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2015年10月18日日曜日

Case #50 - 物へ語りかけることと感情表現の励まし

マークは自分の生活の中でのいくつかの課題をあげたが、どれも彼を特に影響しているような強い印象のものはなかった。彼の職はいま過渡期で、以前は父のところで働いていたが、今はそれをやめたばかりだった。彼はいくつかのビジネスを持っていたが、どれもあまり良い稼ぎにはならなかった。マークは今年結婚3年目を迎え、子供が欲しかった。私は彼が物事をすらすらと語る様など、彼の話を一つ一つ聞きながら、それぞれ気づいたことや自分の思うことを話した。
彼は特に「問題」という問題は無いようだったので、私は彼の結婚生活に関して質問した。彼は妻との結婚に満足していて、幸せだと答えた。
大体の場合、これは良い心の状態を示すが、私は具体的にこの「幸せな結婚」がどのようなものであるかを知りたかった。ゲシュタルト法ではコンタクト(ものごとの繋がり)を探ろうとするため、いつも漠然としたものではなく、具体的なものを探っていくようにしている。マークはこの質問にすぐ答えられなかった。私が彼の感情や気持ちについて問うと、彼はまたもや具体的に話すことができなかった。なので、マークは具体的にものごとを表現し、向き合うことができていないために、自分の気持ちを正直に見つめることができていないのでは、と思った。
そこで私はある「実験」を提案した。それはグループの一人一人を見て回り、彼がそれぞれの人を見るときにどのように相手に対して感じるかを考える、というものだった。
「実験」をやってみて、彼は私にちゃんとそれぞれの人を見て自分がどのように感じたかを明確に伝えることができた。マークが人間関係の中で自分がどのような立ち位置にいるのかを理解するキャパシティーがあるのは明らかだったので、恐らく彼はただ誰かの励ましが必要だったのだ。私がそれを言うと、彼も同意した。
次は彼にグループの参加者に「あなたを見るとき、私は(こう)感じる」と具体的に感情表現をするように言った。これはとても簡単なことのように思えるが、彼は自分の気持ちを理解するのが苦手だったので、このように簡単にできる事からはじめるのは大事だった。私が彼に投げかけたこの「実験」は人々を見て、どのように感じるかということをもとにそれを直接その人に伝えるものだった。ゲシュタルト法ではいつも人との関係に結びつくように促して行く。
彼は何人かの人へ語りかけ、毎回はっきりと自分の思っていることを伝えることができた。先ほど言ったように、これを見る限り彼は自分の気持ちを表現することはできていて、ただまわりのサポートが必要なだけだった。
次に私はクッションを持って来て、それを彼の妻に見立て、彼に同じように「きみの中に(このような性質)を見るとき、ぼくは(このように)感じる」と語りかけるよう促した。
彼は毎回はっきりと「妻」に自分の気持ちを話すことができた。私はこれを見ながら彼を励まし、彼は確かに人へ自分の気持ちを伝えることができるのだ、ということを伝えた。私は、彼はただ、人からの反応を恐れずに練習できる環境が必要なのだと言い、彼もそれに同意した。次に、彼に自分の父親へも同じように語りかける様促した。
彼は誰かの励ましさえあればこのように自分の気持ちをはっきり伝えることができるのだ、と私は言い、またクッションに話しかける様促した。まずは妻へ話かけ、その次に父親へ、「あなたが(これを)するとき、ぼくは(こう)感じるので、(このように)あなたの助けを必要としている」と。
こうすることにより、彼は具体的に自分の気持ちを表現することができ、最後には気持ちがとても落ち着いたことを教えてくれた。
この実験は適応認知行動学の良い例であり、感情、人とのつながり、信頼性と励ましを全て適用しているものだ。これらはゲシュタルト法での重要な要素であり、このように誰かに物事を順位をおって教えて行くようなセッションはとても大切である。
必要に応じて、このような方法をゲシュタルト心理学で用いていくことは可能である。大切なのは、ある一定の方法ではなく、クライアントがその時々にどのようなプロレスを必要としているかを見極め、用いることだ。

