が私の意見に賛成したので、私は「悪魔」と「神」を示すオブジェを2つ選ぶように言った。彼女は「悪魔」を示すほうを持ったが、「神」を示す物の隣においた。「神様は寝ているから起こしたいの」と言い、彼女は床をばんばん叩いたが、「神」のオブジェは何回も倒れるだけだった。彼女は「神」を象徴するオブジェに自分から起き上がってほしかったのだ。なので、私が「神の立場」になり、「神」を示すオブジェを立たせてあげた。
私がアンジェリカに「神」という象徴的な存在を受け入れるように促すと、彼女は急に疲れが出て来たので、私は少し休むように言った。彼女がわたしにもたれかかってくる時に、「目覚めたら、胎内に命が吹き込まれてきているのを感じてくださいね」と言った。
彼女は数分感休んでから目をあけた。そして、確かに「神」から命の祝福を受け取ることができていて、体に暖かさを感じ、自分の胎ももとに戻って来たことを感じた。
そして最後に「悪魔」を「神」のオブジェの後ろに置き、自も弱さを克服する力が与えられていることを信じることができた。
ゲシュタルト法では常に抽象的なものを明確にしようとしていて、今回のケースでは、「悪魔」と「神」の極性が取りあげられた。
彼女が必要としていたものは、今直面している問題をうまくとりあつかってもらうことであり、そうすることにより、彼女は人格の統合性を感じることができた。

2015年11月18日水曜日

Case #53 - 一体どっちに問題があるの?

トムはお酒を飲み過ぎることがよくあった。これはもう何年も続いていて、何回か止めようとしたが、止めてはすぐにまたはじまった。
アビーは彼の飲み癖が嫌だったので、トムにお酒をやめるよう何度も言っていた。ただ、トムは確かにやめようとしていたのだが、ある一定の期間は良くなるが、その後、何かの拍子で悪い癖がまた始まってしまうのである。
アビーはトムと良い恋人関係を築きたかった。彼女はトムと物事を共感したかったし、コミュニケーションをとりあい、お互い正直でありたかった。二人は長年付き合っていたので、彼女は今までの年数を無駄にしたくなかったのだ。トムに愚痴を言うのは効果的では無かったが、ただ、なすがままにするのも良く無かった。アビーはだんだんストレスがたまってきていた。トムは彼女が求めているような改善を見せなく、アビーは怒りがたまる一方で、もうお手上げ状態だった。
トムは紛れもないアルコール中毒だった。彼は自分でどのくらいお酒を飲むかコントロールがきかなかったし、止めようとしても6ヶ月くらいまでしか続かなく、すぐもとに戻ってしまうのだった。
アビーは自分が出来る事は何でもしているようだった。彼女は自分の立ち位置をはっきり持っており、自分とトムとの間に適切な境界線を作っていた。また、こうしてセラピーにも自分からすすんで来たりしていた。
心理学のフィールド(場)からの視点でいうと、「中毒」というものはある一定の人の「中」にあるものではなく、家族や恋人との関係の「中」に存在するものだ。この場合、アビーは自分ができることは全てしているように見えるが、通常は中毒というものは一人以上の人の原因により成り立っているものだ。アビーは中毒フリー、いわゆる「普通の」恋人関係を望んでいた。
アビーの父親は過剰にコントロールしたがる人で、侮辱的で、いじわるだった。彼女は親からの愛情を十分に受けることができず、誰かに耳を傾けてもらったりなどの必要性も満たされていなかった。そのため、誰かに見てもらいたくて、いつも誰かを助けたり、お手伝いをする「良い子」になった。
これはゲシュタルト心理学で成長、成熟における「創造的調整」と呼ばれているものだ。この「調節」はその時は効果的だったのかもしれないが、大人になるにつれ、彼女の首をしめていくだけだった。
彼女はこのような過去からの心境があったため、看護の勉強をし、他の人を助けたいと思ったのだそうだ。そして、今まさにそのようにトムも「助けよう」としていた。
アビーは心を探っていく中で、自分の人への好意は誰かにギフトをあげるような気持ちだということに気づいた。それは、他の人・男性に何かを「差し出す」ことにより、彼女は自分が役に立っていて、存在を求められていて、認められていて、必要だとされていると感じたからだ。
実際、トムとの恋人関係にこの心理が働いていた。彼はアビーを必要としており、彼女が怒って距離をおくと、トムはとても悲しくなった。彼女はトムが悲しい顔をしているのに耐えられなかったので、彼をなだめようとするのだ。
ここで一つ重要な気づきは、彼女の好意は人を操るために利用されているものである、ということだった。それは、彼女の心の奥底に「私があなたに何かを差し上げたら、あなたは私を必要とし、私のそばを離れないわ」という心理が働いていたからだ。
このことに気づくことは、アビーにとって重要なターニングポイントだった。アビーはトムの中毒だけでなく、自分の中で働いている「操り」も見出すことができた。それは、ゲシュタルト法で「proflexion」と呼ばれるもので、自分が何かをすることにより、当たり前のように相手にも何かを期待する、という心理だ。
これは「歪められた境界線」の例であり、何かを与えているように見えるが、実際はその裏に隠れた動機があり、本当は無条件の愛ではなく、条件付きの愛であるものだ。
彼女は今まで相手に何かを期待しながら与えていたことに気づいていなかったので、この「気づき」は非常な大きなものだった。これで、トムの中毒だけでなく、アビー自身にも問題があるということに気づいた。
ゲシュタルト法はクライアントが自分で「気づく」ように導いている。それは、今現在起こっていることだけでなく、日常の中で隠れて現れる行動など、複雑に形成されているクライアントのフィールド(過去、家族構成、人間関係)を探ることでもあるのだ。
このような心に潜んでいるものを明らかにすることにより、クライアントが過去どのような事があったかに関わらず、現在の自分の行動に「気づき」、ゲシュタルト的な言葉でいうと「自分の行動に責任をとる」ことができるのだ。そして、クライアントは自由を得るのだ。自分が人を操ろうとしている行動に気づくことはそれに対して何かをしよう、という思いを与える。しかし、相手が何かにはまっていたり中毒だったりすることしか目に入らなかったら、それに対する反発が出てくるだけだ。

