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2015年9月19日土曜日

Case #47 - 「終わり」は新しい始まり

私がこの夫婦に出会った時には、すでにしばらくの間夫婦の仲が悪かったことを知った。
ロンダは開口一番に「私は両親が離婚していたから、自分の家庭には絶対そんなことは無いよう心に決めていた」と言った。彼女は非常に悩んでいる様子で、夫のブライアンが肩に腕をまわそうとすると彼から離れた。
私は二人が向き合って話せるように、彼にロンダの向かい側に座る様お願いした。
その次にロンダの口から出た言葉は「もう終わりよ。もうこれ以上夫婦としてやっていけないわ。」というものだった。
ブライアンはその言葉を聞いてショックを受けた。彼は先程の言葉を今までに何回も聞いていて、ここ数ヶ月変わろうと努力をしていることをロンダに言った。彼は自分がどのように変わってきているかを話し始めたので、私は彼を止めた。ゲシュタルト法では「説明」は「今あるもの」から逃れる方法であると見なされているからだ。なので私はブライアンに、自分が今どのように感じているかをロンダに伝える様促した。私からの励ましを受けて、彼はやっと自分の気持ちを表に出すことができた。ブライアンは自分が今パニック状態に陥っていて、見放されていると感じていることを言い、更には泣き始めてしまった。
ロンダはしばらく座って聞いていたが、無反応だった。私が聞くと彼女は自分が無感情であると打ち明けてくれた。彼女は感情的に圧倒されてしまい、物事に対して「感じる」ことをやめてしまったのだ。クライアントがこのような状況にある時、必要以上のことを求めないよう気をつけなければいけない。
なので、私はブライアンともっと話すことにした。私は、今ロンダは彼と話し合う心の状態には無いことを説明し、それ以上ロンダの心をこじあけようとするのは無意味だということを話した。私はブライアンの感情を受け入れ、彼が自分の心のうちを話せる様励ました。私は彼の感情を受け止め、今彼がいる状況がどんなにか辛いものであるかを共感し、ブライアンが一番必要としているときに奥さんのロンダが心を閉じてしまったことはどんなにか辛いことであろうか、ということを話した。
するとロンダは彼を見て、涙目ながら言った。「あなたのお母さんにも前の奥さんにもこのようなことが起きて、私は絶対にあなたに辛い思いをさせたくないと思ったのに。」
それを聞くとブライアンは号泣し、無口になってしまった。私は彼に、「ほらごらん。ロンダはやっと感情を表すことができてあなたと話せる状態になってきたよ」と言い、今存在し始めた「こころのつながり」をブライアンに教えようとしたが、今は彼にそれを受けとめる余裕は無かった。
ブライアンは自分に罪悪感があること、自分が失敗してしまったということ、そしてこれからもっと頑張りたいということをロンダに言い始めた。しかし、今はロンダにはそれを受けとめる余裕もなかったので、私はブライアンを止めた。
そして私はロンダに、今ブライアンが言ったことを受け止めることができるかと尋ねた。彼女は無表情だったので、私は「今はそれらのことを受け止める余裕は無いわ」と夫に言うよう促した。これはロンダの今の心の状態を考えると正直な言葉だった。
ブライアンはロンダの言葉を聞いてとても辛そうだった。私はブライアンがロンダにそのことを伝えることができるよう、手助けをした。するとロンダは夫の目には怒りと憤りと悲しみがあると言ったので、わたしは彼にそれらの感情ひとつひとつが彼にとってどのようなものかを妻に伝える様言った。
彼女はブライアンの話に耳を傾けたが途中で「これ以上続けないで。あなたがこういう話をするのはとても辛いのが分かっているから、聞いていて自分が悪者のように感じるわ」と言った。
それを聞くとブライアンは心を閉ざしてしまい、完全に殻に閉じこもってしまった。私は彼に今ロンダの状況を受け止めることはできないと言う様に促したが、それさえもブライアンには難しそうだった。なので私はロンダに、私に話しをするように言った。これはカップルセラピーの手段の一つで、もし一人が話しをできる状態にいない場合、その人はただ見て聞いているだけで良いようにカウンセラーがもう一人の話を聞くということだ。ロンダは夫が今の状況(離婚したいということ)を受け入れることができるまで、しばらく待とうと思う、と言った。ブライアンは彼女を愛していて、そう簡単には諦めないと思ったので、彼は絶対にそれは受け入れないだろう、と私は言った。これを聞いてロンダは少しショックを受けたようだった。
なので私はロンダの気持ちや想いをもっと探ることにした。そうしているうちに、ブライアンも話せる状態になったので、ロンダは彼に対してとても申し訳なく思っており、罪悪感があることを言った。ブライアンとロンダは一緒に泣き、ブライアンは彼女に近づこうとしたが、ロンダはそれを拒否し、距離を置いたままにするよう、言った。このことに関して私が探ると、ロンダはもう夫への愛が無いということを言った。しかし私は、それは「愛」というものを感情として捕らえてしまう間違った考えから来ていると言い、変わりに今の想いを言葉にして伝えるよう言った。するとロンダは「私は自分の心を閉ざしてしまったわ」と言った。
ロンダの言葉は意思と決断力を示し、これからの行動や決意へつながっていくものだったが、今はそれらを取り扱う時ではなかった。ただ、この言葉を受け止めることが大切だった。
そこで私はブライアンに今のロンダの言葉を確かに聞いたことを彼女に伝え、また彼女に自分の気持ちを伝える様に言った。彼がそうすると二人とも泣き出した。
すると、急に何かが変わり、絶対無理だと思われる状況で、二人は何とかしてお互い共感できるものを見つけたのだ。二人ともこの情況の中で圧倒されてしまっていたが、私の支えもあり、この失意と悲しみの中で関係を保ち続けることができたのだ。
最終的な結果は私には分からないが、ゲシュタルトでのフォーカスはこのように(二人には今までなかった)人間関係の基盤となる共感点を見つけることだ。