2015年10月13日火曜日

Case #49 - 硬くなった人形と柔らかい手

アナベルは深い悲しみのうちにいた。彼女は木でできた硬い腕のある人形を持って来ていた。「これは私なの」そう言い、彼女は「私の腕はゾンビのように硬直していて、私の心は沈んでいるの」と付け加えた。
彼女は子供のころ、両親がいつもひどい喧嘩をしていて、そのことにより彼女の心は硬くなってしまい、心に恐れが残ってしまったことをうちあけた。大人になると自分がきつい人間であると感じ、もっと女性らしくやわらかい人間になりたいと思ったが、この人形のように「硬い」ままだった。
私が彼女の言葉に深く耳を傾けていくうちに、だんだん彼女の心情が理解できてきた。彼女は確かに、深い悲しみの中にいたのだ。
同時に私の中でおかしな、それも少し冷笑的とも言える考えがうかんだ。それはゾンビがアニメか何かで出てくる様に面白おかしく歩き回っているものだった。
なので私は彼女との深い心のつながりがあること、そして彼女のことをとても気にかけていることを話し、その後に自分の脳裏にうかんだおかしなゾンビのことを話した。私は彼女に嫌な思いをさせたくなかったが、このこともシェアしておきたかった。
彼女は快く耳を傾けてくれた。私は二人でゾンビになってみようか、と提案した。そこで、私たちは立って、二人で並びながら一緒にゾンビのように歩き回った。グループの皆に向かって歩きはじめたら、多くの人はこのおかしな様に笑っていたが、ある人達は怖がっていたので、その人達は回避してあるいた。それでもこの体験は皆にとっておかしく愉快なものであった。
アナベルがすわり、私も彼女を面して向かい側にすわり、彼女がこの体験を通してどう感じたかを観察してみた。
この体験は彼女の心をやわらかくし、彼女の心を開いてくれたようだった。彼女は自分の人形の腕を触りながらどんなにかそれが硬いかを言っていた。。。でも、腕をよくなでてあげたらそれが柔らかくなっていくかもしれない、ということも。
そこで私は彼女からヒントを得、彼女の腕を手にとり、柔らかくなでてあげた。彼女は小さい子供が誰かにすがるように、私の腕を両手でつかみとった。彼女がこの体験をどう感じているか見たところ、彼女がだんだんとおだやかになっていくのが目に見えた。私は彼女の腕をこすり続けながら、自分の心をやわらげ、おだやかになることについて話した。彼女の手からは強いエネルギーを感じ取った。彼女は自分の腕がだいぶやわらいだ、と言ったので、今度は私が手のひらを上にして両手をひざにおき、彼女にわたしの手をなでるように言った。彼女が私の手を何度もこすっている際に、私は彼女の手から強いエネルギーを感じ取ることを伝えた。彼女は自分の心と気持ちに心から向き合うことができ、その過程をあゆんでいる最中もどのような心の変化が起きたかを教えてくれた。
「あなたの手は私の両親をそれぞれ示しているの。離れているけど、二人とも存在している」と彼女はいった。彼女はそれぞれの手に愛をもって触れ、また悲しみのある目でみつめた。そして人形をとり、人形の顔をわたしの指一本一本に触れさせた。また人形の両腕をとり、片方は私の左手に、もう片方は私の右手につけた。
彼女は「私の両親はそれぞれ別々に生きているけど、私はどちらとも繋がっている事ができる」と言った。
これは彼女が大きな変化を遂げた瞬間だった。彼女の悲しみは意気消沈して行き詰まったものから、心が開き、なだらかなものへと変わっていった。彼女の硬かった腕は今はリラックスしていて、彼女の体の様々な部分は息をし、今現在に存在していて、外の世界とつながっていた。
これは彼女にも、私にとっても、とても重要な体験であり、この体験をしてから彼女は深い平安と心のなかの一致を感じることができた。