2015年11月7日土曜日

Case #52 - ちゃらい女たち

マーティンは今までに何人か真剣に付き合っていた彼女がいた。まだ子供はいなかったが50歳になった今、ソウルメイトともいえるような女性とつきあっていた。
彼はいわゆる「パーティーガール」と呼ばれるお酒のあるパーティーが好きで、遊び回っている女性に魅力を感じる事を自分でも気づいていた。今の彼女に出会うまでは彼がどんなに努力しても長続きする関係を持つことができなかった。
彼は今幸せだったが、ひとつ気がかりなことは、今の恋人が飲みに行くことが好きだということだった。彼自身も飲み会などのパーティーは嫌いではなかったが、たまに早くパーティーを抜け出したいこともあった。
また飲み会などに行くことによって思った以上にお酒を飲んでしまうことがあった。
アルコールや人間関係の行動パターンを考えるとき、問題自体にフォーカスするよりも、もっと広い範囲で物事を見る必要がある。ゲシュタルト心理学ではこれをフィールドと呼んでいる。このフィールドを探って行く方法はいくつかあり、家族心理学(家族性発現)で用いられる方法だ。個人療法の中でも、範囲を広げて色々な要素を見ることが求められる時もある。
そこで私は彼の両親と祖父母について伺った。彼の両親はとても仲が良かった。
彼の父方の母親は、彼女の時代にしてはとても冒険好きな人で、良く旅行に出かけたりしたし、晩婚だった。彼女はまわりの人に人気のある女性だったが、母親としてはかまってくれない時もあったようだ。なので、彼の親子関係に対する思いはどうやら父方のほうから来ているようだった。マルチンはいままでこのような事を考えたこともなかったが、こうして見てみると自分がなぜ社交的だが一つの関係で長続きしない女性に魅力を感じるのかが分かってきた。
「過去」のことが分かった彼が次にするべきことは、「現在」へ移行することだった。私は彼の好きな「パーティーガール」を表す椅子を彼の前におき、彼にその女性にどのような感情があるか考えるように言った。それには魅力だけでなく、過去の女性関係の痛みなど、様々な感情が入り交じっていた。私は、彼がその「女性」の前に座った時、どのような心の動きがあるか聞いてみた。彼は自分の中で興奮と怒りを感じること、そして虚しさも感じる、と言った。私は彼の体の部分でどこにこの感情を感じるのかを聞いてみたところ、彼は自分の胸に息詰りを感じると言った。
また彼は今の恋人がお酒をたくさん飲み始める時にもパニックや恐れに似た、同じような気持ちを感じると言った。こうなった時、彼は大体彼女に小言を言うか、何も言う事ができず一人で怒りを溜め込むのだった。
私はこれを聞いて彼に「今の感情を持ったまま、椅子に座っている『彼女』に自分の思いを話してみてください」と言った。
これは彼には非常に難しいことで、彼はそれをしようとするととても不快な気持ちになると言った。
なので、私は彼に『彼女』と場所を代わり、今度はマルチンが椅子に座り、自分が彼女になりきって、『マルチン』に話す様に言った。椅子に座った彼は反抗的になり、人から何か言われるのを嫌い、「あなたが私のことを大切に思っているなら、私にどうこうしろと言わずに、自由にさせてくれるはずだわ」と言った。
実際、マルチンは彼女がこのようなことを言うのを耳にしてたので、はじめて聞いたことではなかった。
私は再度椅子に向かって話すように、彼に私の隣りに来るよう指示し、彼の中の反抗的な面について聞いてみた。ゲシュタルト療法では人の心の中から現われてくる対極性や極性(polarity)に注目しており、特に自分が否定している心の一部が恋人や結婚相手などパートナーの性格にあらわれることがある。
いつも反抗的なのは彼の恋人だったので、マルチン自身、このような考えをするのに慣れていなかった。
私は、「もしあなたが自由で、どんなことでもできるとしたら、どのような『反抗的』なことをしたいですか」と聞いた。
彼は職場の上司が独裁的で厳しくいつもそれに耐えていて、上司に言い返したりしていなかったと言った。
私は、彼の「上司」を今度は椅子に座らせ、上司に言い返す様に促した。彼はこうすることにより、肩の荷が軽くなり、気分も軽やかになった。
私たちは他のシナリオでもこれを何回か試し、毎回、彼は「反抗的」なことを相手に言い、それによって心の重荷が解消された。彼は今まで、いわゆる「いい子ちゃん」を演じていたのだ。
このセッションを通して、彼は自信を得ることができ、弱者の立場だった自分が強くなったと感じることができた。
これは全体的なセラピーの一部でしかないが、自分の心を相手に投影することにより、負のエネルギーが移動し、私たちはよりバランスの取れ生き生きとした人生を歩ことができる。それはまさしくゲシュタルト心理学の目的でもあるのだ。