2015年9月2日水曜日

Case #46 - ウジ虫の悪夢

フェリシティは最近見る悪夢について話した。ゲシュタルト法では通常、夢の開示はしないが、大体の悪夢は自分の中の攻撃性を示している。夢というものは、それを見ている人の性格と関連していると考えると、悪夢というものは自分の中の攻撃性を示していることになる
フェリシティは、それぞれ場面は違ったが、何度も同じような悪夢を繰り返し見ていた。大体はこういう夢だった。
彼女は地下室にいて蛆(うじ)を生育していた。蛆は何百匹、何千匹といた。そして、次のシーンでは彼女は蛆を吐いていた。彼女の体は蛆でいっぱいで、ただ一匹を残し全て吐いていた。
さて、この夢を聞く限り、一日中過ごせるほど様々な解釈があるであろう。一番簡単な解釈だと、地下室は心の底にあるものを示していて、蛆はその人の中にある何か「腐った」ものを示している、と言えるであろう。
しかし、ゲシュタルト法ではここまで深く探らない。ただ、その人の体験をそのまま受け取り、その体験がその人にとってどのような意味を示しているかを分かることができるよう、探っていくのである。
私はフェリシティにそれぞれのシーンで出てくる蛆に対してどう感じるかを話すよう促した。彼女は蛆である自分は太っていて、なまけもので、何も出来ない自分を示していると言った。
そして、彼女の体の中に残っていた一匹の蛆は外に出てきたいのだ、ということも言った。
次に私たちは蛆になったつもりで、歩き回った。
私は、「みんなそれぞれ自分の心の中に、他の人に見せたく無い『蛆』がいるのだよ」と彼女に伝えた。
私は具体的な例を挙げて、自分の中にいる蛆について彼女に話した。
このように取り扱いが非常に難しい問題は、セラピストがリードしてあげることが大切だ。
彼女は初めは自分の中にそのような「蛆」が住んでいることを認めたくなかった。彼女はあひる口をして、しょげた顔をしてみた。彼女の表情はまるで、自分は何も隠していない純粋な少女よ、という表情だったので、私はその表情をそっくり返してみせた。そして、「それは心に『蛆』がいる人が見せる表情では無いですよ」と言った。私がこう言ったことにより、彼女は自分が心の問題を認めていないことを自覚しはじめ、自分に正直になることの大切さを感じはじめた。彼女は自分の「蛆」についていくつか例をあげたので、私はそれらが彼女にとってどれほど辛いものであるか、共感を示した。しかし彼女はまた先ほどの「私は何も悪いことはしてません」という顔をしたので、私は今の表情は、彼女がさきほど打ち明けてくれたことを卑下している、と言った。
こうすることにより、私は彼女が自分の問題と直面することを促すことができた。ゲシュタルト法は、いつも「今、私は誰なのか」という『現在』にフォーカスしている。
私はグループの中にいる他の人にも自分の中の「蛆」について話してもらう様お願いしたので、フェリシティは心の闇を持っているのは自分だけでは無いということを理解することができた。また、こうすることにより、皆が自分の心の奥底を打ち明け、お互いの仲が深まり、楽しくセラピーをすることができた。