2015年10月4日日曜日

Case #48 - 「魔女」とお金と病

ソンリはここ1年ずっと健康を害していた。何回か手術をしていたが、身体的な治療はあまり効かなく、一旦は良くなったがまた症状が悪化してしまった。そのため、心理学的なものでは無いかと思い、様々な精神療法を受けてみた。彼女は色々な精神療法を既に受けていたので、私はそれらをもう一度繰り返すことのないよう注意し、彼女がすでにどのような精神療法を受けていたか尋ねた。一つの問題に対し、色々な療法を試みるのはよくないことで、このような問題に対しては専門家による慎重な判断が必要となってくる。
医者に行く時にセカンドオピニオン(他の医者の意見)をもらうのはいいかもしれないが、4−5人の医者をはしごしても、訳が分からなくなるだけで逆に混乱してしまう。一つの問題に対し一人のセラピストに診てもらうことで、その問題を深く取り扱うことができるが、色々なセラピストに行き「よりよい買い物」をしようとするのは逆効果になってしまうことが多い。そのため、私はソンリの問題を即座に取り扱おうとはしなかった。
私はまずどのように一年前に症状が出て来たのかを尋ねた。彼女は、中国で故人を追悼するために焼かれている「紙幣」を5年前になくなった父を憶えるために購入していたと話してくれた。
彼女がその紙幣を買いに行ったある日、「魔女」(彼女がその女性を表現するため使っていた言葉)が彼女に話かけ、「あまり買いすぎると病気になるわよ」と注意したと言った。そのため彼女はすぐにその紙幣を返品しようとしたが、店は返品を受け付けてくれなかった。その事件が起きてすぐに彼女は病気にかかった。
私はソンリの父親との関係がどのようなものだったかを尋ねた。彼女は父とはとても仲良く、父は自分のことを大切に育ててくれ、今でも毎日父親のことを考え、自分の息子を見たりする時など、生活の様々な面で父のことを思い出す、と言った。
これを聞く限り5年も経っているのにこんなにも父親にフォーカスをおいているのは何か心の中で解決していないことを意味するのでは、と思ったので彼女にどれほどの頻度で父のことを考えているのかを聞いてみた。
彼女はその質問にはっきりとした答えを出すことが出来ず、父に対して良い感情があるということ以外は、父のことを考えている時どう感じるかも言うことができなかった。
彼女の父に対しての感情はこれからのセッションで探って行くことができるかもしれないが、今はその問題を無理矢理こじ開けようとはせず、彼女が今感じていることを受け止めることが大切だった。このようにしてゲシュタルト法では「抵抗」しているものを無理矢理探っていくことはしないのです。
そのため私はしばらくの間彼女が言ったことを頭の中で反芻していた。
私は「紙幣」と「魔女」と(少しばかり)執拗的な父への想いなど、既に彼女がもっているものを使っていきたかった。
そこで私は今のゲシュタルト法に基づく実験をしてもらうため、彼女に一つの宿題を提案した。
彼女に1枚だけ紙幣を購入してもらうようお願いした。コンピューターには父親の写真が保存されていると言っていたので、毎日同じ時間にその紙幣からほんの少しばかり切り取り、紙幣を焼くときにコンピューターの父親の写真を出して「わたしを祝福してください」とお願いしてから、画像をとじるよう、提示した。
これはセラピーで「症状を取り扱う」と呼ばれており、ゲシュタルト法では「変容の逆説的な理論」と呼ばれるものだ。こうすることにより、今あるものとより同一になることができる。
しかし彼女はこれだけでは足りなかった。それは彼女がこの問題に対しせわしなく解決法を求めていて、あの魔女が紙幣を例えに言っていた「あまり価値のあるものを求めどん欲になるんじゃないよ」と言っていたことをそのまま示していた。
私は彼女が早く解決策を見つけたい、と感じていることを理解していたが、また次回のセッションに取り扱おうと伝えた。
彼女は病気のため有給をとっていたので、いつもどのように一日を過ごしているのかを聞いた。彼女は1日にある8時間ほどの時間で料理をしたり、休んだり、散歩に行ったりしていると行った。
彼女に友人関係での問題はあるかと聞いたところ、それは無い、と彼女は答えた。
私は彼女に父の名前で何かボランティア団体を立ち上げることを提案した。
こうすることにより父の象徴が「病、死、分離」というものから「命」と「結合」へと変わっていき、一日の中で彼女がポジティブに考え、「何かのために」生きて行く理由を与えてくれる。