2015年10月26日月曜日

Case #51 - 幽霊と向き合う

リアンは自分がいつもびくびくしていることを話した。彼女はゴキブリが怖かったし、ちょっとした音でもびっくりしてしまい、夜には窓からどろぼうが入ってきたり、おばけや「化けもの」がこわく、なかなか寝付けなかった。また、船に乗る時も何か化け物のようなものがいるのでは、と恐れていた。
彼女はちゃんとした大人だったが、この話は大分子供染みたものだった。そこで、わたしは彼女が子供のころ、このような恐れを引き起こす何かが起きたのでは、と尋ねてみた。
彼女はすぐに6歳の頃に起こった出来事を話してくれた。彼女のとても仲の良い男の子の友達がおぼれて死んでしまったのだった。彼が発見されたのは亡くなってから数時間後で、彼がリアンの家に連れてこられた時、男の子の両親は医者であるリアンの父親に息子を助けてほしいとお願いしたが、生き返らせることはできなかった。
その夜は嵐で彼女はとても怯えながら眠りについた。そして、その友達を自分が救うという使命を与えられていたが救うことができなかった、という悪夢をみた。彼女はその後、大人になっていっても彼のことをよく考えることがあり、まだ大きな悲しみを持っていた。この話を聞いて、私は彼女の恐れている「お化け」が何なのか、見えてきた。
そこで恐れを面と向かって直面しないといけないが、この恐怖を解決するためには必要なある「実験」を提案した。それは今の心の波の勢いと強烈な恐怖、そしてせっかくあるこの機会を用いて恐怖と面と向かって対決し、今この時に解決するということだった。
私は自分が彼女の隣りに立ち、一緒に空いている窓を面して、グループの参加者たちには彼女を支えるため彼女の後ろに立つ様お願いした。そして、彼女には子供の頃亡くなった友達の幽霊を今この部屋に呼んでもらう、というものだった。
彼女は言われた通りにしたが、葉っぱが揺れ動くようにふるえていた。私は彼女を自分に寄りかからせ、彼女に手を回し強く支えながら、グループの参加者もすぐ後ろで支えてくれているのを確認した。そして彼女に「幽霊」へ話しかけるよう促し、友達の幽霊に自分がどのような心境にあったか、彼が亡くなってどんなに辛かったか、どんなにか彼に会いたかったかを話す様伝えた。
彼女は私に言われた通りにしたが、しんどそうだった。「私はそっちの世界で、あなたと一緒にいたい」と彼女は言った。私が友達の幽霊がどのように答えたかを聞くと、彼はリアンにそうはして欲しく無い、と答えたと言った。彼女は自分のなかで死を望んでいて、友達と一緒にいたいという気持ちはあったが、幽霊からまだ生きていて欲しいということを聞くのは大切なことであった。そのため、私はもっと友達と話す様に促し、彼に彼女の本当の気持ちを全て話し、彼の答えに耳を傾ける様に言った。
恐怖と深い悲しみの中を通っている時、彼女は始終私の支えを必要としていた。私は彼女にお腹から足へとゆっくり深呼吸する様に言った。
クライアントが今体験していることを感じ取り、激しい感情に圧倒されてしまわないように、ゲシュタルト法では呼吸法を用い、自分の立ち位置をしっかり持つことをクライアントに教えている。子供の頃は特に、このような心理療法は難しいし、誰も教えてくれなかったので、以前は圧倒されてしまった出来事をこうして現在になって消化することができたのだ。
彼女は30年間ずっと恐怖を持って生きていて、いつも息が浅く、浅い呼吸をする度に今までの恐怖を思い出していたのでこのように深呼吸をするのは難しく、私は彼女に呼吸方法を教え、励ましてあげないといけなかった。
しばらくしてから、彼女はとても落ち着いた表情になり、幽霊を解放することができ、もとの自分にもどることができた。そして、自分の体と魂が一致しているのを感じ、今までの恐怖が全て過ぎ去ったのを感じることができた。