2015年8月10日月曜日

Case #45 - 不幸な人生

ベティーは自分の中にある不安について話をしたがった。しかし自分でもその不安がどこからきているのか、あるいは何に関係しているのかがわからなかった。
私は彼女の「不安」を探る前に、彼女のことをもっと知りたかった。そこで、彼女の子供や、結婚、仕事について質問をした。彼女は20年ずっと働いていた仕事を最近やめたため、今は彼女にとって過渡期であった。彼女は安定した家庭を築いており、娘は美人で有能であり、夫は彼女のことを愛していた。
しかし、彼女は幸せそうではなかった。私が彼女に、「今幸せですか?」と聞くと、彼女は「いいえ」と答えた。まわりの人は、彼女は理想の家庭を築いており、ばら色の人生を歩んでいると思っていた。私は彼女に何が不満なのか、と問うと彼女は自分が愛しているよりも夫が自分のことを愛してくれている、と答えた。「夫は良い人だけど、私たちはお見合い結婚で彼は私のタイプでは無いの」と言った。彼女のタイプがどういう男性かと聞くと、意思が強く、人生で明確なビジョンを描いており、センスがある人と答えた。夫はそれのどれにも当てはまらない、ということも。
私はこれを聞いてあっけにとられ、しばらく今聞いたことをプロセスする時間が必要だった。彼女は素晴らしい人生を歩んでいるのに、何かが欠けていた。私がもう一度彼女の目を見ると、彼女の目は彼女の不幸を語っていた。私が彼女に年齢を聞くと、彼女は44、と答えた。彼女に「これからの44年、あなたはだんなさんとずっと一緒にいれますか」と聞くと、「はい」と彼女は答えた。なので、これだけははっきりすることができた。彼女は、夫のそばにいるという決断を既に心の中で決めていたのだ。
しかしそこには基礎的な人間関係の繋がりが欠けており、情熱やつながり、一体感、というものが欠けていた。彼女はうわべだけの幸せを選んだ故、どこか心の奥底で満たされないものがあった。
ゲシュタルト法では、「選択肢」というものにフォーカスをおいており、すでにクライアントが持っている選択肢を探る様にしている。人生では様々な出来事が起きるが、その中でも私たちは色々な選択肢がある。私たちが「捕らわれている」と感じるのは、外面的な要素からくるものでは無く、私たちが自分に選択権があるということを忘れてしまうからだ。
また、「選択」というものには「結果」もつきものであるが、良い人生というのは物事を他人のせいにしたり、現実逃避するのではなく、自分が選んだことに対し責任を持つものである。
ベティが直面している状況はまさにこの通りだった。彼女の目の前にある選択肢ははっきりと見えており、またそれによる結果も見えていた。彼女は悲劇のヒロインのように嘆いていたが、このまま不幸なままでいたくなければ、何かを変えなければいけなかった。彼女は、今の現状を維持しつつ、自分で物事を選択する権利をも持っていた。私はしばらくの間、彼女の嘆きに共鳴し、彼女の現状を受け入れる時を持った。これは心のつながりの空間を築く上でとても大事なものだった。それは、変化を求めず、課題も与えず、ただそこにいて、その人の今の現状を理解し受け入れるものだった。この方法は「わたしとあなた」(I-Thou)とも呼ぶことができる。
少し経ってから、私は未来を予測し、仮定を生み出す質問をした。はじめから、この「仮定」のプロセスをふんでしまうと、回答の無い問いばかりになってしまう。しかし、少しばかり今の心の状態の中にとどまることで、これからの選択肢や他の見方を見つけることができる。
「ご主人はあなたが私に教えてくれたような心の状態をご存知ですか」と私が聞くと、主人には言っていない、と彼女は答えた。なので、私は自分の経験から相手が自分の嘆きに関し心を開いてくれた時のことを話した。ベティの主人は彼女を愛していたので、恐らくこの会話は何かを変えることができるだろう、と思った。わたしは彼が彼女の「タイプ」になることは不可能だが、もし彼が本当に望んでいるのなら、ベティの理想の男性に近づくため努力をしてくれるだろう、と言った。そのためにはまず彼女から、自分自身の気持ちや必要を伝えることが大切である。ここでチャレンジングなのは、それを良い結果をまねく方法で伝えることだ。
私はベティにまず、ご主人に彼女の目を10分間、会話無しでみつめてもらい、彼女の嘆きを伝えるように言った。そうしてから、彼女はご主人にどのように変わって欲しいか、少しずつ伝えるのだ。
しかし、これは彼女の不幸を変えてくれる解決策では無かった。実際、彼女は必要としているものが満たされない状態にいたので、私はベティに自分の創造性を活かすことをしたり、スピリチュアルなことをしてみるよう言った。こうすることで、彼女は外面からでなく、心の内から幸福を見出すことができるだろうからだ。
このような提案はゲシュタルト法では推薦されていないが、人がある特定の場所で心の時空が止まっている時、それを動かすためには心に喜びを与えるものをするべきだからだ。そして、その喜びを見つけることによって実際に心が解放されていくからである。