2015年9月19日土曜日

Case #47 - 「終わり」は新しい始まり

私がこの夫婦に出会った時には、すでにしばらくの間夫婦の仲が悪かったことを知った。
ロンダは開口一番に「私は両親が離婚していたから、自分の家庭には絶対そんなことは無いよう心に決めていた」と言った。彼女は非常に悩んでいる様子で、夫のブライアンが肩に腕をまわそうとすると彼から離れた。
私は二人が向き合って話せるように、彼にロンダの向かい側に座る様お願いした。
その次にロンダの口から出た言葉は「もう終わりよ。もうこれ以上夫婦としてやっていけないわ。」というものだった。
ブライアンはその言葉を聞いてショックを受けた。彼は先程の言葉を今までに何回も聞いていて、ここ数ヶ月変わろうと努力をしていることをロンダに言った。彼は自分がどのように変わってきているかを話し始めたので、私は彼を止めた。ゲシュタルト法では「説明」は「今あるもの」から逃れる方法であると見なされているからだ。なので私はブライアンに、自分が今どのように感じているかをロンダに伝える様促した。私からの励ましを受けて、彼はやっと自分の気持ちを表に出すことができた。ブライアンは自分が今パニック状態に陥っていて、見放されていると感じていることを言い、更には泣き始めてしまった。
ロンダはしばらく座って聞いていたが、無反応だった。私が聞くと彼女は自分が無感情であると打ち明けてくれた。彼女は感情的に圧倒されてしまい、物事に対して「感じる」ことをやめてしまったのだ。クライアントがこのような状況にある時、必要以上のことを求めないよう気をつけなければいけない。
なので、私はブライアンともっと話すことにした。私は、今ロンダは彼と話し合う心の状態には無いことを説明し、それ以上ロンダの心をこじあけようとするのは無意味だということを話した。私はブライアンの感情を受け入れ、彼が自分の心のうちを話せる様励ました。私は彼の感情を受け止め、今彼がいる状況がどんなにか辛いものであるかを共感し、ブライアンが一番必要としているときに奥さんのロンダが心を閉じてしまったことはどんなにか辛いことであろうか、ということを話した。
するとロンダは彼を見て、涙目ながら言った。「あなたのお母さんにも前の奥さんにもこのようなことが起きて、私は絶対にあなたに辛い思いをさせたくないと思ったのに。」
それを聞くとブライアンは号泣し、無口になってしまった。私は彼に、「ほらごらん。ロンダはやっと感情を表すことができてあなたと話せる状態になってきたよ」と言い、今存在し始めた「こころのつながり」をブライアンに教えようとしたが、今は彼にそれを受けとめる余裕は無かった。
ブライアンは自分に罪悪感があること、自分が失敗してしまったということ、そしてこれからもっと頑張りたいということをロンダに言い始めた。しかし、今はロンダにはそれを受けとめる余裕もなかったので、私はブライアンを止めた。
そして私はロンダに、今ブライアンが言ったことを受け止めることができるかと尋ねた。彼女は無表情だったので、私は「今はそれらのことを受け止める余裕は無いわ」と夫に言うよう促した。これはロンダの今の心の状態を考えると正直な言葉だった。
ブライアンはロンダの言葉を聞いてとても辛そうだった。私はブライアンがロンダにそのことを伝えることができるよう、手助けをした。するとロンダは夫の目には怒りと憤りと悲しみがあると言ったので、わたしは彼にそれらの感情ひとつひとつが彼にとってどのようなものかを妻に伝える様言った。
彼女はブライアンの話に耳を傾けたが途中で「これ以上続けないで。あなたがこういう話をするのはとても辛いのが分かっているから、聞いていて自分が悪者のように感じるわ」と言った。
それを聞くとブライアンは心を閉ざしてしまい、完全に殻に閉じこもってしまった。私は彼に今ロンダの状況を受け止めることはできないと言う様に促したが、それさえもブライアンには難しそうだった。なので私はロンダに、私に話しをするように言った。これはカップルセラピーの手段の一つで、もし一人が話しをできる状態にいない場合、その人はただ見て聞いているだけで良いようにカウンセラーがもう一人の話を聞くということだ。ロンダは夫が今の状況(離婚したいということ)を受け入れることができるまで、しばらく待とうと思う、と言った。ブライアンは彼女を愛していて、そう簡単には諦めないと思ったので、彼は絶対にそれは受け入れないだろう、と私は言った。これを聞いてロンダは少しショックを受けたようだった。
なので私はロンダの気持ちや想いをもっと探ることにした。そうしているうちに、ブライアンも話せる状態になったので、ロンダは彼に対してとても申し訳なく思っており、罪悪感があることを言った。ブライアンとロンダは一緒に泣き、ブライアンは彼女に近づこうとしたが、ロンダはそれを拒否し、距離を置いたままにするよう、言った。このことに関して私が探ると、ロンダはもう夫への愛が無いということを言った。しかし私は、それは「愛」というものを感情として捕らえてしまう間違った考えから来ていると言い、変わりに今の想いを言葉にして伝えるよう言った。するとロンダは「私は自分の心を閉ざしてしまったわ」と言った。
ロンダの言葉は意思と決断力を示し、これからの行動や決意へつながっていくものだったが、今はそれらを取り扱う時ではなかった。ただ、この言葉を受け止めることが大切だった。
そこで私はブライアンに今のロンダの言葉を確かに聞いたことを彼女に伝え、また彼女に自分の気持ちを伝える様に言った。彼がそうすると二人とも泣き出した。
すると、急に何かが変わり、絶対無理だと思われる状況で、二人は何とかしてお互い共感できるものを見つけたのだ。二人ともこの情況の中で圧倒されてしまっていたが、私の支えもあり、この失意と悲しみの中で関係を保ち続けることができたのだ。
最終的な結果は私には分からないが、ゲシュタルトでのフォーカスはこのように(二人には今までなかった)人間関係の基盤となる共感点を見つけることだ。