2015年10月18日日曜日

Case #50 - 物へ語りかけることと感情表現の励まし

マークは自分の生活の中でのいくつかの課題をあげたが、どれも彼を特に影響しているような強い印象のものはなかった。彼の職はいま過渡期で、以前は父のところで働いていたが、今はそれをやめたばかりだった。彼はいくつかのビジネスを持っていたが、どれもあまり良い稼ぎにはならなかった。マークは今年結婚3年目を迎え、子供が欲しかった。私は彼が物事をすらすらと語る様など、彼の話を一つ一つ聞きながら、それぞれ気づいたことや自分の思うことを話した。
彼は特に「問題」という問題は無いようだったので、私は彼の結婚生活に関して質問した。彼は妻との結婚に満足していて、幸せだと答えた。
大体の場合、これは良い心の状態を示すが、私は具体的にこの「幸せな結婚」がどのようなものであるかを知りたかった。ゲシュタルト法ではコンタクト(ものごとの繋がり)を探ろうとするため、いつも漠然としたものではなく、具体的なものを探っていくようにしている。マークはこの質問にすぐ答えられなかった。私が彼の感情や気持ちについて問うと、彼はまたもや具体的に話すことができなかった。なので、マークは具体的にものごとを表現し、向き合うことができていないために、自分の気持ちを正直に見つめることができていないのでは、と思った。
そこで私はある「実験」を提案した。それはグループの一人一人を見て回り、彼がそれぞれの人を見るときにどのように相手に対して感じるかを考える、というものだった。
「実験」をやってみて、彼は私にちゃんとそれぞれの人を見て自分がどのように感じたかを明確に伝えることができた。マークが人間関係の中で自分がどのような立ち位置にいるのかを理解するキャパシティーがあるのは明らかだったので、恐らく彼はただ誰かの励ましが必要だったのだ。私がそれを言うと、彼も同意した。
次は彼にグループの参加者に「あなたを見るとき、私は(こう)感じる」と具体的に感情表現をするように言った。これはとても簡単なことのように思えるが、彼は自分の気持ちを理解するのが苦手だったので、このように簡単にできる事からはじめるのは大事だった。私が彼に投げかけたこの「実験」は人々を見て、どのように感じるかということをもとにそれを直接その人に伝えるものだった。ゲシュタルト法ではいつも人との関係に結びつくように促して行く。
彼は何人かの人へ語りかけ、毎回はっきりと自分の思っていることを伝えることができた。先ほど言ったように、これを見る限り彼は自分の気持ちを表現することはできていて、ただまわりのサポートが必要なだけだった。
次に私はクッションを持って来て、それを彼の妻に見立て、彼に同じように「きみの中に(このような性質)を見るとき、ぼくは(このように)感じる」と語りかけるよう促した。
彼は毎回はっきりと「妻」に自分の気持ちを話すことができた。私はこれを見ながら彼を励まし、彼は確かに人へ自分の気持ちを伝えることができるのだ、ということを伝えた。私は、彼はただ、人からの反応を恐れずに練習できる環境が必要なのだと言い、彼もそれに同意した。次に、彼に自分の父親へも同じように語りかける様促した。
彼は誰かの励ましさえあればこのように自分の気持ちをはっきり伝えることができるのだ、と私は言い、またクッションに話しかける様促した。まずは妻へ話かけ、その次に父親へ、「あなたが(これを)するとき、ぼくは(こう)感じるので、(このように)あなたの助けを必要としている」と。
こうすることにより、彼は具体的に自分の気持ちを表現することができ、最後には気持ちがとても落ち着いたことを教えてくれた。
この実験は適応認知行動学の良い例であり、感情、人とのつながり、信頼性と励ましを全て適用しているものだ。これらはゲシュタルト法での重要な要素であり、このように誰かに物事を順位をおって教えて行くようなセッションはとても大切である。
必要に応じて、このような方法をゲシュタルト心理学で用いていくことは可能である。大切なのは、ある一定の方法ではなく、クライアントがその時々にどのようなプロレスを必要としているかを見極め、用いることだ。