2015年8月4日火曜日

Case #44 - 「繭」を通しての再生

ニコールは明らかに悩んでいた。彼女はこの間見た夢のことを私に話してくれた。夢で、彼女は自分が繭の中にいるようで、外に出たいけど、外に出ることによって自分は変態するのか、それとも死んでしまうのか、どちらか分からなくて怖かった、という夢だった。
私は彼女の使った「繭」というイメージをセラピーに用いることにした。セラピーでは必ずしも、クライアントのバックグラウンドを全部把握していなくても、クライアントが話している比喩を用いて、それを土台に話をすすめていくこともできる。この場合、明らかに「繭」という比喩では変化を望んでいるが、変化を恐れている、というのを見ることができた。ゲシュタルト法では、これを「安全脱出法」と呼んでいる。それは、クライアントが望んでいる自分へ変わって行くことを安全な環境で促すものだからだ。
そこで、私はグループの中から6人選び、「繭」として彼女を囲む様お願いした。ニコールはすぐに、前よりも激しく泣き出し、地面にしゃがみこんでしまった。私は周りの人々に彼女を囲んで座る様、お願いした。私は彼女に、自分の世界に引っ込んでしまわずに、まわりの人々とアイコンタクトをとるよう伝えた。そうしないと、自分の世界へ入ってしまい、外の世界にいる人々と人間関係を持つ事をしなくなってしまうからだ。そうなった場合、その人の感情はただ自分の心の中でぐるぐるとまわり、実際には進歩しないからだ。
彼女が言われた通りにすると、一人の女性を見て「あなたのことは嫌いよ」と言った。しかし、これはその女性に向けて言われたわけではなくて、その女性がニコールの母親を思い出させるような人だったからだ。なので、私はニコールにその女性に話し、言いたいことを全部言うよう伝えた。
「どうして私を捨てたの」と彼女は聞いた。ゲシュタルト法では「なぜ」の質問系はあまりに役に立たないと見なされているので、私はそれを質問ではない文章に変えて言う様促した。
すると、彼女の心の痛みが引き出されてきて、子供の頃、母親に捨てられたことを語り始めた。はじめに供述したように、私は細かいことを色々聞かなくても、彼女の心を解放することができた。彼女はその時、変化のプロセスを歩んでおり、それで十分彼女は解放されることが出来た。
私は、彼女がこの心の変化に直面し、人々とアイコンタクトを取り続け、深呼吸をするために彼女を支えていた。彼女も、彼女の「母親」役の女性も、とても感情的になっていた。
数人の人で作られたサポートサークルは、彼女が自分の心に押しつぶされている状態にあって、彼女を優しく包み込んでくれる存在として、大切だった。
とうとう彼女は疲れて、横になりたいと言った。
私はニコールを「母親」役の女性の膝の上で寝かせ、しばらく休ませた。
ニコールが10分後に起きると、彼女は生き返った感じがし、以前はむなしさと痛みがあった自分の心に繋がりを感じることができ、暖かさも感じることができた。