2015年9月2日水曜日

Case #46 - ウジ虫の悪夢

フェリシティは最近見る悪夢について話した。ゲシュタルト法では通常、夢の開示はしないが、大体の悪夢は自分の中の攻撃性を示している。夢というものは、それを見ている人の性格と関連していると考えると、悪夢というものは自分の中の攻撃性を示していることになる
フェリシティは、それぞれ場面は違ったが、何度も同じような悪夢を繰り返し見ていた。大体はこういう夢だった。
彼女は地下室にいて蛆(うじ)を生育していた。蛆は何百匹、何千匹といた。そして、次のシーンでは彼女は蛆を吐いていた。彼女の体は蛆でいっぱいで、ただ一匹を残し全て吐いていた。
さて、この夢を聞く限り、一日中過ごせるほど様々な解釈があるであろう。一番簡単な解釈だと、地下室は心の底にあるものを示していて、蛆はその人の中にある何か「腐った」ものを示している、と言えるであろう。
しかし、ゲシュタルト法ではここまで深く探らない。ただ、その人の体験をそのまま受け取り、その体験がその人にとってどのような意味を示しているかを分かることができるよう、探っていくのである。
私はフェリシティにそれぞれのシーンで出てくる蛆に対してどう感じるかを話すよう促した。彼女は蛆である自分は太っていて、なまけもので、何も出来ない自分を示していると言った。
そして、彼女の体の中に残っていた一匹の蛆は外に出てきたいのだ、ということも言った。
次に私たちは蛆になったつもりで、歩き回った。
私は、「みんなそれぞれ自分の心の中に、他の人に見せたく無い『蛆』がいるのだよ」と彼女に伝えた。
私は具体的な例を挙げて、自分の中にいる蛆について彼女に話した。
このように取り扱いが非常に難しい問題は、セラピストがリードしてあげることが大切だ。
彼女は初めは自分の中にそのような「蛆」が住んでいることを認めたくなかった。彼女はあひる口をして、しょげた顔をしてみた。彼女の表情はまるで、自分は何も隠していない純粋な少女よ、という表情だったので、私はその表情をそっくり返してみせた。そして、「それは心に『蛆』がいる人が見せる表情では無いですよ」と言った。私がこう言ったことにより、彼女は自分が心の問題を認めていないことを自覚しはじめ、自分に正直になることの大切さを感じはじめた。彼女は自分の「蛆」についていくつか例をあげたので、私はそれらが彼女にとってどれほど辛いものであるか、共感を示した。しかし彼女はまた先ほどの「私は何も悪いことはしてません」という顔をしたので、私は今の表情は、彼女がさきほど打ち明けてくれたことを卑下している、と言った。
こうすることにより、私は彼女が自分の問題と直面することを促すことができた。ゲシュタルト法は、いつも「今、私は誰なのか」という『現在』にフォーカスしている。
私はグループの中にいる他の人にも自分の中の「蛆」について話してもらう様お願いしたので、フェリシティは心の闇を持っているのは自分だけでは無いということを理解することができた。また、こうすることにより、皆が自分の心の奥底を打ち明け、お互いの仲が深まり、楽しくセラピーをすることができた。