2015年10月13日火曜日

Case #49 - 硬くなった人形と柔らかい手

アナベルは深い悲しみのうちにいた。彼女は木でできた硬い腕のある人形を持って来ていた。「これは私なの」そう言い、彼女は「私の腕はゾンビのように硬直していて、私の心は沈んでいるの」と付け加えた。
彼女は子供のころ、両親がいつもひどい喧嘩をしていて、そのことにより彼女の心は硬くなってしまい、心に恐れが残ってしまったことをうちあけた。大人になると自分がきつい人間であると感じ、もっと女性らしくやわらかい人間になりたいと思ったが、この人形のように「硬い」ままだった。
私が彼女の言葉に深く耳を傾けていくうちに、だんだん彼女の心情が理解できてきた。彼女は確かに、深い悲しみの中にいたのだ。
同時に私の中でおかしな、それも少し冷笑的とも言える考えがうかんだ。それはゾンビがアニメか何かで出てくる様に面白おかしく歩き回っているものだった。
なので私は彼女との深い心のつながりがあること、そして彼女のことをとても気にかけていることを話し、その後に自分の脳裏にうかんだおかしなゾンビのことを話した。私は彼女に嫌な思いをさせたくなかったが、このこともシェアしておきたかった。
彼女は快く耳を傾けてくれた。私は二人でゾンビになってみようか、と提案した。そこで、私たちは立って、二人で並びながら一緒にゾンビのように歩き回った。グループの皆に向かって歩きはじめたら、多くの人はこのおかしな様に笑っていたが、ある人達は怖がっていたので、その人達は回避してあるいた。それでもこの体験は皆にとっておかしく愉快なものであった。
アナベルがすわり、私も彼女を面して向かい側にすわり、彼女がこの体験を通してどう感じたかを観察してみた。
この体験は彼女の心をやわらかくし、彼女の心を開いてくれたようだった。彼女は自分の人形の腕を触りながらどんなにかそれが硬いかを言っていた。。。でも、腕をよくなでてあげたらそれが柔らかくなっていくかもしれない、ということも。
そこで私は彼女からヒントを得、彼女の腕を手にとり、柔らかくなでてあげた。彼女は小さい子供が誰かにすがるように、私の腕を両手でつかみとった。彼女がこの体験をどう感じているか見たところ、彼女がだんだんとおだやかになっていくのが目に見えた。私は彼女の腕をこすり続けながら、自分の心をやわらげ、おだやかになることについて話した。彼女の手からは強いエネルギーを感じ取った。彼女は自分の腕がだいぶやわらいだ、と言ったので、今度は私が手のひらを上にして両手をひざにおき、彼女にわたしの手をなでるように言った。彼女が私の手を何度もこすっている際に、私は彼女の手から強いエネルギーを感じ取ることを伝えた。彼女は自分の心と気持ちに心から向き合うことができ、その過程をあゆんでいる最中もどのような心の変化が起きたかを教えてくれた。
「あなたの手は私の両親をそれぞれ示しているの。離れているけど、二人とも存在している」と彼女はいった。彼女はそれぞれの手に愛をもって触れ、また悲しみのある目でみつめた。そして人形をとり、人形の顔をわたしの指一本一本に触れさせた。また人形の両腕をとり、片方は私の左手に、もう片方は私の右手につけた。
彼女は「私の両親はそれぞれ別々に生きているけど、私はどちらとも繋がっている事ができる」と言った。
これは彼女が大きな変化を遂げた瞬間だった。彼女の悲しみは意気消沈して行き詰まったものから、心が開き、なだらかなものへと変わっていった。彼女の硬かった腕は今はリラックスしていて、彼女の体の様々な部分は息をし、今現在に存在していて、外の世界とつながっていた。
これは彼女にも、私にとっても、とても重要な体験であり、この体験をしてから彼女は深い平安と心のなかの一致を感じることができた。

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