2015年7月23日木曜日

Case #43 - 毒性のある「母の声」

テレサは自分の会社を立ち上げるため安定した仕事を辞めました。それは、自分へのチャレンジのためだと彼女はいいました。
しかし、彼女は何かが失敗すると分かっている時以外は、強い不安感をいつも抱いていました。彼女は成功に近づくにもかかわらず、それが確実に確保されるま瞬間まではいつも不安を抱いていました。そして、その不安は彼女の個人的な生活の中でも反映されました。
それがどこからきたか、またどうすればいいか彼女は全く分からなかった。
私はそれが物事をコントロールしないといけないと彼女が無意識に思っているからだと思いました。私が彼女の人間関係を探って行くうちに、母親が彼女をコントロールしているということが分かりました。
私たちがこのことを話している途中でテレサは頭痛を感じはじめました。それは、彼女の母親が「彼女の頭の中」に存在しているからだと、私は察しました。なので私はクッションを彼女の母親とさせ、彼女が母親に話しかけるよう促しました。このように心のうちにあるものを外に出す、という方法は典型的なゲシュタルト法です。私は彼女が母親に何かをいい、すぐに場所を交換し「母親になり」、返事をするようにいいました。
私は「彼女の母親」が言っていることを聞き、かなりショックをうけた。「母親」はテレサに対して酷い事をいい、テレサは彼女の美しい姉妹に比べて醜い、や、テレサが悪い人間である、など言い、更には彼女(母親)は本当は子供は欲しくなくてただの義務で母親をしているし、もし子供がいたら男の子が欲しかったのだ、とまで言った。
これは、ただの「悪い母親」というだけではなく「有毒な母親」というタイトルに価するものだった。このような言葉は人との対話に良いものを生み出すことのできないものだった。
私は「母親」にテレサへ話すのをやめるように言い、彼女(母親)を「インタビュー」して、彼女(母親)のことをもっと良く理解しようとつとめた。
わたしがそうするにつれ、「母親」はとても興味深い答えをした。彼女は、「有毒な母」というレッテルの通りのことをいいはじめた。「母親」はテレサが重荷であり、彼女は自分の子供達によって自分が良く見られることにしか興味がないとまで言った。テレサは今経済的に成功しており、それは彼女を良い母親として世間に見られる様にしてくれたため、今はテレサのことをそれほど嫌がってはいない、ということを言った。
みなさんは、これはすべてただテレサの投影である、と言うかもしれません。しかし「母親」がこの会話で話したことは彼女が実際にテレサへ言った言葉なのです。
ポイントは、母親を「悪者」にしたてあげることではありません。もちろん、母も自分なりの困難があったことでしょう。しかし、自分の子供をここまで見下すことは毒性があり、それによってテレサは自分への自信をなくし、このような不安感が生まれるのでした。
そこで、私はテレサに今度はしっかりとした境界線を引き、母親に話しかけるよう促しました。彼女ははじめに「...しないでください。」といいはじめたが、私は、そのような表現はまだ母親に決定権を委ねているため、もう一度言い直すように言った。
わたしは、彼女に「私は...を受け入れることはしません」という言い方をし、ゲシュタルト法で重要である、明確な境界線を引くように言った。
このような表現を考える手助けを得、何回か繰り返すことは彼女にとってとても重要だった。
セッションの終わりでは彼女は心が安定し、自分の「頭の中の母親の声」により自分の自信が奪われるのを制御することができるようになった。
これは典型的なゲシュタルト法を用いたもので、どこかでとまっている心の会話を外に持ち出し、それを動かすサポートをするというものです。