2015年8月10日月曜日

Case #45 - 不幸な人生

ベティーは自分の中にある不安について話をしたがった。しかし自分でもその不安がどこからきているのか、あるいは何に関係しているのかがわからなかった。
私は彼女の「不安」を探る前に、彼女のことをもっと知りたかった。そこで、彼女の子供や、結婚、仕事について質問をした。彼女は20年ずっと働いていた仕事を最近やめたため、今は彼女にとって過渡期であった。彼女は安定した家庭を築いており、娘は美人で有能であり、夫は彼女のことを愛していた。
しかし、彼女は幸せそうではなかった。私が彼女に、「今幸せですか?」と聞くと、彼女は「いいえ」と答えた。まわりの人は、彼女は理想の家庭を築いており、ばら色の人生を歩んでいると思っていた。私は彼女に何が不満なのか、と問うと彼女は自分が愛しているよりも夫が自分のことを愛してくれている、と答えた。「夫は良い人だけど、私たちはお見合い結婚で彼は私のタイプでは無いの」と言った。彼女のタイプがどういう男性かと聞くと、意思が強く、人生で明確なビジョンを描いており、センスがある人と答えた。夫はそれのどれにも当てはまらない、ということも。
私はこれを聞いてあっけにとられ、しばらく今聞いたことをプロセスする時間が必要だった。彼女は素晴らしい人生を歩んでいるのに、何かが欠けていた。私がもう一度彼女の目を見ると、彼女の目は彼女の不幸を語っていた。私が彼女に年齢を聞くと、彼女は44、と答えた。彼女に「これからの44年、あなたはだんなさんとずっと一緒にいれますか」と聞くと、「はい」と彼女は答えた。なので、これだけははっきりすることができた。彼女は、夫のそばにいるという決断を既に心の中で決めていたのだ。
しかしそこには基礎的な人間関係の繋がりが欠けており、情熱やつながり、一体感、というものが欠けていた。彼女はうわべだけの幸せを選んだ故、どこか心の奥底で満たされないものがあった。
ゲシュタルト法では、「選択肢」というものにフォーカスをおいており、すでにクライアントが持っている選択肢を探る様にしている。人生では様々な出来事が起きるが、その中でも私たちは色々な選択肢がある。私たちが「捕らわれている」と感じるのは、外面的な要素からくるものでは無く、私たちが自分に選択権があるということを忘れてしまうからだ。
また、「選択」というものには「結果」もつきものであるが、良い人生というのは物事を他人のせいにしたり、現実逃避するのではなく、自分が選んだことに対し責任を持つものである。
ベティが直面している状況はまさにこの通りだった。彼女の目の前にある選択肢ははっきりと見えており、またそれによる結果も見えていた。彼女は悲劇のヒロインのように嘆いていたが、このまま不幸なままでいたくなければ、何かを変えなければいけなかった。彼女は、今の現状を維持しつつ、自分で物事を選択する権利をも持っていた。私はしばらくの間、彼女の嘆きに共鳴し、彼女の現状を受け入れる時を持った。これは心のつながりの空間を築く上でとても大事なものだった。それは、変化を求めず、課題も与えず、ただそこにいて、その人の今の現状を理解し受け入れるものだった。この方法は「わたしとあなた」(I-Thou)とも呼ぶことができる。
少し経ってから、私は未来を予測し、仮定を生み出す質問をした。はじめから、この「仮定」のプロセスをふんでしまうと、回答の無い問いばかりになってしまう。しかし、少しばかり今の心の状態の中にとどまることで、これからの選択肢や他の見方を見つけることができる。
「ご主人はあなたが私に教えてくれたような心の状態をご存知ですか」と私が聞くと、主人には言っていない、と彼女は答えた。なので、私は自分の経験から相手が自分の嘆きに関し心を開いてくれた時のことを話した。ベティの主人は彼女を愛していたので、恐らくこの会話は何かを変えることができるだろう、と思った。わたしは彼が彼女の「タイプ」になることは不可能だが、もし彼が本当に望んでいるのなら、ベティの理想の男性に近づくため努力をしてくれるだろう、と言った。そのためにはまず彼女から、自分自身の気持ちや必要を伝えることが大切である。ここでチャレンジングなのは、それを良い結果をまねく方法で伝えることだ。
私はベティにまず、ご主人に彼女の目を10分間、会話無しでみつめてもらい、彼女の嘆きを伝えるように言った。そうしてから、彼女はご主人にどのように変わって欲しいか、少しずつ伝えるのだ。
しかし、これは彼女の不幸を変えてくれる解決策では無かった。実際、彼女は必要としているものが満たされない状態にいたので、私はベティに自分の創造性を活かすことをしたり、スピリチュアルなことをしてみるよう言った。こうすることで、彼女は外面からでなく、心の内から幸福を見出すことができるだろうからだ。
このような提案はゲシュタルト法では推薦されていないが、人がある特定の場所で心の時空が止まっている時、それを動かすためには心に喜びを与えるものをするべきだからだ。そして、その喜びを見つけることによって実際に心が解放されていくからである。