2015年7月18日土曜日

Case #42 - 安全を感じること

ヤスミンは最近離婚していた。彼女はもっと成熟し、親から自立したいと話していた。彼女の目には彼女の心のうちを語っているようで、感情であふれていた。私はそのことと、他に彼女の服装ーカラフルなショールや首にかけたビーズなどー彼女について観察できることを語った。
彼女は「あなたといると安心します」と言った。私は「それは投影方法というもので、ある意味、私は『安全』を示しているが、いつもあなたと一緒にいるわけではないのだよ」と答えた。彼女は自分の父親のことを思い出したようで、これを聞いてつらそうにしていた。
彼女は私と会うことは彼女にとって必要なことであり、会ってくれてありがとう、と言ってくれた。彼女は自分が親からは「良い女の子」であるという、条件付きの愛でしか愛してもらえないということを言い、親からは一人の人間としては見てもらえないということを話してくれた。私は彼女の話を聞きながら、親からの承認、受け入れ、ケアを必要としている彼女の子供としての自己と、彼女の大人の自己ー境界線を引き、彼女自身のなりたい人となる、そのような自分ーを見ることができた。
これら両方の自己を誰かに見てもらうということは彼女にとってはとても嬉しいことだった。この瞬間、私たちはお互いにフォーカスしていた。私は今自分が心を開いていて彼女を受け入れることができ、彼女が誰かに手をとってもらい、サポートを受けて、誰かにかまってもらうと同時に、彼女が自分の人生を変えていく、その両方をできるということを伝えた。
彼女は多くのレベルで共鳴してくれました。私は彼女に大人として話し、私たちの間にある境界線と私たちの間にあるつながりを伝えた後、彼女に子供としての自分になり、私から必要としているものを言うよう促した。
彼女は今までずっと父親から、自分は大切な存在だと言ってもらいたかった、と答えた。私は自分自身大人になった娘がいたので、彼女のために「父親モード」で話すことを快く引き受けた。そして、私は彼女の「父親」として、彼女がどれだけ私にとって大切かを話した。
それに対し彼女は「どんなことがあっても私のことを愛している」と言って欲しいと言った。そこで私はそのことを彼女にいい、また彼女がしたことに賛成していなかったり、彼女の正確の好きではない部分があったとしても、家族としての愛に根ざしているということを伝えた。
私は彼女の本当の父親ではなかったが、彼女が必要としていることばを伝えることができ、彼女には自分の父から聞くのと同じくらいのインパクトがあった。
それは、セラピーでしっかりとした人間関係を結ぶことによりうまれることであり、人々をこのようにして変えることができるのである。
彼女はセッションのあと、自分に一体感を感じ、自分の大人と子供の自己を一人の人として結合することができた。