2015年8月4日火曜日

Case #44 - 「繭」を通しての再生

ニコールは明らかに悩んでいた。彼女はこの間見た夢のことを私に話してくれた。夢で、彼女は自分が繭の中にいるようで、外に出たいけど、外に出ることによって自分は変態するのか、それとも死んでしまうのか、どちらか分からなくて怖かった、という夢だった。
私は彼女の使った「繭」というイメージをセラピーに用いることにした。セラピーでは必ずしも、クライアントのバックグラウンドを全部把握していなくても、クライアントが話している比喩を用いて、それを土台に話をすすめていくこともできる。この場合、明らかに「繭」という比喩では変化を望んでいるが、変化を恐れている、というのを見ることができた。ゲシュタルト法では、これを「安全脱出法」と呼んでいる。それは、クライアントが望んでいる自分へ変わって行くことを安全な環境で促すものだからだ。
そこで、私はグループの中から6人選び、「繭」として彼女を囲む様お願いした。ニコールはすぐに、前よりも激しく泣き出し、地面にしゃがみこんでしまった。私は周りの人々に彼女を囲んで座る様、お願いした。私は彼女に、自分の世界に引っ込んでしまわずに、まわりの人々とアイコンタクトをとるよう伝えた。そうしないと、自分の世界へ入ってしまい、外の世界にいる人々と人間関係を持つ事をしなくなってしまうからだ。そうなった場合、その人の感情はただ自分の心の中でぐるぐるとまわり、実際には進歩しないからだ。
彼女が言われた通りにすると、一人の女性を見て「あなたのことは嫌いよ」と言った。しかし、これはその女性に向けて言われたわけではなくて、その女性がニコールの母親を思い出させるような人だったからだ。なので、私はニコールにその女性に話し、言いたいことを全部言うよう伝えた。
「どうして私を捨てたの」と彼女は聞いた。ゲシュタルト法では「なぜ」の質問系はあまりに役に立たないと見なされているので、私はそれを質問ではない文章に変えて言う様促した。
すると、彼女の心の痛みが引き出されてきて、子供の頃、母親に捨てられたことを語り始めた。はじめに供述したように、私は細かいことを色々聞かなくても、彼女の心を解放することができた。彼女はその時、変化のプロセスを歩んでおり、それで十分彼女は解放されることが出来た。
私は、彼女がこの心の変化に直面し、人々とアイコンタクトを取り続け、深呼吸をするために彼女を支えていた。彼女も、彼女の「母親」役の女性も、とても感情的になっていた。
数人の人で作られたサポートサークルは、彼女が自分の心に押しつぶされている状態にあって、彼女を優しく包み込んでくれる存在として、大切だった。
とうとう彼女は疲れて、横になりたいと言った。
私はニコールを「母親」役の女性の膝の上で寝かせ、しばらく休ませた。
ニコールが10分後に起きると、彼女は生き返った感じがし、以前はむなしさと痛みがあった自分の心に繋がりを感じることができ、暖かさも感じることができた。

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