2015年7月9日木曜日

Case #41 -

フランシスはとても耳障りな咳払いをしていました。彼女と会った時、私もその咳払いが気になったので、それを彼女に伝えると、「この咳をする度に人に嫌な目で見られるんです」と彼女は言った。わたしは、「うん、その咳は少し気になるね」と彼女に答えた。
そこで、わたしたちは「妨害」というものを探求することにしました。私は、人を「邪魔する」良い方法もあるということを説明しました。例えばコメディアンはその例の一つです。そして革命家も。そしてグループ内の現状を乱す人々---彼らもまた、必要とされています。私は「和を乱す」いくつかの例を挙げることによって、彼女に人を「妨害する」ということに対し他の選択肢があるということを伝えたかったのです。
私は、グループ内の何人かを「邪魔する」ように彼女を促しました。彼女はふざけて一人の人のほっぺたをつまみ、他の人の足の上に横たわったりしました。
これらはあまり考えずにできるちょっとした楽しい行動だったが、彼女はすぐに人を「邪魔する」他の方法があるということを理解することができた。
私は彼女の現在の状況を知るために、家族の中で誰が嫌な人(邪魔する人)であるかを尋ねた。彼女はちょうど最近、母親が浮気していることが判明したと述べました。更に彼女の話を聞いていくうちに、彼女の父親は既に何年も浮気をしていたことを知った。
これは明らかに彼女を不安定にさせていたが、私は彼女の両親が何をしているかにあまりつけ込むつもりはなかった。彼女は、自分が家を出たから、母親が浮気をはじめたのだと言い、自分を責めていた。私は「あなたの母親の行動にあなたが責任感を感じる必要は無いんですよ」と彼女に言った。
私は彼女にフォーカスを戻したかったので「今、あなたは強烈な視線で私を見ているね。私は、ちゃんとあなたの話を聞いているから大丈夫だよ」と言った。彼女は子供の頃、何かがかけていたと述べた。彼女の両親は自分達の問題や争いごとで忙しく、彼女はあまり両親にかまってもらうことができなかったと。また、あったとしてもそれは悲しくも反応的な態度だった。彼女は両親に批判されるよりも彼らの愛情が欲しかったことを話してくれました。そこで、私は子供にとって、全く注目されないよりも負の注目(批判的)があったほうが良い、ということを述べた。それは、彼女が子供の頃経験した事に関わらず、今の自分が人に注目してもらうためにできることに対して、様々な選択肢があるというのを理解してほしかったからだ。
そして、今、私と一緒にいるグループの人達は彼女に注目を注いでいるということを見て欲しい、と彼女に言った。しかし彼女はグループの小さな変化に気づき、数人は気を取られていることを指摘しました。私は、彼女が大人数の中でも、人々がどこに注意を払っているのかに気づくことができるということを察しました。
そこで私は「分かった。でも今、私は本当にあなたにフォーカスしているので、それを感じてほしい」と言った。わたしたちはしばらくそこに座っていた。通常は、クリエイティブな心理療法、洞察、様々気づきがあるのだが、この時は、私は非常に平坦なものを感じた。それは何も無い平らな野原のようだった。私がそのことを彼女に伝えると、彼女は「そう、夫や他の人からもそう言われる」といい、彼女もまた、平坦な感じがする、と言いました。
なので私は今この瞬間、彼女と共有している空間があることを言いました。そのような親密性と結合性の瞬間は深い感情が入っているものなのです。しかし、今わたしたちが共有していた空間は何も無かったのです。私は自分のクリエイティブな部分を全て失ったかのようで、そのようなことに慣れていないと彼女に伝えると、彼女は「クリエイティブ」という言葉が好きだったようで、反応した。
彼女は「あなたの和を乱し、大胆な何かをしたい」と言ったので、私は「どうぞ」と言いました。そこで彼女は私の頬にキスをしました。私は「ああ、何もない風景画に色を塗ってくれたね!」と言いました。これは良い意味のコンタクト(接触)で、深い共有感のある瞬間でした。それによって彼女に大きな変化が起こり、彼女の中の何かが解放されました。
これは「注目」と「邪魔するもの」の両方の要素を用いて行った非線形ダイナミクスです。ゲシュタルト法では、必ずしも直線的で目的達成型のものでは無く、川のように流れに沿って、クライアントの現象と合わせ、自分の心の動きも感じ取っていくことが大事です。このようにすることにより、身体的認知(意識的な洞察)、いわゆる統合性を生み出すことができるのです。

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